第二章-一部 逃走者
ペタが宇宙制服を使って私を宇宙船が停めてある公園まで移動してくれた。
宇宙船内で横になって泣いている私を慰めながら、ペタは宇宙船を起動し、早々にNeo星を飛び立った。。。
「なんで、、、なんでよ、、なんで私ばっかり、、こんな目に、、、」
『落ち着いてください。追ってから巻くために飛ばしますよ。しっかり掴まっていてください』
「うん、、」
私はペタの手を握り、泣いていた。
グッと下へ一度落ちるような感覚の後、後ろに引っ張られるような圧を受ける。
『一度離れたところへ着陸します。そこで情報収集をしましょう』
「・・・」
『ノモ様?』
私は泣き疲れて眠ってしまっていた。
目が覚めると見知らぬ星に着陸していた。扉を開けようとすると、ペタからものすごい力で引き止められた。
『この星は人間は数秒したら死ぬような危険な星です。死ぬ気ですか?』
「い、、や、、ごめん」
『いえ、、眠っている間に情報を集めておきました。内容はショッキングなものが多いのでご注意を』
「うん」
ペタが集めた情報はでっち上げられた嘘しかなかった。
私がチーム『ハインライン』を意図して墜落させてメンバーを事故死させたとか。機械生命体を違法に進化させたとか。スペースホエールを密猟したとか。人を何人も殺したことがあるとか。また、別のニュース番組では試験会場で会ったあの演技女が出ていて、私の悪い噂を振り撒いていた。席に座っている様子からおそらくそれでタレントデビューでもしたのだろう。
あの星の時間で2年間。私は毎日のように報道され、完全な悪者に仕立て上げられていた。
経済評論家たちや学者たちは私のせいで、この星の市場価値が下落したとか、凶悪犯罪者の及ぼすこの星内の治安影響などを好き勝手に言っている。真剣な表情で真面目に。
彼女のせいで犯罪率が○%上昇している。とか彼女を信じているカルト教が次々に誕生しているとか。純粋な子供にどれほど悪影響を及ぼすのかとか。
私は帰る星がなくなったのだ。逃げている今の現状も罪を認めた証だという意見で溢れ返っている。私を信じていたカルト教も次々に解体されていく様子がひたすらニュースにあがっている。毎秒新しい私関連の情報が万単位で更新されていく。逃げる様子。宇宙船の特徴。見た目。
ブス。死ね。早く捕まれ。キモい。犯罪者乙。逃げたなら悪確定。終わったなこいつ。警察何逃してんの?仕事しろ。両親も逮捕しろよ産んだんだろ?我が子可愛いかよ。きも親。何したらこんな風に育つん。教育の限界。頭おかしいの増えてきたな。玄関に立ってる時殺しとけよ。死ね。早く捕まってほしい。犯罪者の情報求む。俺みたぜ。近所の人誰か見てないの?炎上乙。
そんなコメントで溢れかえっていた。
私は吐き気がして、何度か吐いた。何も知らない人たちからの罵倒。悪とみなされた者へ向けられる悪意の無い悪。罵詈雑言。言葉による棘が痛いほど刺さってくる。ネット自殺というのが昔問題になっていたが、こういうことなのか、、、
犯罪者と健常者の棲み分けが星単位で行わている現在。
自分の星から生まれた凶悪犯を皆、おもちゃのように扱うのだ。気色が悪い。
しかも、あの女。私の悪口をニュース番組で言うだけで可愛い可愛いと持て囃され、可哀想と煽られ、調子に乗っている。炎上商法というやつだ。
『ノモ様。もう控えた方が、、』
「ええ、、もういい、、」
「疲れた」
『どうしますか?一度青い星へ戻りましょうか?』
「そうしたいけど、、青い星までついて来られたら、あの子も捕まるんじゃない?」
『そう。かもしれません。』
「とりあえず、追っ手が来るまでここにいましょ」
『外へは出られませんよ?』
『それに食糧も備蓄は一ヶ月ほどしかありません』
「なら半分以上減ったら移動しましょ」
「それまで、何もしたくない」
『承知しました。見張りを続けます』
「うん」
私は一晩で銀河指名手配者になり、そのまま逃走者となってしまった。
こんなことなら、何も知らないままあの星で過ごしたかったな。帰らなければ良かった。
今、私を追って各星から10万人規模で捜索を開始するというニュースが速報で入ってきた。人が住んでいる星は50個ほどなので、500万人ほどの武装した人たちに私は追いかけられているようだ。焦りよりも、無気力感が勝る。
ペタはこの星は人が降りられないほどの有毒ガスで覆われていると言ってったけ、、、
ならこの星に着陸して捜索するのは時間がかかるだろうし、しばらくはここにいても大丈夫だろう。もし、追っ手が迫ってきても、この宇宙船とペタがいればどうにか逃げられる。
しばらくは転々と星を移動しながらの生活になるだろうな。。。
もうなんか全部どうでも良くなってきた。宇宙冒険家とか、、、
ならなくてもいいや。




