追っ手は500万人!?
この星に来てから三日がたった。
私についてのニュースはどんどん過激になっていく。両親は私についての情報と引き換えに莫大なお金を手に入れたようだ。
私の首には懸賞金がかかっている。スペースホエールの卵と同じ額の50億。
そりゃ、両親も売るよな。
これからどうしよー。
心から発しているわけではない。だが、事実なのも変わりはない。
狭い宇宙船の中で三日も生活すると流石に飽きる。外には出れないしな〜。
「ペタ。次逃げるならどの星にするとかあるの?」
『・・・』
「ん?」
『だいぶ回復したようですね』
「いいや、全然。ショックが大きすぎてなんか実感がないんだよ。あの時は恐怖しかなかったから涙が出たけど、今は感傷に浸る余裕もないんじゃないかな」
『そうですか。次の行き先ですが、決めておりません』
「え。そうなん?」
『こちらの行動を予測されたくないので、あえて。です。どこへ向かうのかわからないようほうが、追っ手も手を焼くでしょう』
「なるほどね」
『何かたべますか?』
「いや、いいや。食欲ない」
『でも昨日から何も食べていません。液体食でもいいので食べてください』
「あとでね」
『・・・』
逃げている身とはいえ、することがない。逃走経路もペタが自動で割り出してくれるし、追っ手もまだこの星へは辿り着いていないみたいだ。ニュースやSNSの情報は当てにしないほうがいいだろうし。娯楽を求めて動画配信サイトを見ようと思ったが、逆探知される可能性があるといい、ペタが了承してくれなかった。
ペタが見せてくれるニュース情報は一方的に向こうが流しているものなので、アカウントを通さずに見ることができる。変に落ち着いている私をペタが心配しているようだが、私も自分自身驚いている。
人は複数の要因が重なると処理できなくなって、虚無になるらしい。私は今後どうなるのかなんて考えても無駄だということをさっき結論づけた。(4回目)
好きだった配信者で時間でも潰したかったな〜。
まあ、見ても多分前より何も思わなくなっているだろうけど。ただの暇つぶしだ。静かな船内でずっと過ごすのは監獄とさして変わらない。
この星は常に砂嵐が起きているらしく、船内から見れる景色はずっと砂だ。灰色の砂が舞い上がっては落ち、風に流されていく。どうやらこの砂が人間にとって猛毒なのだそう。粒子が細かい上に毒性が強く、体内に取り込むと排出されず蓄積されていくらしい。
暗くなっていく景色をぼーっと眺めていたら人影が見えた。
人影。。。
人影???
「ペタ!!!」
『逃げます。掴まってください』
「うん」
フワッと宇宙船が浮き、一瞬で宇宙へ飛び立つ。
(???)「作戦失敗。作戦失敗。ターゲットa143方向へ逃走」
(???)「了解。直ちに帰還しろ」
(???)「了解」
「人いたじゃん!?」
『特殊な宇宙服を着ていれば防げます』
「なら、特殊部隊ってこと?」
『おそらく』
「なんでそんな人たちまで、、、」
『・・・』
星から飛び立つと待ち伏せされていた。
星を囲うように銀河警察の宇宙船が並んでいる。攻撃準備はすでに終わっており、いつでもこちらに向けて攻撃可能だ。
(銀河警察)「逃げるな!大人しく捕まるんだ!」
無線をジャックして、こちらの船内に無理やりアナウンスしてくる。音量がバグっていて、うるさい。
『強行突破してよろしいでしょうか?』
「いいんじゃない?私。もう指名手配犯だし。」
『・・・。人への危害は加えないように致します』
「はいはい」
ペタはドラゴムーブを宇宙船に使用し、センサーにも目視でも見えないように姿を眩ました。繋がったままの無線がこちらに流れてきた。相当慌てている様子が無線越しに伝わってくる。二度も逃したとなれば銀河警察の立場が危ういからだろう。だが、こちらはあちらの科学力を超えた宇宙船なのだ。追いつけはしないし、見つけることも困難だろう。
だが、この能力には欠点があった。動けない。
動くと、輪郭が浮き出てしまいすぐに見つかってしまうのだ。
相手が勝手に探しに行ってくれるまで待機しないといけない。気づかれないのを祈るしかないのだ。船内には独特な緊張感が走る。この感覚は初めてリフレクトクローに出会した時に似ているが、あの時よりもはるかに緊迫感がある。
それはそうだろう。相手は銀河警察なのだから。私が会ってきたどの大人たちよりも強くて優秀な人しかいない組織である。そんな彼らの頭脳よりもペタのほうが優秀であると信じるしかないのだ。
結果。
ペタの方が優秀でした。
銀河警察の群れはしばらく捜索していたが、ペタはバレないギリギリの動きで欺き、ぶつかりそうな銀河警察の船をこっそり回避しつつその場でやり過ごしてくれた。
「過大評価してただけなのかな、、、?」
『そうかもですね』
ペタは少し自慢げだった。私は可笑しくなりつい吹き出した。
「ふふ、、ふは!!あはははは!!!」
『?』
『どうされましたか?』
「いや、、、なんか可笑しくなっちゃって、、、」
『はぁ』
ペタが少しずつ人間っぽくなってきている気がした。一人じゃないだけ、私は救われているのかもしれない。
『次に潜伏できそうな星を探しましょう』
「そうね、、、ふふ、、、」
『元気ならご飯食べてくださいね』
「は〜い、、、」
少しは気が紛れたが、それでも食欲はなかった。
『次に向かう星は気体の一酸化アルミニウムで覆われている星「アルマ」へ向かいます』
「はい。よろしく〜」
『・・・』
私たちが次に潜伏する星はインテグラル大星雲にある『アルマ』に決定した。
「アルミニウムが気化し、電波が妨害されるから」とペタは言っていた。
「アルマ」までは19日ほどかかるらしい。
移動中に見つからないといいけど、、、
[余談]
銀河警察の宇宙船は数を多く飛ばす必要がある。なぜなら、お互いの場所を確認し合う電波を出しながら先へ進んでいくからだ。メリットは情報を素早く伝達して瞬時に包囲できる点だ。しかし、デメリットはその電波を妨害されれば、意味がない点。
そのデメリットを補うためにより多くの宇宙船で行動し、一機が電波を発しなくなるとそこへ救助用の宇宙船を飛ばすようになっている。電波を発しなくなった宇宙船に乗っている乗組員を救助するためだろう。
わかりやすく例えるならば"蟻"だろう。
フェロモンを出しながら進むことでエサまでの道のりを作っていくのに近い。




