好きな人?
「……ところでさ、優月。さっき、更衣室で改めて思ったけど……ほんと、理想的な身体だよね、優月って」
「……へっ?」
「綺麗なのは言うまでもないし……それに、黄金比って言うの? 目視ではあるけど、スリーサイズの均整がほぼ完璧に取れてる。ほんと、羨ましいくらいに」
「……えっと、ありがとうございます」
その後、軽くストレッチをしていた最中ふとそんなことを口にする先輩。お世辞――かとも思ったが、その笑顔に少し不服を覗かせている様子を見ると、どうやら本心で言ってくれているようで。……えっと、ほんとに?
……ところで、そういうことなら――
「……ところで、浦崎先輩。その……やっぱり、男の人は……その、胸が大きい方が良いのでしょうか?」
「……へっ?」
そう、おずおずと尋ねてみる。……いや、何がそういうことならなのか自分でも分からないけど……ただ、この流れなら聞いても不自然じゃないかなって。
「……うーん、まあそういう男性は多いと思うけど……でも、人によりけりじゃない? あと、嫌味に聞こえるかもしれないけど、優月だって小っさいわけじゃないからね?」
すると、先輩――今度は私が羨むようなバストをお持ちの美少女は、少し思案するような仕草を浮かべそう告げる。……うん、まあそりゃそうだよね。
「……でもさ、優月。そんなことを聞くってことは……やっぱり、好きな人いるんじゃん!」
「へっ!? あ、いえ、その……」
「隠すな隠すな、私達の仲じゃん! ほら、言ってみ! 同級生? クラスメイト?」
「……あ、いえ、その……」
すると、何とも楽しそうな笑顔でグイグイくる浦崎先輩。……ところで、同級生とクラスメイトって実質同じじゃ……いや、そんなことはいい。それより――
「……い、いえそういうことではなく……ただ、一般論として聞いてみたかっただけで……」
「…………ふーん」
そう伝えるも、ありありと疑わしげな視線で呟く先輩。……まあ、そりゃそうだよね。私自身、目が泳いでるのが見なくても分かるし。
「……ま、いっか。とりあえず泳ご、優月。アップがてら、まずは25メートルで勝負かな」
「……あ、今日も勝負なんですね」
すると、幸いそれ以上の追求はなく朗らかにそう言い放つ先輩。……ふぅ、助かった。助かったけど……うん、それはちょっとずるくない? その水着で勝負吹っ掛けるのはちょっとずるくない? 先に言ってくれてたら私も……いや、流石にそこまではしないか。




