遺言
おっさんが最後に言ってたトーナメントって。ここに来る前に警察たちがちょっと言ってたような、、、
ファニーが何やら地面に書き始めた。
「トーナメント。行くまで。時間。かかる。」
「どうして?」
「入り口が、離れてるから」
「離れてる?」
この星の壁をイメージ図で書いてくれた。
「このパックマン見たいのは何?」
ファニーに質問すると、補給所のことらしい。私たちはその近くのニコちゃんマークが現在いる地点だ。
さらに東の方へ進んでいき、①へ。そこから南へ②。そこからさらに南へいき、③へ。そこから北へ④。さらに北へいき⑤。そして西と北を繋ぐ壁の中へ進むと、トーナメント会場に着く。遠回りして星をぐるっと一周回らないといけないようだ。
ファニーが耐えられるスピードは荷物有りで100kmほどだろう。それ以上は荷物に引っ張られて私から落ちてしまう。少し時間はかかりそうだが、トーナメントに参加して看守になって減刑してもらえるようにしてもらうか。
することないし。(残りの刑期49年9ヶ月[地球時間199年10ヶ月])
とりあえず東側の壁内から出よう。おっさんにもらった看守の服があれば、検問されずにスルーできるらしいし。ボロボロだけど、本当に大丈夫なのかは定かではない。
とりあえず、ここの日中は地球時間換算で二日だからその間に進める距離はだいたいどれくらいだろう。休憩を8時間に一度1時間入れて考えると、、、4800kmくらいは進めるかな?怪我とか、渓谷とか何もない場合だけれど、、
この星の円周は大体木星くらいってペタが言ってたな(この星の円周約50万キロ[木星439600km])
単純計算すると90日くらいで一周できるだろう。
まあ急いでないし、ゆっくり回ってみてもいいけど、、、
ファニーが計算している私を見て不思議そうに覗き込んでいた。私はパッと目を合わせて返事をする。
「いくか」
ファニーは笑顔で頷いた。
ファニーを肩車して、しっかり掴ませてから走り出した。砂漠を走り始めた私は別に激怒してはいない。
走り出して、10時間がたった。少しファニーが疲れていたので、休憩をとっていると、遠くから誰かがこちらへ向かって走ってくる。私たちは慌てて顔を隠して身分を隠した。
走ってきたのは、人ではなくロボットだった。
[私は、敵ではありません。久しぶりに人を見かけたので挨拶を。と]
「ああ?」
ファニーは私の服の裾をぎゅっと掴んでいる。
[そんな敵対しなくても、何か盗んだりしませんよ]
「嘘つけ」
[ロボットの私がユーモアなんて持っていると思いますか?]
「・・・持ってると思う」
[それは困りました]
[ロボット]
機械生命体の一つ前に生まれた機械。人権が付与されておらず、道具としての扱いを受けていた。プログラムを命令通りにこなすだけの機械であり、会話の機能はあらかじめ設定された言語しか喋れないはずだ。。。
おっさんがこの星に送り込まれた囚人は全員冤罪だと言っていた。それが本当ならば、このロボットがここに来たのは、プログラムされていない言動を取れるようになり、危険視されたとかだろうか、、、
[私の名前はオリゴ。仲良くしてください]
「いやだ。私たちの前から早く消えて」
(オリゴ)[・・・。どうしてですか?]
「うざいから」
(オリゴ)[では、私は去りません。私はあなた達に興味があります。ついていってもよろしいですか?]
「会話が成り立ってないけど」
(オリゴ)[どうせ、暇ですしいいじゃないですか]
「・・・」
私は私の裏に隠れているファニーの方へ目線を下す。一緒に行っても良いかはファニーに決めてもらおう。怖くて嫌ならダメ。別に良さそうなら荷物持ちでもさせるが、、、
っと思っていたが、気づくとファニーは私の後ろには隠れておらず、オリゴの方へ近づていた。
[こんにちは。私はオリゴ。あなたの名前は?]
カリカリカリ
ファニーは地面に文字を書き始める。
(ファニー)「私はファニー。よろしく。オリゴ!」
[おや?なぜ話さないのですか?効率が悪いですよ]
「ファニーは喋れないんだ」
[そうですか、、、それは失礼しました。発言を訂正させてください]
(ファニー)「大丈夫」
ファニーは地面にそう書き、満面の笑みをオリゴへ向ける。
[許していただき、ありがとう。ファニーは優しいですね]
「ファニーは、、って私は優しくないって言いたいわけ?」
[いえ、そういう、、わけでは]
「なんでカタコトなのよ!」
ファニーは私たちの会話を聞いて声を出さずに笑っていた。生え変わり始めている乳歯が所々抜けており、可愛らしい。
「なら、オリゴ。荷物を少し持って。盗むなよ。絶対。ファニーの分なんだから」
[承知しております。あなたの分は無いのですか?]
「私は別に食べなくても平気なのよ」
[なるほど。あなたも訳ありですか、、、]
「・・・」




