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病院にだまされない  作者: 虎巻 解
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ガイドライン

 様々な疾患に関して診断・治療のガイドラインがあることをご存知でしょうか?健康診断もこのようなガイドラインに従って受診勧告を行なっています。

 医師ならガイドラインを知らないわけがないと思われるかもしれませんが、その保証はありません。日本では、医師になるためには、国家試験に合格し医師免許を取得する義務があるのですが、医師が定期的に知識を更新する義務がありません。ガイドラインは数年で更新されることが多く、全ての医師が最新のガイドラインを知っている保障はないのです。専門医に対して、定期的に知識更新を義務付けている日本内科学会のようなケースもありますが、この知識更新方法も各領域の専門医に必要と思われる知識を求めていたりしており、適切とは言い難いのが現状です。ですから、専門医ですら、最新のガイドラインを知っている保障はないのです。「病院受診」の項で述べたように、健康診断で病院受診を推奨された場合は、ガイドラインを知っている医師を受診されるとよいと思います。

 しかし、ガイドラインとおりに診断・治療する医師が信頼できるかというと、そうとも言えません。ガイドラインにより、疾病の診断が一定の基準に基づいて行われやすくなったのですが、治療に関しては、ガイドラインには不備があります。このことに気づかずにガイドラインを盲信する医師も信頼できるとは言い難いです。ガイドラインとは、あくまで統計的データに基づき判断して、最大多数に最大幸福をもたらすために、推奨できる診断・治療法を示したものです。実際の臨床では、疾病は患者さん個々の背景に基づいて、各患者さんに最大幸福をもたらすために、アレンジする必要があります。

 例えば、同じ程度の重症度の糖尿病と診断された患者さんでも、40歳代の患者さんと90歳代の患者さんでは治療法や治療目標値を変える必要があります。糖尿病を治療する主な目的は、長期にわたる罹患により発現する合併症の予防です。合併症を発症する前に寿命を迎える可能性が高い90歳代の患者さんと、寿命を迎える前に合併症を発症する可能性が高い40歳代の患者さんに対して、ガイドラインとおりに同じ治療をすることは適切ではありません。さらに、同じ年齢の患者さんでも、全身状態を含む個々人の状況が異なります。個々の患者さんの状況に基づいて、治療法を選択する必要があります。

 検査結果等と同じく、個人の状況が数値で表せるならば、これらの数値を用いることにより、現在よりもカスタマイズされた診断・治療ガイドラインを作成することができるかもしれません。このようなガイドラインが作成できれば、ガイドラインに従うだけで、個々の患者さんに最大幸福をもたらす医療を提供できるでしょう。しかし、個人の状況を数値化するのは困難だと考えられます。また、数値化できたと仮定しても、このような数値のみに基づく診断・治療ならば、ヒトよりもAIの方が正確に行うことができるでしょう。情報を数値化し行えるならAI時代では、医師は不要(AIドクターの方が信用できる)になります。コンピュータの発達したAI時代では、数値では表せない患者さんの背景を考慮できる医師の育成が望まれると思います。


 病状をガイドラインに基づき説明した上で、個々の患者さんの状況に合わせてカスタマイズした治療を提示してくれる医師なら信頼できると思います。しかし、日本の医療界は、このような医師が育ちにくい状況にあります。一つは、薬を出してくれるのが良い医師というような医療の提供を受ける側の対応があります。説明よりも処方を喜ぶ相手に対して、時間がかかる説明をするよりも、希望とおりに処方する方が報償が上がる制度にも問題があります。また、信頼できる医師を本気で育てようとする教育環境が整っていないことも問題です。日本の医療教育環境の問題に関しては、項を改めて述べたいと思います。


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