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宇宙冒険家ノモ  作者: 坂山海
早熟で未熟者
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実験!実験!

エニアはウキウキで手術室へと向かう。

自分の実験分野が成功するのが嬉しくてたまらないのだろう。私と一緒にきたファニーとオリゴはどうやらエニアの助手だったようだ。


(エニア)「こいつらが気になるの?」

「え、まあ。一緒にきたし」

(エニア)「こいつらは私の脳を複製して取り込ませた奴らだよ。クローンとは違うんだけどね。必要無い部分は削ぎ落としたから私の元でキチンと働いてくれてるよ」

「うわ。きっしょ」

(エニア)「いや〜それほどでも〜!」

「褒めてない」

(エニア)「ありゃ?」


「てか私が器って言ってたけど、その後どうなるのさ」

(エニア)「何が?」

「いや、実験が終わった後。私をどうする気なの?」

(エニア)「別に。どうも。私はただ実験したいだけ。その後はお国が利用するんじゃ無い?」

「あっそ」



まあそうだろうね。こいつは悪意がなさそうだし。いや、あるけど。悪意の無い悪意だ。純粋と言えば聞こえはいいだろう。研究バカなのはニーらしい。


ニーは純粋に研究することが好きな善の塊みたいなやつだったが、エニアはマッドサイエンティストだ。研究するためなら倫理観なんて必要無いって感じ。逃げても無駄だろうし、麻酔をかけてくれるならなんでも良い。いじられても中のペタがなんとかしてくれるだろうし。私はただこいつについていけばいい。拷問を受けているから麻痺しているんだろうな。恐怖心が。



手術台に寝させられ、麻酔をかけられた。


(エニア)「おやすみ〜」





「う、うーん」

(エニア)「おはよ〜」

「あれ?何これ、、」


視覚情報が5つ入ってくる。蜘蛛の目のような視覚になり、酔いそうだ。声も遅れて聞こえてくる。ノイズがすごい。頭痛が激しい。ペタ、早く設定してくれ、、、


(エニア)「寝ちゃった。まあ、数値は落ち着いてるから大丈夫っしょ」



私はしばらく寝ていた。

夢?の中で他の人格の人生を辿っていく。


これは、誰だろう。。。女子高生のような、、、、


「おはよ〜」

「あら、おはよ〜。今日は早起きできたじゃない?」

「まあね〜。行ってきます〜」



誰だ。誰の夢を見ている?なんだかすごく不思議な感覚だ。一人称なのに、三人称のような感覚。自分ではこの身体を動かせないことだけは分かる。配信動画の内容を自分が思った通りに見たり、同じ体験ができないのと同じ感覚だ。この女の子が見ている景色がこの子が見たいと思った景色なのだ。


私が赤色だと認識しても、この子には青色だというふうにみえている。


そして、交通事故に遭い、植物状態になったのか。




意識が一度自分に戻され、他の夢を見させられる。他人を夢を覗きに行っている感じ。

ただこれが全て夢なのかということは分からない。夢の中で夢だと自覚することができない。では事実なのだろうか?今起きているこの不可解な出来事は私が現実で体験していることなのだろうか、、、?



気がつくと目の前にはベッドメリーが回っている。上手く言葉が話せずもどかしい。怒りの感情をそのまま出そうとしても泣くことしかできないのがストレスになる。


ボサボサな髪の毛で女の人が抱き抱えにきた。変な言葉で話しかけんな。気持ち悪い。でも、気持ち悪いという言葉が言えない。うざい。さわんな。抱くな。なんて思っていても言えない。そのもどかしさがさらに募る。泣くことでしかそれらを表現できないという苦痛が目を覚ます度に感じ、起きている時間は永遠のように感じた。


体感では10年くらい経ったと思っていたが、実際は3年ほどで、ようやく感情というものが表現できるようになってきた。いや。食べたい。でもいや。二択しか伝えられないが、最初の時よりかは、だいぶマシだ。


それから先はようやく感覚が追いついてきて、親が鬱陶しく感じられ始めた。子供扱いされることが嫌だし、ムカつく。でも実際子供。子供なのに、子供扱いされたくない。その矛盾と葛藤にイライラするし、周りに合わせないといけなくなってくるのが分かってくる。


自分の思い通りに行かないということを知っていく。無敵だった自分がどんどん崩れていく。どんどん残酷になっていき、はぶられていった。好きな人にも好きな人がいて、それが自分とは限らないという現実も知る。何かやってみてもすぐには上手くできないことを知る。継続していっているやつは、努力しているなんて言わない。


楽しそうにそれをしているから挑戦してみたくなったが、私はそれを楽しいとは思えない。なぜ、ボールを11人で追うのが楽しいのだ。友達付き合いも楽しくはなかった。友達で集まってどこか遊びに行くのがすごく楽しそうに見えた。でもやってみると思ったより楽しくない。私はただただ、知ることが好きだった。何かを知って自分ならどう使うか、どうやったらもっと良くなるか。なんていうのを妄想することが好きだったのだ。


気づいたら大人になっていた。それでも私は、私の知識欲を満たすためだけに勉強し続けた。周りはそれを称賛していたが、私は特にすごいことだとは思っていなかった。

私には、たくさんの友達を作れる方が凄いと思うし、運動ができる方がかっこいいと思う。私がしていることは地味で孤独で誰のためにもならない。


ただひたすらに勉強することだけが生きがいの人生に意味を見出せるのは私だけだと確信していた。それを誰が何に利用しても知らない。どうでもいい。どうでも良いと思いたい。誰かに認められたい。認められたということを受け入れられない自分が嫌だ。だからもっと勉強して凄いのを発明したら認められるかも。そんなことを思って研究を続けていた。



これ、こいつの本音かも。承認欲求は結局自分が自分を承認してあげないと、どんなに偉い人や大勢の人に褒められても無意味なんだな。


こいつは良い反面教師だ。


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