視線
「……いや、ちょっと張り切り過ぎた……恥ずかしい」
「そうかい? 僕は満足だよ。楽しそうな優月ちゃんが見られて」
「……いじわる」
それから、一時間ほど経て。
帰り道、材料の入ったバッグを一緒に持ちつつそんなやり取りを交わす私達。尤も、先生は自分が一人で持つといつも言ってくれているのだけど……まあ、それは私が申し訳なくて。
ともあれ、バックの中には本日の目玉たるトマトを初め種々の野菜、卵、鶏肉、オリーブオイル、キッチンタオル――そして、張り切って詰め込んだ大量のマカロン入りの袋が。……うん、ほんと恥ずかしい。
……ただ、それはともあれ。
「……ところでさ、優月ちゃん。その……」
「……うん」
そう、躊躇いがちに口にする先生。だけど、みなまで言わずとも分かる。帰り道……いや、スーパーにいた時点で、途中からずっと私達に纏わりついていた視線のことで。
まあ、視線自体はこれに限った話でもないんだけど。類稀なる美貌を備える芳月先生ゆえ、何処にいてもけっこうな数の視線を集めるわけで。
ただ……いま向けられてる視線は、それらとは一線を画す――端的に言えば、禍々しい憎悪がひしひしと伝わる視線で。なので――
「――すみません、私達に何かご用ですか?」




