来訪者
「……あの、せんせ……その、さようなら」
「……うん、さようなら坂上さん」
数日後、放課後のこと。
ゆっくり教室を後にしようとする先生に、少し躊躇いがちながらも笑顔で挨拶をする坂上さん。そして、そんな彼女に応えるように努めて笑顔で答える先生。二人とも、まだぎこちないながらもあれ以降――告白以降の気まずさを少しでも解消しようと努めているのが、傍から見てもひしひしと伝わって。
……うん、じっと見てるのも悪いか。もうじき先輩も来るだろうし、さっさと帰り支度を――
「――あの、突然ごめん。高崎さんはいるかな?」
「…………へっ?」
ふと、支度の手が止まる。来訪があるのは、いつものこと。いつものこと、なのだけど……ただ、今日はいつもの先輩ではなく――
「……ねえ、あれって……」
「うわぁ、マジ格好良い……」
すると、ほどなく女子達から上がるうっとりした声。もちろん、声だけでなく表情も。……いや、ぼうっとしてる場合じゃない。ともかく、目下一身に視線を集める美少年の下へ歩みを進め――
「……えっと、どうかしたのかな……佐伯くん」




