第一章-完 宇宙船を作ろう②
ーーー三日目ーーー
宇宙船は完成した。
地球時刻でいうところ24日間。
ニーは途中で何度か爆睡をしていたが、ペタはぶっ続けで作業をしていた。
ニーはガレージでそのまま寝ていたので、毛布をかけに行った。隣には涙滴型の宇宙船が出来上がっている。シルバーとガラスメインの宇宙船。
ペタがエネルギー炉と三重構造のパーツを持ってガレージに降りてきた。
そのまま会話をせず、黙々と作業に取り組み始める。
取り付けるだけなので、すぐに作業を終わらせて宇宙船から降りてきた。
『完成致しました』
「・・・」
『・・・?どうしました?』
「ちょっと寂しいなと思ってね、、、半年だけだったけど今までの人生でこんなに生きた心地がしないのは初めてだったから」
『確かに。何度死にかけましたっけ』
「・・・。」
「助かりました・・・」
ニーがモゾモゾ動き出して、起きた。
(ニー)「できたのだ。ノモ」
「うん。ありがとう」
(ニー)「今日。出発するのだ?」
「そうだね。早く帰りたいし、、、ニーたちも一緒にくる?」
(ニー)「そうしたいけど、、、重力に耐えられないと思うのだ」
「重力?」
(ニー)「ここの重力は地球に合わせた星の重力の4分の1だから、、、」
「あ〜。そっか。てか、私もそういえば帰れるのかな?」
『ノモ様は宇宙制服でカバーいたします』
「なら、大丈夫か、、、」
私は、帰る準備を始めた。
と、言っても持ち物などは無い。あるとするなら今着ている宇宙制服くらいだろう。墜落したのだから持ち物などそもそもないのだ。遊びに来たならまだしも、、、
「なら、一回帰ってくるよ」
(ファイ)「おう。行ってらっしゃい!」
(ワン)「絶対戻ってきてね!!!!!」
(ニー)「遊びに来るのだ!」
(フォー)「ご飯作って待ってるわね〜」
(スリー)「・・・」
「じゃあ。行ってきます!」
こうして、私は青い星を飛び立った。ペタが操縦してくれているので、安心。。。とまではいかないが、まあ大丈夫だろう。
そういえば、墜落する時もペタに操縦させてたのに、、、なんで墜落したんだろう?
大幅にグレードアップしたペタと新しいエネルギー炉が乗った宇宙船は目的の星「Neo星」まで10日ほどで着くらしい。本当なら10年かかるらしいが、、、
船内では人型になったペタとひたすら暇つぶしをしていた。
トランプしたり、しりとりしたり、歌ったり、ご飯作ったり、、、
何事もなく船旅は終わり、Neo星が見えてきた。星の外から自分の住んでいた星を見るのはものすごく久しぶりに感じる。あっちでは半年過ごしていたから、戻ったら2年か、、、みんな歳取ってるのかな、、?2年くらいじゃ変わんないか?
『ハインライン』が停めていた公園に着陸する。本当は宇宙港に申請して宇宙港
内のパーキングに止めないといけないが、まあ、いいだろう。
公園はあの時と変わっていなかった。真夜中に帰ってきたこともあり、誰もいない。よかった、、、
何も悪いことはしていないが、不自然にキョロキョロしながら一度実家に帰ってみる。この星は人が住みやすいように1からデザインされているため、モデルは21世紀の都市らしい。ハイテクなものについていけなくなった人が住むような街並みだ。
実家の前に帰り着いた。家を出ていけと言われてから、一度も帰っていない実家。冷や汗と油汗が同時に体から出てくるのを感じる。妙な緊張感と共に家のインターホンを鳴らした。
(母)「はい、、、どちら様?」
「私、、、だけど、、、」
(母)「え、、ちょ、、お父さん!!!!警察!!!」
「え、?」
久しぶりに会った娘を腫れ物みたいに扱うなよ。。。まあ、そういうところも二人は変わってないのかな?
私はちょっとだけ考え方が大人になった気がする。前は一回一回イライラしていたが、今は冷静になれるようになった。
ガチャ
玄関が開き、やつれている二人が何やら物騒なものを手に持って出てきた。
(父)「ノモ!警察が来るまで、そこを動くなよ!!!」
(母)「逃げちゃダメよ!」
怯えながら威嚇してくる姿勢に困惑する。まあ2年間も行方不明だったからなのか、、、?
それにしても少し対応ズレているような、、、二人はおかしいのは元からだが、ここまでボケてたっけ。時間の流れって残酷なんだな〜。
私はしんみりとした気持ちでそのままいうことを聞いて待っていた。
すると警察が音を鳴らして近づいてきた。一台、二台、五台、十台、二十台、、、、
どんどんサイレンの音は重なって増えていく。。。
「え、、ちょ、、多くない?」
「母さん?父さん?どうしたの?何があったの?」
(母)「・・・」
(父)「黙れ!!!この犯罪者が!!!!」
(父)「いいから、、、じっとしてなさい!!!!」
「は、、、はぁ??」
「もういい、、」
私は青い星へ帰ろうと思い、振り返ると数えきれない数の警察官と武装した警察官が盾を並べて私を包囲していた。
「銀河指名手配犯ノモ!!!動くな!!!そのまま両手を上に上げて!!跪け!!!」
「少しでも妙な動きをしたら撃つ!!!!」
は、、、はぁ!?!?
私はなぜか銀河指名手配を出されている。ヘリコプターが何台も集まって実家ごとものすごい明るさで照らしている。近所の人は何事か、とどんどん集まってきていた。野次馬やメディアも私を目当てに次から次へと集まってくる。
「いや、あの、、、私は何も、、」
「黙れ!!!抵抗するな!!撃つぞ!!」
半泣きになりながら怯えることしかできない。命の危機とはまた別の恐怖感。私は何もしていない。宇宙船が墜落して青い星に居ただけ、、、なのに、、なんで?なんでこんな仕打ちを受けなきゃいけないのよ!!!
宇宙制服の中からペタが私にだけ聞こえるくらいの声で話してきた。
『逃げましょう』
「え、」
『事情を話すのはどうやら無理なようです。宇宙船を止めた公園へ向かい、一旦引いてから情報を集めましょう』
「で、できない、、よ、、」
私は、帰って来れた安心感と少女たちと別れた悲しみと今の現状への不満と恐怖が同時に溢れ出して、泣いていた。
『私が制服を使って逃げますので、大丈夫です』
その一言を聞いてから、、、しばらく経ち、気づいたら宇宙船へ戻っていた、、、
なんで、、、、私は仰向けになって泣きながらそう呟いた。




