第一章-三部 あんた乗っ取られてたよ?
なんとか、乗っ取りから主人格を取り戻した少女。拘束していることに怒り狂うスリー。。。
ペタに警戒をしてもらいながら、私はここ三日の少女の様子について説明した。
「研究施設であんたらにそっくりな少女を見たことは覚えてる?」
(スリー)「ああ」
「あの後、家に帰る時の記憶は?」
(ファイ)「その辺りからぼんやりしかないんだよ」
(ニー)「確かに、そこからの記憶は曖昧なのだ。見ていたような見ていなかったような、、」
(ファイ)「夢の中にいる感覚だった」
(ワン)「そうそう!私は久しぶりに家族に会った夢だったよ?」
「人格に合わせて都合の良い幻想を見せていたってこと?ならなんで戻って来れたのよ?」
(ニー)「痛みとスリーの怒りだと思うのだ」
(スリー)「確かに俺が一番最初に戻って来れたな」
「物理的な痛みと怒りで主人格を取り戻せたのね」
「とにかく、あの後の帰りはひたすら無言だったし、家についてもニーの部屋に篭りっきりだったのよ?」
(ニー)「何か盗まれたのだ???」
ニーが自室へ走って行った。私はその後ろをすぐ追いかける。部屋の扉を開けたニーは呆然として、膝から崩れ落ちた。私も部屋の中を覗き込む。
「え、、」
部屋は無惨にも荒らされていた。書類や実験道具類は床に叩き落とされていてガラス編やゴム栓、何かしらの液体などが床で混ざり合っている。
私はニーを励ましつつ、一緒に片付けようと言い掃除を始めた。箒とちりとりでガラス片を取り除いて、集めていく。書類はぐちゃぐちゃになっていた。濡れてないものと濡れてしまっているものに分けて、とりあえず床を綺麗にしていく。
掃除をしながら乗っ取られていた際の話を続ける。
「あ、それでさ。帰ってきてからずっと部屋に篭ってて」
「さっき久しぶりに会ったんだよ。だけど会話が微妙に噛み合わないし、手探りに会話している感じだったから怪しくて、」
(ファイ)「うん」
「そこで問い詰めるために一度失神させて拘束してたの」
「でも、目が醒めたと思ったら」
(スリー)「俺だったのか」
「そう」
「ペタと私はあの海中研究施設にいたそっくりさんが人格を乗っ取ってたんだと思ってる」
『はい。皆様の人格とは相違点が多く、言動が支離滅裂でした。まだ人格の乗っ取りが起きる可能性もありますので、即時拘束できるよう攻撃態勢なのはご容赦ください』
(ファイ)「それは、いいけど。その仮説をもとに考えると、なんで主人格を乗っ取れたんだろう。この身体の主人格はみんなから認められないとできないって決めたんだけどな」
「そうなんだ」
『乗っ取られている際。部屋の声を少し聞いたのですが、[あの方]という妙な発言をしていました。』
「あの方?」
(ニー)「誰かに報告しなければいけなかったけど、この部屋の備品ではできなかったから癇癪を起こして荒らしたのだ」
「いや、そうなのかな、、」
『その可能性は高いでしょう。』
(ニー)「あの海中研究施設ではおそらく私を監視していたのだ。で、こっちがたまたま近づいてきたから乗っ取ったのだろうけど、ノモがいたから完璧に乗っ取れなかった」
「・・・!!そんな感じだったかも!!」
(ニー)「完璧に乗っ取ろうとしたところに、スリーの自我が戻ってきて失敗したってところなのだ」
「確かに!そう言われると、、、、ニー。今日めっちゃ冴えてるね!!」
(ニー)「大事な研究室を荒らした罪。重いのだ。」
ニーからとんでもない怒りと殺意を感じる。まあ、大事なものを勝手に壊されてたら誰でも怒るのは当たり前だ。とりあえず、そっくりさんは乗っ取ったことを誰かに伝えようとしたのだろう。でも失敗した。なら、少女の中にそっくりさんの人格はまだ残っているのだろうか?もしかしたら、この会話も聴かれているのかも。
「ねえ。乗っ取ろうとしたそっくりさんの人格ってあなたたちの中にまだ居ると思う?」
(ファイ)「どうだろう、、」
(ニー)「残っている感じは無いのだ。というか、入っていたことも覚えてないからどんな奴だったのか見当がつかないのだ」
「そっか、、、そうだよね〜」
「ペタ。私とそっくりさんとの会話ログとか撮ってる?」
『データにはありますが、声や容姿は一緒ですし、眼の色は見えていませんのでお役に立つのかどうか、、、』
「まあ、一応見せて?」
『承知しました。データを共有致します。』
「ありがとう」
少しでもそっくりさんの情報を掴んでおかないと。もし、今の会話や他の人格について知られているとしたら、完璧に真似られる可能性がある。見分けがつかなくなるかもしれない。
ペタが共有したログを見てみるが、何もてがかりは掴めなかった。今は、そっくりさんの人格が残っていないことを祈ることしかできなかった。
部屋を片付け終え、下に降りてお茶休憩を取ることにした。
フォーがハーブティーとお茶菓子を出してくれた。それをつまみながら、とりあえずそっくりさんについては一区切りさせた。
「あ、そうそう。ペタの回復度が40%になったからそろそろ帰りの宇宙船を設計していきたいんだけど」
(ニー)「わかったのだ!でもノモの故郷の星ってどこなのだ?離れすぎていたら帰るのに何年もかかるかもなのだ」
「人工惑星Neoっていう星。住みやすい環境を人工的に作り出す維持装置のおかげで最近住めるようになった星」
(ニー)「へぇ〜!!そんなこともできるようになったのだ??」
「ええ。ずいぶん前から研究されてたみたいだけど、20年くらい前からようやく住めるようなり始めたのよ」
(ニー)「でも元から住める星もあるのに、なんでわざわざ作り出す必要があるのだ?」
「それは、、ある程度開拓されている星は価値が高いから惑星不動産に高値で売れるのよ」
「あと、天然の星より住みやすいし、価格もバリエーションがあるから結構人気なのよね」
(スリー)「なんかきなクセェ商売だなー」
「うーん、、、まあ確かに」
「ペタが設計してくれた宇宙船だと数十年かかるらしんだけど、あのそっくりさんが設計し直してくれた奴だとめっちゃ時短できるらしいんだよね」
(ニー)「どれ?」
「これこれ、」
私はそっくりさんが描いてくれた設計図をニーに見せた。
(ニー)「このγ機関というのはなんなのだ?」
「わからない。ニーに聞こうと思ってたんだけど、ニーがわからないんなら誰もわかんないよ」
(ニー)「作り方は載ってるみたいだけど、、、とりあえずやってみるのだ」
「お願いね。宇宙船のことはとりあえず、ニーとペタがいればできると思うんだけど、ペタの回復度についてはまだ足りないと思うのよね」
(ファイ)「そうなのかい?確か、操縦には35%あればいいんだよね?あと予備で少し欲しいって」
「そう、でも。回復度に充てられる破片と宇宙生物がいないのよ。昨日ほとんど倒しちゃったみたい」
(ファイ)「うーん、、、」
(スリー)「あいつは?クリスタル」
「クリスタルマインドでしょ?考えてみたのは見たけど、不明すぎて危険だからやめようってペタと話してんのよね」
(スリー)「俺はあいつと一回、戦ってみたいんだよね、、、」
(ニー)「だから危険だからダメって何度も言ってるのだ!」
(ファイ)「でも確かにもうそれしかいないよな〜」
(ニー)「ファイも何言ってるのだ!」
「ペタもいるし、なんとかなりそうじゃない?ニー?」
(ニー)「私は絶対にやめといた方がいいと思うのだ!!ノモ!!」
「確かに、最初に会った時は怖かったけど、今のペタだったら勝てると思うけど、、」
『回答に困難な質問ですね。勝率を出せるような相手ではないとだけ申し上げておきます。』
「ふーん」
私はスリーとペタと一緒に討伐準備をどんどん進めていた。こういう時のスリーとは息が合うから憎めない奴なんだよな。
ペタも口ではああ言ってるけど、討伐準備に率先して手伝ってくれてるから、もう一回接触してみたいんだろうし。
[クリスタルマインド]
[生態]
不明
[体長]
180~220cm
[生息地]
青い星の高原地帯や山岳地帯。たまに青の渓谷や青の樹海にも現れる。
[食性]
雑食。鉱石や植物、宇宙生物の核などを食べる。また、頭部の鉱石が欠損していると好んで鉱石を食べる模様。
[青い星内の生態系の位置]
青い星トップに位置する。残虐性があり、食べる以外の目的で動植物を弄ぶ一面もあり。
[特徴]
・頭部が鉱石でできている。(青色と白色の個体がいる)
・総数は不明。(増えてはいないと思われる)
・おしゃれな白いパーカーのようなものを着ている。色彩豊かな鉱石模様があしらわれており、おしゃれ。
・頭部から特殊な電波を発し、コミュニケーションをとっていると思われる。
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