常夜④
(残り30分)
リナさんとダニエルがこちらに向かって走ってきていた。
私はそのことに気がつき、方向転換しようと車椅子の左車輪を思いっきり後ろに引っ張り、運んでいた特殊部隊員を薙ぎ倒した。火事場の馬鹿力というやつだ。
切断面の傷口が開き、流血し始めていたが目の前の再会にそれどころではなくなっていた。
私たちを接触させないように特殊部隊員たちが二人に総出で抑えに向かっていく。私はその隙にリーダーの元へ車椅子で移動した。隣の男は呆然と抗争の様子を立ち尽くして眺めていた。
リーダーを車椅子にのせ、少し男から離れる。
抱き合って、互いの安否を確認するこの瞬間が永遠に続けばいいのにと思えた。
リーダーはすでにボロボロで数箇所骨が折れているそうだ。誰にやられたのかと執拗に問うが、答えようとはしてくれなかった。
私は察した。
この男がやったのだと。
男の方を向き、落ちていた小銃を手にとり、男の顳顬に照準を定めようとする。慣れない左手は銃の重みでブルブルと銃口が震え、なかなか捉えられない。震えを抑えるため小銃の肩に当てる台尻をお腹に押し当ててなんとか構えた。
(残り0秒)
発砲した瞬間に、目の前にリーダーアリアが男を庇った。不幸にも急所に入り、即死。
男は発砲音でこちらに気がつき、倒れているアリアを見て泣き叫ぶ。
叫びながら、男は胸ポケットから古いリボルバー拳銃を取り出し、自分の頭を撃ち抜いた。
目の前には自分の手で殺してしまったリーダーと自死した男の死体が無愛合うように倒れ込んでいる。
現実を受け止められず私は持っていた小銃をその場に落とした。。。
二度の発砲音を聞き、すべての特殊部隊員とリナ、ダニエルはこちらを向いていた。
その隙を銀河警察のスナイパーは見逃さず、二人の後頭部を撃ち抜いた。
目の前の光景がスローモーションで流れていく。撃ち抜かれた二人はその場に前から倒れ込んでいく。他の特殊部隊員はこちらに意識を向け、再度向かってきている。
あ、
あ、、、
あぁああぁぁぁ。。。。。
このまま自死しようと小銃を拾い直そうと屈んだ私を奥の扉に倒れ込んでいた瀕死のロロネーがレーザー銃で私の頭を狙っていた。
私は気づかずそのまま拾い上げようとしていた。
残り数メートルというところでペタがやってきて[ドラゴムーブ]の[反射]を使いレーザー銃を跳ね返した。自分で撃ったレーザー銃はそのまま跳ね返され、ロロネーの頭を消し飛ばした。
ペタはどこか苦しみながら残りの特殊部隊員と銀河警察の宇宙船10隻を消し飛ばした。
その場に生き残ったのは、私とペタだけ。
助けに来たリナさんとダニエルは即死。リーダーのアリアさんは私が殺そうとした男を庇って私に撃たれて死んだ。ロロネーは跳ね返ってきたレーザー銃で頭部破壊。
他の団員、特殊部隊員はペタがこちらに向かってくる際に皆殺しにしたようだ。
『新しい機能[残忍]取得しました・・・』
『条件を突破。機能[残忍]に特殊効果[逆奪]が付与されます』
『機能[プレミモス]を使用し、[残忍(特殊効果"逆奪"付き)]と[セイレーンミスト]を融合させます』
『成功。新たな機能[略奪者]を獲得』
「黙れ・・・」
ペタは壊れた機械音声でひたすら取得した機能を報告していた。
『新しい機能[情核の器]を獲得』
「もういい、、」
「私を殺して!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
『拒否します。あなたは救うべき対象です。身体の損傷が激しいようなので、機械細胞を使ってあなたの身体と融合し、再生させます』
「やめろ、、、くるな!」
ペタは私の欠損部から身体へ入り込んでいき、機能[略奪者]で私の意識を奪った。
切られていた右腕と左足は一瞬で再生。足りない血液を生成するため、髄にある血液細胞を生成する造血幹細胞を機械細胞で模倣し入替ていく。
数分後。。。
意識が戻ると私は失ったはずの足と腕がある状態で死地と化したその場所に立たされていた。
同時に増援で来た銀河警察の宇宙船団が現れる。1000を超える船に囲まれ、私はとうとう捕まった。。。




