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第2話 TVの占いは見逃せない単発ドラマ

「おはよう、タカシ」

「おはよう、父さん」


リビング……とはいっても9帖の畳に丸いちゃぶ台とTV、人数分の座布団が置いてある部屋だ

俺が自分の座布団に腰を下ろすと父さんは見ていた新聞を畳みちゃぶ台の上の白飯、湯気の立つ豆腐と油揚げとわかめの味噌汁、きんぴらごぼう、2切れのだし巻き玉子、塩鮭(甘口)に手を合わせ


「いただきます」


と、ニコニコとした顔で手を合わせた

父さんはなぜか絶対にこの食卓に誰か人が来ないと食べ始めることはしない…俺も17歳になったおかげかこの習慣にすこし疑問を持った事もあった、が、別に口にするほどでもない

父さんはそういう人なのだ、ぐらいだ


「いただきます」


俺も手を合わせた

父さんはカーチャンとは違い大人しくはあるが一言で言えばメガネをかけた丁寧なクマだ、それぐらい体もでかいし背も高い(俺の身長はどちらかと言えばカーチャン寄りなのが悔しい)

だが所作はすごく丁寧で綺麗だ

鮭の小骨だって綺麗に取り除くし米粒ひとつ茶碗に残さない

そして仕事は工場勤務の為、仕事着は作業着だ

随分着込んで色褪せてはいるがこの作業着が一番似合うのは世界でも俺の父さんだけだと自信がある


「そろそろ、かな」

「ん?」


そうつぶやくと飯を食べる手が止まり、父さんは俺の後ろの飾り棚の上にある時計を見て、テレビ台の上からリモコンをとった

ピッと音を立てると数秒の間と共にテレビが映る


「------で、本日は絶好のお洗濯日和となるでしょう!この後は占いコーナーのお時間です!」


お天気お姉さんが笑顔で手を振ると画面が切り替わり、本日の占いコーナーが始まる

子供の頃から飯時のTVは禁止されていたが、この朝の占いコーナーだけは別だった

最初はこのコーナーの瞬間だけはいつもTVがついていて、子供の頃はそれだけが嬉しくて目をキラキラさせていたがそれが習慣となっては特別な感情が生まれることも無く聞き流すようになってしまっていた

でも、父さんだけはずっと飯を食べる手を止めて食い入るように見ている

するとドタドタと慌ただしい足音を響かせ食卓にスライディングで入り込んでくるカーチャンが慌てて父さんに聞く


「あかん!!父ちゃん!天気良すぎて布団干しとったら遅なった!何位やった!?何位やった!?」

「2位だったよ、ラッキーアイテムは赤い靴だってさ」


にこっと父さんが微笑むとカーチャンもよっしゃぁ!と立ち上がりカーチャン専用の猫の刺繍がしてあるクタクタの煎餅座布団に座り用意してある飯の前で手を合わせた


「ほな!いただきます!」

「さて、本日の1位と残念ながら最下位はーー……」


カーチャンが飯を頬張る姿を父さんはニコニコと見つめながらまたTVを消した

……俺は何位だったんだ?今日に限って少し気になってしまった、明日は久しぶりにちゃんと観よう

ゆっくり進みます

お茶片手にどうぞ

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