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復讐の果てに  作者: 暦海


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16/46

……なんだ、それ。

「……ねえ、優月ゆづき

「……はい、浦崎うらさき先輩」

「……ちょっと、張り切り過ぎたね」

「……はい、そうですね」



 それから、二時間ほど経て。

 茜色に染まる空の下、少しぐったりしつつ歩いていく先輩と私。……うん、もはや説明不要かもだけど……お互い、熱中のあまり休憩も忘れ歌い続け……まあ、二人ともすっかりお疲れなわけで。ちなみに、勝敗は……まあ、五分五分くらいかな?


 そういうわけで、その日の言葉少なめに帰路を進み解散。そして、そのままアパートへと向か――うわけではなく、平時とは別の道を進んでいく。それから、数十分ほど経て――



「――久しぶり……お父さん、お母さん」



 そう、腰を落として告げる。そんな私の前には、一基の墓石――もう七年も前、交通事故にてその尊い命を落とした両親の墓石が。今日は命日――と言うわけではないけど、必ず月に一回は訪れるようにしていて。


 ともあれ、いつも通り供養を始める。そして、最後に手を合わせ冥福を祈る。目をつむり、深く深く祈りを込める。どうか、安らかに。


 ところで、この交通事故の加害者――当時、50代だった夫婦らしいのだけど――その人達の車が突如、歩道に突っ込んで来たのだと、その時周囲にいた人達の証言で明らかになった。そして、巻き込まれた二人の傍には白のケーキ――その日、10歳を迎えた私を祝うホールケーキが、見るも無惨な有り様だったとのことで。



 ――暫く、私の心は虚ろだった。怒りや悲しみを通り越して、虚無になっていた。今から思えば、きっと防衛本能が働いたのかなと。何より大切な両親の死に正面から向き合えるほど、当時の私は強く……いや、今も強くはないけど。


 だけど――ある日、そんな私の目を覚ますような衝撃が襲った。両親の命を奪った例の夫婦――なんと、そいつら二人が無罪判決を受けたとのこと。理由は、責任能力の有無――生来、精神に障害を抱えていたこの夫婦に責任能力は認められず、従って従来の刑を適用するわけにはいかなかったとのことで。そして、それを知った私は――



 ……なんだ、それ。障害があるから、無罪? そんなに軽いのか、私の両親の命は。……ふうん、そっか。それなら――



「――待っててね、お父さん、お母さん。私が、必ず二人の無念を晴らすから」



 


 

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