奇行
(ノモサイド)
下水の匂いのするこの牢屋に入って1週間が経った。だんだん匂いには慣れてきたが、少し油断をすると吐き気が込み上げてくる。
見張りの大男は換気扇の前にずっと立っている。ずるい。
何度かトイレに行きたくなり、下水の匂いが漂うトイレの方へ向かうが体が拒否してしまう。汚い便器にものすごい醜悪な匂い。座りたくもないし、漏らしたくもない。どうしても我慢ができなくなったので、なんとか目を瞑って息を止めて。
した。
おえぇ
早くこの牢屋から出たい。牢屋から出なくても良いから、せめてこの牢屋から元いた牢屋に戻してほしい。ところどころネズミや蜘蛛の巣があるのも、気味が悪いのだ。不衛生。そんなこと考えられるくらいには精神は回復していたらしい。
おそらくは、リーダーが生きていることがわかり、だいぶ気持ちが救われたのだ。
そういえば、この船はどこへ向かっているんだろう。行き先は誰も教えてくれないし、ずっとこの牢屋にいるから時間もわからない。見張りの大男に聞いても、しりとりのくだりから全く口を開かなくなってしまった。
暇になり、うとうとしていると、見張りの大男が牢屋の格子を開けて「出てこい」と言ってきた。遂に戻れる〜。と思っていたが、一つ上の階にある牢屋ではなく、最上階の司令部に連れて行かれた。
そこには威張り散らしている男が一人立っていた。名前はロロネー。船員から「ロロネー船長!」という声があちこちから聞こえてくる。統率は一応取れているようだが、いまいち団結感というものを感じられない。
そんな分析をしていると、気づいたら辺りは静かになっていた。両腕を後ろで縛られ、中腰の状態の私の目の前に男は立っていた。
ちょうど目の前に男の局部がある。何をされるのか一瞬想像してしまったが、予想していたことは起きなかった。
(ロロネー)「ようこそ!司令部へ!」(甲高い声)
(ロロネー)「君があの指名手配のノモだね?会えて嬉しいよ〜!」
私は彼をじっと睨みつけていた。
(ロロネー)「お〜お〜。すごい眼光だ。痺れるね〜」
(ロロネー)「き、み、さ、こないだとらえたアリアって女のチームに所属していたらしいじゃぁないか〜」
(ロロネー)「調べたらすぐに出てきたよ?か、の、じょ、のこと」
(ロロネー)「どうやらすごく慕われていたようだね〜アリアは。」(低い声)
急に低い声で耳元で話しかけられる。気持ちの悪さに全身に鳥肌が立つ。
(ロロネー)「それでね?もっと。も〜っと調べてたらねぇ〜。なんと、びっくり、行天、、、宇宙海賊団クラッシュに他のお仲間も捕えられてるんだって〜!!!」
奇想天外な動きをしながら左右に行ったり来たりし、話を続ける。
他の仲間?『ハインライン』のみんなのことか?他のメンバーも生きてたのか、、、???
(ロロネー)「おや、、おやおやおや、今日一番君の瞳孔が開いたね〜!?」
顔をギリギリまで近づけてきて、私の瞼を人差し指と親指でぐいっと広げてきた。言動がいちいち怖い。。。
(ロロネー)「そこで、、君たちにサプライズをしようと思ったんだよね〜。リーダーのアリアを君たちの目の前で殺してあげるshowだよ!!!」
「んん〜〜〜!!!!!???」
(ロロネー)「あら、あらあらあら。う、る、さい、よ」(低い声)
「ん!?」
(ロロネー)「なんでそんなことするの〜って顔だね〜!良いよ〜教えてあ、げ、る!」
(ロロネー)「銀河警察に〜抹殺しろって言われてんだ〜〜〜!『ハインライン』を」
「!??」
(ロロネー)「き、み、は〜。その囮役だ!大役さ〜!!!君ならできるよ!!うん!うん!!」
私の髪を掴んで前後に振り回す。
(ロロネー)「できなくてもやってもらう」(低い声)
(ロロネー)「それと〜。君と一緒に乗ってたあの紫髪のやつ。あれ誰?彼女だけは調べても調べても調べても調べても、、、出てこない、、」
(ロロネー)「ねぇ!!あれは誰なの〜〜!!!!!???」
「・・・」
(ロロネー)「おや、、黙秘かい?良いね〜!!やりがいがあって。楽しめそうだ」(低い声)
(ロロネー)「連れて行け」
(大男)「ハッ!」
私は大男の方に担がれてそのままどこかへ連れて行かれた。裸のまま。
緩急のあるテンションと声に翻弄されてしまったが、重要なことをいくつか話していたな。チームメンバーのこととか、銀河警察のこととか、、、
そのままどこか知らない部屋に連れて行かれた。真っ白な手術室のような部屋。
床には古いバケツや物騒な器具がたくさん置かれている。
私はそのまま台のようなところに拘束された。
首、手首、足首、猿轡に耳栓、目隠し。
隣からは、別の男の叫び声が聞こえてくる。悶絶するような、泣き叫ぶような、、、
ボトっ
っと鈍い音をしたと思ったら、男は静かになった。
どうやら、、ここは拷問部屋のようだ、、、




