帰宅
「じゃあね、優月。また明日〜」
「はい、さようなら浦崎先輩」
それから、十数分経て。
数多の人の行き交う大通りの十字路にて、ひらひらと笑顔で手を振り去っていく浦崎先輩。私自身、お世辞にも明るい性格とは言いがたいけど……それでも、彼女のような人といると少しくらいは口角も上がって。
ともあれ、続けて一人家路を歩く。数分後、通りに面した小さなスーパーに寄った後、閑散とした住宅街へ。そして、幾つか角を曲がり進むこと十数分――到着したのは、少し古いけど何処か趣のある五階建てのマンション。そして、階段を――エレベーターもあるけど、運動のため普段から階段を使用しているのだけど――ともあれ、四階へ到着し奥の部屋へ。そして、鞄から鍵を取り出しガチャリ――扉を開くも、どうやら誰もいないようで……まあ、当然なんだけど。
「――うん、今日はこれにて終了」
それから、およそ一時間後。
リビングにて、誰に告げるでもなくそんな科白を口にする。そんな私の前には、円卓に所狭しと並んだ教科書や参考書、そして数冊のノートが。……ふぅ、ちょっと休憩。
「…………さて」
暫しだらんとした後、そんな呟きと共に徐に起き上がる。窓の方へ視線を移すと、外はすっかり茜に染まっていて。……さて、そろそろ準備に取り掛かろうかな。今日は、覚えたてのアクアパッツァを――
――ガチャン。
「……あっ」
そんな昂揚感を引き連れキッチンへ移動しようとした寸前、ふと鍵の開く音が。正直、思ってたより早かったけど……うん、今日は比較的仕事が少なかったのだろう。少し驚いたものの、こちらとしては不都合なんて何もない。ともあれ、先に迎えるべく玄関へと向かう。そして――
「――おかえり。今日もお疲れさま、芳月先生」