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復讐の果てに  作者: 暦海


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34/46

……ほんと、どうかしてる。

「ありがとっ、先生。すっごく嬉しい」

「うん、喜んでもらえたなら良かった」



 それから、数時間経て。

 帰り道、買ってもらった指輪を眺めつつ謝意を述べる私。……まあ、まだ付けてはないんだけどね。自分で求めておいてなんだけど、何処に付ければ良いか非常に悩むところゆえ。


 ところで、もはや説明不要かなとは思うけど……あの後、少し戸惑いつつも穏やかに微笑み承諾してくれた先生。まあ、何を求めても断られるとは思ってなかったけど。そもそも、私の誕生日なんだし。


 ……ところで、それはそれとして。


「……ねえ、先生。先に帰っててくれない? 私、少し寄るとこあるから」

「……そっか、分かった。でも、あまり遅くならないうちに帰るんだよ。お節介だとは思うけど、前みたいなこともあるかもしれないし」

「……うん、ありがと先生」


 そう伝えると、心配しつつも柔らかく微笑み応じてくれる先生。そんな彼に小さく謝意を告げ、軽く手を振りひとまず別れた。





「……さて、どうしたものか」



 そう、一人呟く。そんな私がいるのは、住宅街にひっそりと佇む小さな公園。その隅にあるブランコに一人ゆらゆら揺蕩たゆたっているわけで。


 あの後――先生と別れた後、私は一人彷徨い気付けばこの公園に。寄ることがある、なんて言ったけど別に宛なんてなく……まあ、気付いてたかもしれないけど。


 では、そもそもなんでそんな不可解な嘘を吐いたのかと言うと……正直、自分でも分からない。

 ただ……少し、一人になりたかったのかも。どうにも晴れないこの気持ちのまま、家に戻りたくなかったのかも。


 ……ただ、そうは言っても。


「……そろそろ、帰ろうかな」


 そう、言い聞かせるように呟く。そして、ゆっくりブランコから立ち上がる。もう暗くなってきたし、あまり心配させるのも悪いし。


 皓皓と月の輝く空の下、澄んだ空気の中ゆっくり歩みを進めていく。そっと頬を撫でる微風そよかぜが、肌寒くも少し心地良い。


 その後、暫しして到着したのは閑散とした橋の上。見渡す限り、今は人ひとりいないようで。

 そっと欄干へ身体を預け、月に照らされ輝く水面をぼんやり眺める。そして、ポケットから小さな箱を取り出し、小さな円環――今日、先生に買ってもらった指輪を手に取りじっと見つめる。



 ……ほんと、どうかしてる。自分で求めたくせに……すごく嬉しいはずなのに……さながら幸福それと比例するように、言いようのない胸の痛みはいっそう増していくばかりで。そして――



 ――――ポチャン。



 


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