第三章-一部 銀河特殊犯罪者刑務所[スターグラビティ]
2333年10月15日
"銀河指名手配犯ノモ逮捕"
ニュースの記事はこれで溢れかえっているだろう。
私は今、護送されている。
あの時ペタが私を救うためにあの場で融合したため、その場には数えきれない死体と生き残った私だけが残された。その場を遠くから見るとどう見えるかは容易に想像できる。最後まで生き残った銀河指名手配犯と皆殺しにされたたくさんの死体。世間様の目にはそう映るだろう。(実際、そうやって報道していた)
銀河警察の船とは別に、報道陣の宇宙船も同じくらい駆けつけていた。
手術台に設置されている照明のように、四方八方からスポットライトを浴びせられていた私はその場で抵抗もせず捕まった。
私はもう何も残っていない。
リーダーもリナさんもダニエルもペタも。
護送中、何度も犯した罪の内容を確認させられた。
ただ、いくつか報道していた内容と異なる点があり、それはそのまま報道されてしまったのが警察側の失態だろう。
それは、"チーム『ハインライン』のメンバーが生きていた"ということだ。
あの場で倒れていたうちの三人は有名人である。最も宇宙冒険家に近づいたとされたチーム『ハインライン』のメンバーはみんなに周知されていたからである。私がまだ逃げていた頃は、私が殺したという風に報道されていた。
しかし、実際は殺しておらずそれどころか私を救いに来たのだ。この一部始終を報道されてしまったメディアと警察側には説明責任が問われるだろう。
・偽情報を警察側が正式に発表していたこと
・逮捕するための動員数が過去最多なこと
・逮捕の根拠と原因があやふやな点があること
これらの情報が出回ることで銀河警察への不信感というのは少なからず増えてくるだろう。私はそれに賭けた。誰かが私の冤罪を暴いてくれるのではないか。それしか私には希望がない。
だが、逃げ回っていたことと、最後の現場があの様子だとそれは厳しいかもしれない。
今はただ願うことしかできない。
ペタは私を治療するために私の細胞組織と同化したらしい。おかげさまで不死身になった。老化すればゆっくりと死んでいくだろう。
(銀河警察員)「そろそろ着くぞ」
「・・・」
私がこれから過ごす星。『銀河特殊犯罪者刑務所』
着陸前に聞いた話では(聞かされた)
この星の重力は普通(地球に合わせた星)の4倍ほどある。そのまま宇宙船が着陸すれば脱獄される可能性があるため、近くに浮かんでいる人工衛星に犯罪者のみを乗せ、遠隔操作で大気圏に突入させる。燃え尽きた衛星から自動でパラシュートが展開し、上陸するそうだ。
パラシュートが燃えたり、展開しなければそのまま落下死。展開すれば四つに分けられた星のどこかへ落ちる。上陸できる確率は50%。元から凶悪な犯罪者のみが送られる星なため、生きていても死んでいても容赦は無いのだ。
この星のシステムは犯罪者が犯罪者を見張るシステムになっており、看守側の犯罪者は減刑されるため皆その地位を争うらしい。年に一回看守側になれるトーナメントのようなものがあり、そこで勝ち残った奴が一人だけ毎年看守になれるそうだ。(銀河警察員曰く、地獄のトーナメントらしい)
そしてこの星は重力が4倍なため、懲役もこの星に合わせられる。私の場合、50年だ。(地球の重力に合わせた時間の4倍なので地球換算では刑期は200年である)
私を乗せた護送用の宇宙船は着陸用の人工衛星を排出している衛星基地『ジョウ』に着陸し、厳重な警戒体制で私を連れていく。教会のような建物に入っていき、六芒星の真ん中には私が乗る予定の人工衛星が飾られている。牧師のような格好をしたおじさんが私の罪状とその刑期を読み上げていき、最後に合計の刑期を言い渡された。
反省するようにという意味を込められた聖典を長々と読み聞かされ、その後人工衛星に乗せられた。合図もなく急に落下していき、星の重力に引かれて落ちていった。
本来ならばここから二分の一の生死を決める天秤があり、その後さらなる地獄が待っているようだが、私はペタが身体に溶け込んでいるので、不時着しても生き延びれる。
そして、私の読み通り人工衛星が燃え尽きた後の展開するはずのパラシュートは元からついておらずそのまま地面へ向かって落下していった。
逮捕という名を打ち立てておけば、その後どうなったのかなんて民衆は気にも留めなくなる。銀河警察側の不都合な事情があるであろう私はここで事故に見せかけて殺すつもりだったのだろう。
そのまま地面に激しく衝突し、砂煙が50mほど立ち上る。地面は抉れ、中央には私が座っていた不燃性の座席がめり込んでいる。
新しい囚人がどんなやつか見にきた奴らは、死んだことを確認しに面白半分で近づいてくる。だが、そいつらの予想は大きく外れ、中央にある椅子で座っていた私を見て拍手する者や恐れ慄く者。笑っている者など、各々多種多様なリアクションをとっていた。
私は椅子に浅く腰掛け、上半身を前のめりし、両手は膝の上で組むような姿勢でそのまま座っていた。




