何はさて措き
「繰り返しになるけど、突然ごめんね高崎さん。こうして、時間取らせちゃって」
「あ、ううん、それは大丈夫……なんだけど……」
それから、数分経て。
そう、言葉通り申し訳なさそうに話す佐伯くんにたどたどしく答える私。……いや、それは良いんだけど。ただ……うん、教室でのあの雰囲気はちょっときつかったな。もう、至るところから女子の視線が刺さる刺さる。さながら、少女漫画のヒロインのような……うん、私には荷が重いよ?
ともあれ、そんな(どんな?)私達がいるのは二階隅に在する理科室――奇しくも、先生のあの一件があった一室で。……まあ、それはそうと――
「……それで、どうしたのかな……佐伯くん」
「……うん、それは……」
そう、逡巡しつつ尋ねる。すると、彼は少し目を逸らし――それでも、意を決したように私の目を真っ直ぐに見つめ、ゆっくりと言葉を紡ぐ。
「……その……僕は、高崎さんが好きです。もし良ければ、付き合ってもらえませんか?」
そう、表情に違わぬ真っ直ぐな想いを告げてくれる佐伯くん。そんな彼の言葉を受け、私は――
(……うん、やっぱり)
「……高崎さん?」
「……あっ、ううん何でもないの!」
「……?」
声を潜め呟いた私に、キョトンと首を傾げ尋ねる佐伯くん。この様子だと、少なくとも内容は聴こえていないようでほっと安……いや、だったら呟くなという話ではあるんだけども。
いや、何はさて措きまずは返事だ。ひとまず、深く呼吸を整える。そして――
「……あの、佐伯くん。その……」




