誰も知らない行き先
(ユニ)「ノモ。青い星への行き方を忘れたのか?」
「忘れた。記憶していたのはペタだ」
(ユニ)「では、そのペタは今出せんのか?」
「無理」
(ユニ)「なぜだ」
「何回も何回も試してる。生成される細胞の数を増やして分離させてからペタを顕現させようとしてもできないんだ」
(ユニ)「コピーされた細胞だと駄目なんじゃ無いのか?」
「コピーなんかじゃない。全部私とペタが混ざった本物の細胞。人間だって2週間か3週間で全ての細胞が入れ替わるだろ」
(ユニ)「それは、そうだが」
「人間の細胞と作りは一緒だよ。ただ人間より再生が早くて老化と欠損をしないだけ」
(ユニ)「それがすごいんだけどな」
「私はただのノモだよ。別に特に優れた能力を持っているわけではないしね」
(ユニ)「私たちから見たら既に優れた能力を持っている超越した人類だよ」
「あんたらがそう思ってるだけでしょ?私は万能感なんて持ってないんだよ。気の向くままに生きたい。猫みたいに」
(ユニ)「・・・」
「話が逸れたけど、青い星への行き方は頑張って思い出してみるよ。無理そうならここらを消し飛ばして逃げるだけだ」
(ユニ)「そう、、、か」
(ユニ)「私たちにできることはあるか?」
「うーん、、、」
「食料を持ってくるのと、なんか気分転換になりそうなものが欲しい」
(ユニ)「では、準備しよう」
「今じゃなくて良いから」
(ユニ)「わかった」
これで、私は衣食住の食と住を手に入れた。衣類は別に欲しいとは思わない。私の細胞を駆使しておけば服くらい作れるからな。 技術士に作れないものを作れと言われても、私はなんの技術も持ってないしすることないんだよな〜。
勝手に会社内を出歩くのは良いんだろうか?星群って言ってたし、他にどんな職員がいるのか見てみたいかも。ユニに聞いてみるか。
「ねぇ」
(アーサー)「はい?」
「お前じゃねぇ」
(アーサー)「(╹◡╹)」
「ユニだよ」
(ユニ)「なんだ。私は忙しいんだが」
「会社の中を見て回りたい」
(ユニ)「駄目だ」
「なんで」
(ユニ)「職員が混乱するだろう。ノモ。君は世間だと"金で釈放された銀河一の犯罪者"というレッテルを貼られているのだぞ」
「そんなもんどうでもいい」
(ユニ)「私が困るんだ。会社内で混乱を招くと仕事の進捗度に支障が出るかもしれないだろう」
「それも含めてどうでも良い」
(ユニ)「・・・」
地下部屋の空気が私の怒りでビリビリと震えている。電気系統が点滅し、機材にトラブルが次々と生じ始める。この部屋にいる他の職員らが慌てふためいているが、私には関係ない。出たいと思ったから出たい。そんな単純な動機で何が悪い。
(ユニ)「やめろ!ノモ!会社の電気系統がやられる!分かった!私が同行するから少し待て!」
「分かればいいんだよ。分かれば」
(ユニ)「フー。。。いいから、ちょっと待ってろ」
通話を切ってからすぐに地下へユニが現れた。クローンとはいえ、全て本物だ。こいつが同行すれば私は出歩いていいんだろう。
「社内見学〜!!!しゅっぱーつ!!!」
(ユニ)「はあぁ〜〜〜」
(アーサー)「私も同伴します!」
「お前はいいって」
(アーサー)「いえ、お願いします!!」
土下座をしているアーサーを無視してエレベーターで地上へ向かった。
ついてこないように土下座の状態で拘束をし、地面にそのまま押し付けておいたから多分大丈夫だろう。(容赦ない)
エレベーターで地上へ向かっている際に、ユニはアーサーに対する私の言動に少々呆れていたが、「自分もあのようにされるかもしれない」思ったのか首に巻いていた紫のネクタイを締めなおしていた。
--地上0階--
目の前には緑が広がっていた。ビルが建っているところ以外は自然な状態に保たれている。ビルとビルを繋ぐ通路は地下か、上空の渡り廊下か、ジップラインしかない。なぜビルとビルの間にジップラインを通しているのか全く理解できないが、職員たちはそれをどうしても欲したらしい。「スリルがないから」と。
スリルが欲しいならビルから飛び降りれば良いのに。仕事もしなくて良くなって、最後に最高の娯楽を楽しむことができるというのに。それをしたがらないのは本当にスリルを楽しもうとはしていないからだろう。絶対安全なスリルの一体どこが楽しいというのだ。
地上0階のここは自然を残したままになっていて、まるで大きな公園のようだ。大樹や多種多様な植物がそこらじゅうに生えているが、どれも周りのビルよりも小さい。一番大きな大樹でさえ、この星の一番小さなビルよりも低いのだ。
この星にある建物全てが[自然に勝った]と主張しているようで趣味が悪い。建物の外見もやたらと螺旋状にねじれていて幾何学だ。ネジのようなビル群がそこら中にある様子はまるで新たな針葉樹林のようにも見える。




