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nO.4 酔い吐かけ

駅で会った青年は自分を哪吒埜と呼んでくれと、命音に話す。彼は命音の命に対してあやふやな発言をする。不意に、命音の脳裏をよぎったのは誰の声か。

「…うっぷ」


「あちゃー、こりゃ酷いね」


 車に揺られること30分、命音はまたもや限界を迎えていた。胃がひっくり返る様な不快感。ガンガンと耳鳴りがする脳内、込み上げる胃液、水分、固形物、その他etc…。もう無理です。限界です。


「立てる?とりあえず家入ろ?」


「うぶぇ、は、はい…」


「———。ちょっとごめんね?」


「…ぬわぁ?!」


 息も絶え絶えで歩くことすらままならない命音を青年はいきなり横抱きにしてしまった。そのまますたすたと玄関へ歩いて行く。


「—————————」


———私、我慢!吐くな!幾らお…お姫様抱っこがガックガク揺れるからって今ここで吐いたらちょっと泣くぞ!嫌だろ吐瀉物を喉に詰まらせ死亡とか!頑張れ!我慢我慢!


白熱した思考の中で誰かが叫ぶ。確かにな。吐瀉物を喉に詰まらせて死ぬのは嫌だなぁ。


「———んしょ、はい、水どうぞ」


「…ありがとう…ございます…」


家の中へ少女を連行した青年は命音を座布団の上へポンと乗せ、ペットボトルの水を差し出した。命音はそれを虚ろな目で眺め、徐に手に取り内容液を喉に流し込んだ。


「はは、俺も生きてる間にでいろんな人と会っていたつもりだったけれど、こんなにも揺れに弱い人に会うのは初めてだな。あ、ちょっと横になる?布団あるけど」


「いえ、水飲んだらだいぶ落ち着いたので大丈夫です。申し訳ないです、ご心配おかけして…」


「ん、さっきよりも顔色良くなったし、その言葉に嘘はなさそうだね。よかった」


 青年は少女の無事(生還?)を確認すると、ふわっと笑った。


 辺りを見てみると、どうやら案内されたのは和室のようだ。如何にも高そうな壺やら掛け軸やらが雰囲気たっぷりと置かれている。


「あ、自己紹介、まだだったね。んーとね、俺のことは哪吒埜って呼んでくれるかな。訳あって苗字、話せないんだよね」


目の前に腰を下ろした青年は頬をぽりぽりと掻いてそう自己紹介した。


「あ、分かりました。哪吒埜さん。私、巖籟命音って言います。よろしくお願いします」


 今から私を殺す人によろしく?もはや考えても無駄であろう疑問を脳内の片隅に置いてみた。あとでちゃんと戻そう。


「…それで、巖籟さん。聞いて欲しいことが一点だけあるんだけどいいかな?」


「はい。何でしょう?」


「もう、後戻りは出来ないと考えておいた方がいい。もし後悔があるなら、今のうちにお家へ帰ることをお勧めするよ。」


 もしかしたらこの文字列は、彼なりの優しさだったのかも知れない。しかし、ここで後戻りするという選択肢は心の希望の燈が消えてしまった今の命音には無かった。


「お気遣いありがとうございます。でも、大丈夫です。私、きっとこのままでも辛いだけなので」


「…。そっか。分かった。ごめんね時間取らせて」


 彼の顔がどこか悲しげな笑みで彩られるのを、命音は見ないふりをしてみた。見ないふりを、してみたかった。


「まぁ、ゆっくりしていってよ。時間はいくらでもあるさ」


 哪吒埜はそう言うと、鷹揚に頷き席を立った。(座っていたのは座布団だが。)


「あ、そうだ」


彼は襖に手を掛けながら振り返る。


「俺ね、君のことを殺しに君を呼んだけれど、君を殺さなくても別にいいや」


 彼はそう言うと、「ごめんね、一旦席を外すよ」とそう言い残し襖の奥へと消えた。


 そんな命音にとって無意味な言葉を残した青年は何を考えているのか。命音には検討もつかなかったのに。

 

———誰もあんたに生まれてきて欲しいなんて思ってないわよ!


 幻聴が、聞こえた。


エピソードタイトル意味わからないってなんこれ

ふふっふぅー

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