二人の時間
「――うん、すごく美味しいよ優月ちゃん。もちろん、以前からずっと美味なんだけど、それにも増して。いつもありがとう、優月ちゃん」
「……いや、いつもじゃないけどね。でも……ありがと先生」
それから、二週間ほど経て。
円卓の向こうで、嬉しそうに微笑みそう口にする芳月先生。場所は、もちろんリビング――久しぶりに、二人一緒に囲む夕食の時間で。
……まあ、久しぶりと言っても実際にはそこまで経ってないんだけどね。……それでも、私にとっては永遠に等しいほど永く思えて。
さて、幸い傷は思ったより――まあ、あくまでも思ったより、という話だけど――思ったより深くはなく、二週間ほど経過した今日、めでたく退院となって。
そして、帰ってくるなりキッチンに向かおうとするのですぐさま留めた。いや、まだ病み上がりでしょうが貴方。良いからゆっくりしてなさい。
そういうわけで、私が一人でキッチンへ。申し訳なさそうな先生を時折視線で制しつつ、丹精込めて一品一品を仕上げていく。この日――先生が帰ってくるこの日のために、何度も練習を重ねた一品一品を。尤も、どんな出来であれ彼なら褒めてくれるのは分かってるけど……この様子だと、気を遣ってるわけではなさそうで……うん、良かった。




