予防医療
現代医療では予防医療という名目で自覚症状が全くない時点で治療介入することが推奨されています。そして、治療介入する根拠に統計的データが用いられています。例えば、高血圧症で、血圧が高いグループと血圧が低いグループを比較して、死亡率を比較した結果として、前者のほうが死亡率が高かったというデータに基づいて、寿命を延ばすために血圧をさげる治療が推奨されたりします。しかし、このような統計的データの解釈には注意が必要です。血圧が高いグループは血圧が高かったから死亡率が高かったとは限りません。血圧が高くなる要因が、血圧を高くしていたと同時に、死亡率を上げていた可能性もあります。
このような要因を放置して、血圧だけを下げても死亡率は下がらない可能性もあるのです。死亡率が下がらないなら、血圧を下げる治療を行う必要があるのか考え直す必要があります。
さらに、脳死が一般でない現在では死亡とはほとんどが心臓死ですが、血液を全身に送り出すために心臓行うポンプ作用の結果として認められるのが血圧です。血圧を下げれば、心臓への負担が減って心臓は長持ちするかもしれませんが、ポンプ作用が不充分となり、脳を含む臓器への栄養や酸素の供給が減ってしまうことによるデメリットも考慮する必要があります。血圧を下げて長生きしても、その間に脳への栄養が足りないでボケた状態で生きていることを強いられるのが幸せなのか考える必要があります。
血圧治療に対するガイドラインがあり、血圧をガイドラインで定めた目的値まで下げることが、推奨されているのですが、血圧を下げる治療を行うかいなかを判断するのは患者さんご本人であるべきで、ガイドラインで決定することではないと思います。
現在では、様々な疾病に対して、血圧と同様に診療ガイドラインがありますが、ガイドラインのいいなりになっていると、人生を無駄に過ごすことになるかもしれません。このエッセイでは、医者や病院にだまされないために、現在の医療の状況について述べていきたいと思います。読者のみなさんが適切な医療を受ける助けとして用いてもらえればこれに勝る喜びはありません。