……でも、そっか。
ともあれ、そんなこんなで一戦目――先輩曰くウォーミングアップを終え、いざ勝負の二戦目へ。このくらいが妥当じゃない? いえ、それはつけ過ぎです――なんて、ハンデに関しそんな取り留めもないやり取りを暫く続け、最終的に私のスコアが先輩のスコアの半分を超えれば私の勝ち、という結論にて合意に至ったわけで。例えば、先輩が200点だったら私は101点を超えれば私の勝……いや、要らないよねこの説明。ともあれ、その結末は――
「――ハッハッハ。まだまだ修行が足りないね〜優月たん?」
「……別に、今日は調子が悪かっただけで……」
黄昏に染まる空の下。
帰り道、バシバシと私の背中を叩きつつそんな戯言を宣う浦崎先輩。
あれから、3回の勝負――なので、回数自体は計4回なのだけど――ともあれ、3回の勝負をした結果、私の3敗……まあ、言わずもがな全敗というわけで。
「あれ〜、あの時はそんなこと言ってたかなぁ? 流石にそれはちょっと見苦しいかな〜優月たん?」
「…………くっ」
すると、私の返答に何とも愉しそうな笑顔で応じる浦崎先輩。……いや、存じてますよ。自分でも苦しいって。……ただ、それにしてもウザいなその呼び方。
……ただ、見苦しいのは承知だけど……別に、手も足も出なかったわけじゃないんだよ? 特に、最後のゲームはあと1回、1回だけストライクが出れば勝て……うん、見苦しいね。でも、今後こそは一矢報い――
「――どう? ちょっとは元気になった? 優月」
「…………へっ?」
卒然、思い掛けない問いに目を丸くする私。すると、すっと微笑む浦崎先輩。そして、
「いや、気のせいかもだけど……ここ最近、なんか元気ないなぁ、なんて思ってたから」
「……先輩」
そう、少し躊躇いがちに告げる。……確かに、そうかも。美波のこと、それから――
……でも、そっか。だから、突然ボーリングに行こうなんて……私を、少しでも元気づけるために――
「……その、ありがとうございます先輩。お陰さまで、少し元気になれました」
「……そっか、それなら良し!」
そう、微笑み伝える。すると、ややあって彼女はいつもの笑顔を浮かべてくれた。
「……ところで、浦崎先輩。先輩って、誕生日いつですか?」
「……へっ?」
その後、ややあってそう尋ねてみる。すると、今度は先輩がポカンと目を丸くする。まあ、突然にもほどがあるしね。
だけど、ややあってニコッと笑みを見せる先輩。そして、
「あっ、もしかしてお祝いしてくれるとか? じゃあ、エルメルのバッ――」
「それでは今のお話はなかったことに」
「ああごめんごめん冗談だって! 12月! 12月15日だよ、優月」
「……なるほど、もうすぐですね」
「まあ、もうすぐって言ってもまだ一ヶ月以上あるけどね。ともあれ、お祝い楽しみにしてるよ、優月?」
そう、ニコッと人懐っこい笑顔で告げる先輩。そんな彼女に対し、私は――
「……まあ、過度な期待はしないで頂けると」
――そう、ぎこちない笑顔で告げた。




