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春嵐

作者: あきの丘

4月某日。

桜も満開目前、

新たな出会いも花開く時期となりました。

が、私にとっては春嵐です。

川沿い連なる桜並木を、

暖かな春風を浴びながら爽やかに

自転車で駆け抜けていきます。

が、内心は心臓バクバクです。

いつもと変わりなく駐輪場に自転車を停め、

無機質なアスファルトを踏みしめながら、

人の群がる昇降口へ足を進めていきます。

高校2年生。

新しい出会いにワクワクしながらも、

どうしても心配になってしまうのです。


「どうなるかな」

『おはよー』

不安混じりに呟いていたところ、

去年同じクラスであった京介が能天気に話しかけてきた。

「おはよう」

『クラスどこだった?』

興味津々に聞いてくる。

もしかして同じクラスかなと思いながら、

「A組だったよ」

『あらら、違うクラスだね。俺はD組。』

「なんだ…というか、

 そもそも文系と理系だから同じになることは…」

『それは違う、Dだけ混合クラス!

 もう、何やってるのよ?』

「何もしてないよ。そもそもどうこうできることじゃない」

『下駄箱ってどこ?わからないんだけど』

「Cはあっち、Aはここ」

僕は目の前の下駄箱を指差す。

『おっけ、じゃあね』 

彼は反対側の下駄箱へ駆けて行った。

別々か。

新調した上履きに履き替え、新しい教室に歩みを進める。

約10歩でそこへ辿り着いた。

ひとつ深呼吸。よし、行こう。

最初の一歩。

一人の人間にとっては小さな一歩だが、

今の境遇から、この一年の運命を大きく左右する

偉大な一歩になることは間違いないだろう。

中は暗い。

一階だからか、日当たりはあまり良くない。

教室にいるのは、意外にも半数以下。

大人しそうな女の子に、すでに戯れている男子達。ついでに陽キャ女子。

廊下ですれ違ったことのある程度の人もちらほらいた。

去年同じクラスだった人も思ったより多い。

「蒼、今年もよろしくねー」

『よろしくー

 元ちゃんも同じクラスみたい、

 まだ来てないみたいだけど』

「思ったより同じクラスだった人多いよね」

『そうそう!まあ今年もどうにか

 なりそうでよかったー』

「ねー」

だがしかし、僕には一つ気がかりなことがある。

39番、去年の出席番号だ。

今年は32番。なんだか負けたような気がするが、

そんなことはどうでもいい。

去年、クラスごとに出席番号が

同じ人で集まるレクがあった。

誰かその時の子がいてくれれば仲良くなりたい。

もしかしたらあの子…

「席座れー」

男の先生が入ってきた。

体育っぽく見えて実は歴史の先生。

畑山先生だ。

先生発表は始業式なので

とりあえず声をかけに来たみたい。

「9時には体育館で並べるようにしておいてなー」


体育館で新しい校長先生は言っていた。

出会いは偶然。

その偶然を大切に一年を積み重ねていけ、と。

場所は教室。

担任は、なぜかホームルーム前から

有力視されていた山上だ。

この教室で春休み中に

目撃情報があったとかなかったとか。

「ということで担任になりましたー、

 あー山上です。

 1年間よろしくお願いします。

 私からも言わせてください。

 校長先生には悪いんですけど、

 私はー出会いは偶然だと思っています。

 ここまでは同じです。

 ですが。ここから起きることはすべて必然です。

 この一年が悪いものになるか、

 楽しかったーで終わるかは、

 あなたたち次第です。 

 まあ、頑張ってください」


ホームルームが終わり、今日はお開きだ。

これからは必然。その言葉が心に残っていた。

明日でもいいかな、間違っていたら、

いろいろな言い訳が頭を巡る。

それでも。

僕は声をかけた。

なんとなく会ったことがある気がする彼に。

「去年って、39番だった?」

声が上擦っているのがわかる。

去年は、 

自分から声をかけるなんてことはなかった。

それでも良いと思っていた。

でも今年は。

『そうだけど、ってもしかして!』

「やっぱり!」

いつのまにか手を握り合っていた。

「「会えたー」」

僕らは必然的な再会を果たした。



お読みいただきありがとうございます!

今回は学校をテーマに書いてみました。

春は変化の季節です。

ワクワクどきどき、様々な感情の入り混じる春嵐に、

私自身も立っていることで精一杯です。

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