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もはや馬鹿らしい?
「――それで、黒体放射の全エネルギーは温度の四乗に比例します。これをシュテファンボルツ――」
それから、数時間経て。
五限目、穏やかな声で滔々と話す芳月先生。昼食終わりのこの時間――大半の人が最も睡魔に襲われるであろうこの時間にも関わらず、見渡す限り眠りに落ちている生徒がいないのは恐らく偶然ではないだろう。
……ところで、それはそれとして――
「――さて、こちらの問題ですが……皆川さん、お願いできますか?」
「あっ、はい」
そう、先ほどまでと変わらぬ穏やかな微笑で尋ねる先生。確認せずとも分かるけど、ここで私を指名したことに何ら意味はない。彼は誰に対してもほぼ同じように当てていて、たまたま今回が私だっただけ――そう、疑いもなく言い切れるほどに、校内での私に対する態度は、一生徒に対する一教師の態度でしかなく。……うん、ほんとバレないかと危ぶむのが馬鹿らしくなるくらい。