ごめんね?
「…………へっ?」
「優月ちゃん!?」
私の問いに、唖然とした声――そして、その後に続く驚愕的な先生の声。まあ、そりゃ驚くよね。突然、後方へと駆け出し声を掛けたのだから。
すると、声を掛けられた当人――バレないと踏んでいたのか、特に顔を隠すこともなく付けて来ていた女性はポカンと呆気に取られた様子で。それから、ややあって――
「……あ、いや、その……ごめんなさぁ~い!」
そう言い残し、脱兎のごとく去っていく。……見たことない顔だったな。恐らくは、20歳前後の……いや、何でも良いか。あの様子だと、もう付けて来ることはないだろうし。きっと、思い掛けず美男子を目にして少し魔が差しただけなのだろう。
「……それにしても、本当にびっくりしたよ優月ちゃん。僕のためだったと思うし、申し訳ないとも思うけれど……でも、あんなことはもう止めてね? やっぱり、危険だと思うし」
「……うん、ありがと先生。それから、ごめんね?」
その後、暫し歩みを進めつつやおらそう切り出す芳月先生。その口調、そして表情からも甚く心配してくれていることが如実に見て取れて。うん、ごめんね先生? でも、これ以上付けられないためにも、ああしなきゃって思って。なので、
「……もう、大丈夫だよ先生。これからは、ちゃんと気を付けるから」
「……あ、うん……」
念を押すようにそう告げるも、なおも顔色の浮かばない先生。まあ、そりゃそうだよね。




