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宇宙冒険家ノモ  作者: 坂山海
早熟で未熟者
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三権分立

この業界が生まれてから、世界の均衡が崩れ去った。


複数あった国は一つになり、数百万社あった会社はたったの三つになった。


・国の仕事は治安の維持と法律の改定、研究機関。

・宇宙船開発会社[SORANI]は資源の調達と市場管理。

・機械生命体開発企業ブランド[ATMCアトミック]は人材提供と情報統制。


行政は国の仕事ではなくなり、完全に民間へ委託された。

誰も管理できないようシステムを常時開発し続け、変更できるようになった機械生命体は国民の意見を純度100%取り入れることができるようになり、一人一人が望む行政体制を整備することが可能になった。


だが問題は無尽蔵に溢れ出てくる資源と財源である。

これを解決したのが、宇宙船開発会社[SORANI]である。宇宙船を開発し、行動できる範囲での宇宙資源を無尽蔵に集めることを可能にした。


国はこの二社が独占、寡占状態になることを容認している。統治をきちんと行えばの話だが。


力を持ち過ぎた企業に国は取引を持ちかける。


[宇宙資源を全て買い取る代わりに、研究するための材料や未知の資源を全て横流しにしてくれ]と。


他の民間企業へ下手に宇宙資源が行き渡ってしまうと何をしでかすのか分からない。そこで考えたのが、エリートのみで居住区を分ける制度だ。衣食住を無償で提供され、何も文句が出ないように国民を黙らせた後、民間企業からの革命を防ぐため徹底した資源、資材統制を行なった。


情報開示は機械生命体によって行われている。



初めは、国が独占状態を支援するのは良いのか?と批判の声で埋め尽くされていたが、自分たち一人一人に十分すぎるほどの社会保障を与えられていくことによって静かに鎮静していった。利益が出て、それを国が安定した状態で管理をしその管理情報を国民へ純度100%の状態で提供してくれるなら。っと国民はそれで満足してしまった。


反対していた者たちには多めに社会保障を分け与えてあげ、貧困なところには昔の国家予算並みに社会保障を充てられた。



全ては人類が宇宙資源を手に入れることができるようになったからだ。

人類はその恩恵にあやかることで人類史上、どれだけの叡智を集結させても成し得なかった世界統一はたった一つの産業が生み出した経済市場で成し得たのだ。


圧倒的に豊かになった人類は二つに分かれた。


・衣食住で満足し、十分な社会保障で黙らされた社会に住む[ヒト]

・類稀なる頭脳を持ったギフテッドのみで構成された社会住む[人間]


[人間]たちから、[ヒト]は馬鹿にされている。猿同然の生き方をしているだけの知恵も知識も学習もしない。ただのうのうと動物的欲求を満たし続ける[ヒト]のことを心底毛嫌いし、馬鹿にしている。


が、頭脳や身体だけが並外れて他より良くても成し得ないことが[人間]側に一つだけあった。


それは、『精神力』である。

肉体に宿るのか、脳に宿るのか、それとも両方なのか。


その解明は宇宙産業が生まれる前もから未だ完遂されていなかった。


そこで天才研究者「エニア」が思いついたのは多重人格者である。多重人格者は一つの体に複数の人格が潜在していると言われる人たちのことだが、それを人工的に作り出すことで、『精神』という課題に一歩近づくのではないかと提唱したのだ。


エニアはこれを後一歩のところで証明しきれなかったが、ノモの誕生により実験は成功した。それまで、複数の人格を人工的に取り込ませてしまうと、拒否反応が大き過ぎて耐えられない者が続出していた。


男性。女性。トランスジェンダー。一卵性双生児。受胎。老若男女全てを使って実験したが、成功例と言えるものはできなかった。


人体実験をする口実を作るためにも[ヒト]を先導する必要があった。居住区を分けたことによる功績は人類に多大な恩恵をもたらした。『倫理』『人権』『尊厳』そういった人間臭い情緒は[神]を作っている研究者にとって邪魔でしかない。


科学の発達で誰かが神は死んだと唱えたが、神を殺した同じ科学で人類は精神を安定させるための[神]を作り出したのだ。



前の宗教では実在したのかすら分からないほど人類たちの手によって都合よく改変されていってしまった。が、実在し生きながらえている現存の神を目の前にして人々はひれ伏すしかないのだ。


圧倒的力を前に人は無力であることは災害で何度も経験してきた。神はその災害すらも自在に操ることができるのだ。


(ユニ)「ノモ。君は[神]になったのだよ」

「はあ。」

(ユニ)「?」

(ユニ)「思ったよりも反応が薄いね」

「いや、神だとか言われても実感がありません。私はそんなに変化を感じていないので」

(ユニ)「そうか、、、鏡を見せてあげよう」



鏡を持ってきたユニは私にそのまま手渡してきた。


「え、、?」


私の容姿は驚くほど変わっていた。銀髪だった髪の毛は真っ黒になり、碧眼も薄紫色になっている。顔つきは少し大人びていて、身長も伸びていることに気づく。


(ユニ)「神になったとはいえ、まだ幼体らしい。エニアが言っていた」

「幼体?」

(ユニ)「ああ。君はまだ幼体。あの事件以来、不死だった君の身体と複数の人格が奇跡のバランスで保たれて、不老になった」

(ユニ)「ノモ。君は不老不死になったんだよ。数億という人体実験をし、数千兆を超えるシュミレーションをしても達成できなかった現象が今目の前にいる。私はこれだけで幸せだ」

(ユニ)「だが、君は幼体。まだ後一つの人格が取り込まれていない」

「ファイのことか」

(ユニ)「ファイ。というのか」

「あいつはまだ、この世にいないって言ってたっけ」

(ユニ)「エニアが?この世にいないとはどういうことなんだ?」

「知らん」

「で、私を連れていってどうする気なの?」

(ユニ)「君が乗っていた宇宙船を開発してほしい」

「え〜」

(ユニ)「ノモが実験していた70年間の間、ノモが乗っていた宇宙船の解析を行っていたんだが、どんな技術者でも機械生命体でも分からないんだ。その構造が」

「言っとくけど、私も知らん。ペタが設計図を理解して形にしたものだからね」

(ユニ)「ならその設計図は誰が書いたんだ?」

「知らん。赤い少女にそっくりな人物が身体を乗っ取って書いてくれたものだ」

(ユニ)「身体を乗っ取る?人格実験の被験者ではなくてか?」

「だから知らんて。でも容姿は赤い少女に瓜二つだった。それだけしか知らん」

(ユニ)「ま、、まあ君が宇宙船の本体を解析してみれば何かわかるかもしれないし。とりあえず行こう」

「へいへい」







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