二人で映画です。
「――ごめんね、先生。忙しいのに、無理に連れてきちゃって」
「ううん、別に忙しくないよ。誘ってくれてありがとう、優月ちゃん」
それから数日経た、ある休日にて。
穏やかな陽光の中、ゆっくり歩を進めながらそんなやり取りを交わす先生と私。さて、私達がいま向かっているのは、家から三駅ほど離れたところの小さな映画館で。あっ、と言っても皆川家ではなく芳……うん、これはもういいよね。
ともあれ、どうしてこのような流れになったのかと言うと――先日、美波からチケットを二枚もらったから。何やら、突然その日が部活になり行けなくなったとのこと。それで、例の件に協力するお礼も兼ねて私に譲ってくれたわけで。……それにしても、急に組み込まれたりするんだね、部活って。きっと、佐伯くんと行くつもりだったんだろうなぁ。
そういうわけで、もちろん芳月先生を誘ってみた。本人はあんなこと言ってたけど、忙しいはずだしどうかなと思ったけど躊躇なく快諾してくれて。尤も、気を遣ってくれてる可能性も未だ否めないけど……うん、それでもやっぱり嬉しい。




