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復讐の果てに  作者: 暦海
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浦崎先輩

「……ところでさ、先生。その……一つ、お願いがあるんだけど……」

「うん、どうしたのかな優月ゆづきちゃん」



 それから、少し経過して。

 美波みなみ話題はなしが一段落し、他愛もない話を挟んだ後、少し逡巡しつつそう切り出してみる。すると、果たしていつもの柔らかな微笑で応じてくれる先生。そんな彼に対し、少し躊躇いつつゆっくりと口を開いて――



「……その、今回のことで、嫌いにならないであげてほしいんだ……浦崎うらさき先輩のこと」

「……優月ちゃん」


 そう言うと、私のを真摯に見つめ呟く芳月ほうづき先生。何の話かと言うと――まあ、言わずもがなかもしれないけど、あの夜の事件けんに関してで。


 あの日の翌日、浦崎先輩は出頭――即ち、自首をしたとのこと。だけど、さほど驚きはなかった。だって、彼女は――私の知るあの明るく優しい先輩は、罪に手を染めたまま平気でいられる人間ひとじゃないから。


 そして、そんな彼女を見捨てるつもりなど毛頭なかった。数日後、目覚めた先生と共に嘆願書を検察庁へと送付した。本件の加害者、浦崎真歩(まほ)に対する寛大な処分を望むとの旨を記した嘆願書を。……まあ、それでも罪自体を完全になかったことにすることまでは叶わないんだけど。


 それでも、一定の効果は見込めたようで。彼女がまだ17歳――未成年であることに加え、被害の元々の対象たる私と、実際に被害を受けた先生の二人からの嘆願ということで、彼女に対する処分は同様の事件における処罰よりも相当に軽いものとなる見込みで。

 幸い、まだ未成年ということで名前が公表されることもないし、そういう意味では再スタートもそれほど難しくないだろう。



 だけど、もちろんそれは表面上の話――再スタートを切るにあたり、精神面がブレーキをかけてしまう可能性は大いにあって。だから、苦しい時は惜しみなく手を差し伸べるし、きっと先生も同じ気持ちでいてくれてると思う。それが、私が彼女のために出来ることであり――また、義務だとも思うから。


 ……だって、繰り返しになるけど私は知ってたわけだし。浦崎先輩の、私に対する感情――そして、私に近づいたその目的も。


 そして、もう少し具体的なことも。例えば、あのタイムセールの日――私があの弱気なストーカーさんに声を掛けたあの日、実はもう少し奥の方で先輩が付けていたこととか……佐伯さえきくんに告白された時、私が彼に言ったことを美波に伝えたのが彼女だったり。


 まあ、後者こっちに関しては、恐らく偶然仕入れただけなのだろうけど。先輩にとって、ストーカーのようなリスクを犯してまで手に入れるべき情報ものでもないだろうし。それを美波に話したのも、あわよくば私を恨んでいる人間の心当たりを私の中で勝手に広げてくれたら、多少なりとも計画がスムーズに進むかも、くらいの狙いでしかなかっただろう。




 


 



 

 

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