ほんと馬鹿みたい。
「――うん、すっごく美味しいよこのミネストローネ。やっぱり流石だね、芳月先生」
「ありがとう、優月ちゃん。でも、君が手伝ってくれたからこそだよ」
それから、およそ一時間ほど経て。
食卓にて、今日の成果をふんだんに使い仕上げたミネストローネに舌鼓を打つ私。やっぱり流石だなぁ、先生。何と言うか……うん、やっぱりコクや香り、その他種々の要素において私とはまるで違う。こうして、私の功績のように言ってくれるのは何とも彼らしいけど……正直、大したことはしていない。でも、いつかは追いつき追い越して見せるからね?
……さて、それはそれとして。
「あっ、先生。お風呂、先に入っていい?」
「うん、もちろん」
それから、暫し経過して。
徐に立ち上がりそう尋ねると、穏やかに微笑み答える芳月先生。まあ、別に聞かなくても分かるんだけどね。ほぼいつも通りのやり取りだし、そもそも彼が駄目と言うはずもないし。……まあ、それはともあれ――
「……それとも、一緒に入る?」
振り返り、そう問い掛けてみる。いや、それともも何も、返事はもう聞いてるんだけど。……ともあれ、彼の反応は――
「ふふっ、それは魅力的な提案だね。でも、僕らは生徒と教師――流石に、頷くわけにはいかないかな」
「……ふふっ、冗談だよ。じゃあね」
そう、柔らかく微笑み答える先生。こんな馬鹿みたいな問いにも、ユーモアも交えつつ真面目に答えてくれるのが何とも彼らしい。それも、努めて私を傷つけないよう配慮までしてくれて。
……まあ、実際のところ冗談だしね。仮に――本当に仮に頷かれでもしたら、むしろ私が困るし。
ただ、それにしても……うん、ほんと馬鹿みたい。




