潜入
深海2200mで行われる会議。。。。
私はもう一度少女の人格たちの説得を試みる。
「次、いつ見つかるか分からない。相手は宇宙生物ではなく人間が作った人工物だ。高度な技術で捜索を邪魔されて仕舞えば、ペタを目標の回復度まで上げるのに遠回りになってしまうかも」
「だから、今、逃げないうちにどうにか潜入しようよ!」
『・・・』
(スリー)「自分のことしか考えてねーじゃねーか」
(スリー)「仮に攻撃を喰らって宇宙船が壊されてみろ!すぐに死んじまうんだぞ。お前は良いかも知れねーけどな」
(スリー)「こっちは一度に5人死ぬんだ。もっと考えてものをいえ」
さらに重い空気になってしまった。口論になっている最中でも研究施設からの攻撃は止まらず、リズムを刻むように船内は振動を続けている。
この空気を晴らしてくれたのはファイだった。
(ファイ)「ノモ。すまない。君の気持ちを考えていなかった。そりゃ早く自分の星へ帰りたいよな。僕たちはずっとここにいるから焦りなんて死ぬ間際にしか感じなくなっていたのかも知れない」
「え、」
(ファイ)「潜水しよう」
「い、いいの?」
『承知しました。潜水致します。向こうの攻撃は潮の影響で威力は落ちていましたが、近づくにつれて威力は落ちずそのまま当たってきます。衝撃に備えておいてください。』
スリーは納得いってなさそうだが、ファイが決めてしまったなら従わざるえないのだろう。私はファイだけではなく、反対していた少女の人格全てに謝る気持ちで深々と頭を下げた。皆、私のために危険を犯してくれたのだ。
ーー潜水開始から10分後ーー
ペタの予告通り、向こうが発射する弾丸の威力はさらに増して爆発も大きくなる。船内は立っていられなくなるほど揺れ始める。海中研究施設はゆっくりだが、先ほどの場所からさらに深い方へと進行していた。相変わらず、潮は乱れており前後には進めない。
(ニー)「ペタ!どうやって近づくのだ!!」
爆発音にかき消されないように大きな声で質問するニー。会議中はチビドラゴンの姿で会話をしていたペタはその全てを宇宙船と融合させ、船内アナウンスで会話をし始めた。
『先ほど得た[棘]を活用して近づいていきます。一気に近づきますので、しっかりと掴まっていてください。』
ペタのアナウンスはいつもより早口だった。今は、攻撃から船を守るために[楯鱗]で外殻を守りながら[錘]で上下を操縦している。さらに、[棘]を使って前後に移動させようとしているため油断できないのだろう。
機械生命体のペタにはマルチタスクは得意分野だろうが、、、どうやって前進するんだ?
すると宇宙船の後方から何か動作している音がし始める。音が止むと、体が座席に押しつけられた。気づくと、一気に研究施設近くまで接近している。窓からは
ぼんやりと黄色い光が見える。大きな建物から発せられるネオンの黄色が視界に入る。その後、多角形のガラス窓と光り輝く金属でできた壁が見えた。壁面には古びた文字で「アンバー」と書かれている。
ぶつかるスレスレまで近づき、ペタが入口らしき突起に威力マックスのプラズマキャノンを溶接バーナーのようにしてこじ開ける。
研究施設壁面を丸くくり抜き、なんとか侵入に成功。
同時に研究施設内にはけたたましく侵入者が入り込んだと、警報が鳴り響いている。しかし、誰一人そこにはいなかった。警備システムだけが生きて深海を彷徨っていたのだろう。。。
大量に水が入ってくるかと思いきや、ペタの[楯鱗]で入ってきた穴は埋められていた。中は真っ暗で、赤い警報ランプだけが不気味に回転している。真っ白な壁に一筋の青いラインが引かれている。病院のような内装に既視感を持ちつつ、少女と進んでいく。
ペタはリフレクトクローに変身し、リフレクトクローを解析した際に手に入れた[反射]の機能で身体を発光させ、周囲5mほどを眩く照らしてくれた。
威嚇も含めた変身は見た目以上に心強い。
しばらく施設内を練り歩いたが、何もなかった。もぬけの殻で、人がいた形跡すら無い。いや、人が住めないような施設だ。トイレも無いし、水も出ない。食糧庫らしき部屋もなく、電力供給をするための発電所とそれを送電する機械しか無いのだ。
「不気味だ・・」
(ファイ)「そうだね。この施設は人を必要としないみたいだ。」
『そのようですね。ペタのような機械生命体に何かさせていたのでしょうか?』
「でも、それらしき機械も無いよね・・・」
(スリー)「なんで、作られたんだ?」
(ニー)「研究施設なんだから何かを極秘に研究するためなのだ?」
『そう考えてみたのですが、研究道具すらも無いようです。』
「まじ、なんなの、、、この施設。」
最後の部屋となった。この施設は5階立てになっており、私たちが侵入してきたB2からF3まで登ってきた。階段は所々にあったが、崩壊している箇所が多く何度も同じ道を歩いては戻り、歩いては戻りを繰り返した。
部屋の入り口は絶対に人の手では動かせないような大きさの真っ白な自動扉。他の扉は全て開いた状態だったので、色までは確認していなかったが、おそらく白で統一されているのだろう。
扉の上には[操縦室]と書かれている。さすがにここには何かあるだろう、、、
入ろうとしたが、自動扉のセンサーは壊れていて作動しない。人の手では動かせないし。。。うん、、、仕方ないよね!
スリーに思いっきり蹴ってもらった。が、びくともしない。スリーは身体に電気を流されたように小刻みに震わせてその場に倒れ込む。痛そう。。。
代わりにペタが潜入する時と同じ方法で開けてくれた。二度手間だし、被害出てるし、、、
部屋へ入ると、やはりもぬけの殻だった。円形の部屋の中央に操縦席が一席だけ入り口に背もたれを向けて置かれている。誰もいなかった施設に人影がそこにあった。スリーが痛めた足を片方引きながら、怒りをそいつにぶつける。
(スリー)「おい!!誰だお前!!!」
向こうからすればこちらが誰なんだって話だよな、、、勝手に入ってきたし、、
操縦席がゆっくりと回転してこちらに横顔が見えた。その瞬間私たちは絶句する。少女の顔にそっくりな人物がそこに座っていたのだ。完全に振り返る前にその瓜二つな少女は塵となって消えていった。。。
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