淡水の海王と遺された海中研究施設A
海面に突っ込んだ宇宙船は大きな衝撃とともに船内を青く染めた。窓から見える海中からの景色は薄暗く、微生物のようなものがフヨフヨとあたりに降っている。ライトをつけ、少し見晴らしを良くすると海底の岩肌や砂に影ができる。海藻は揺らめいて潮に流されまいと必死に根を張っている。小魚の大群がこちらが通ると同時にぶつからないよう、はけてくれた。
どんどん深いところへ潜っていく。すっかりと辺りは真っ暗になり船内に暖色系のライトが4箇所つけられた。涙滴型の宇宙船というと聞こえはいいかもしれないが、外見はプロペラがついていないヘリコプターそっくりだ。
順調に進んでいるのか確認するためペタに地図を出してもらった。ペタが表示した地図は今までの鮮明で分かりやすい地図ではなく、目的地の方向だけを示した地図で、それは青ペンキを平筆で塗り広げたかのようだった。
「ペタ。この地図目的地のざっくりとした方向しか載ってないけど、なんで?」
『海中研究施設Aはどこにあるのか見当がつきません』
「え?そうなの?」
『はい。なので現在はおそらく研究施設付近にあるペタの一部が発している微量の信号をキャッチしている状態です。向こうの反応が強くなるであろうと考えられる方に矢印を表示しているだけですので、そちらに実在しているのかはまだわからないのです。』
(ファイ)「なら、なんで海中研究施設Aに目標を絞ったんだい?海なら他にも見当がつきそうな場所がありそうなものだけど、、」
『この研究施設はあると仮定しているだけです。実在するのかは分かりません。ただ、ペタの反応が何か、物理的なもの以外に遮断されている可能性が高いと考えられます。以前のように渓谷内にある場合では、強い反応を感知できますので。』
『それに、前よりも回復したペタはより探索機能がより精密に対応できるようになっております。以前の回復度では今回、探知している電波はキャッチすることはできなかったでしょう。』
「つまり、、、?」
『性能アップしたペタでも感知しにくい遮断方法を持っていると仮定し破片の捜索をするならば、海中研究施設Aがリストアップされます。』
(ニー)「でも、今までそんなところ見たことがないのだ。本当にあるのだ?」
『可能性としては50%。存在すると思われます。電波を遮断するような施設である点と、潮に破片が流されていっていない点を考慮するとどこか潮の流れに影響されない場所にあると言えるのではないでしょうか』
確かに、海に破片が散らばったのだとしたら潮の流れでどこかへ流され続けているか、漂着しているだろう。それか、漂流しないくらい大きなサイズの破片なのかどちらかだ。
こちらとしては、どちらでも良い。大きな破片ならば、それだけ大幅にペタが回復できるし、研究施設にあるとするならば、破片とは別に何か得られるかもしれないからだ。
「海、ねえ。宇宙よりも何かドキドキする」
(ニー)「どうして?」
「宇宙は行ける星が決まってたから。いくら宇宙船の性能が良いやつを乗っても人が行ける範囲は決まってるんだよ」
「その分、海は未知数な感じがある。安全性を程よく解除されている感じが緊張感と好奇心を刺激されるんだよね」
(ニー)「なるほど。ちょっと分かるかもなのだ」
そんな会話をしていると、ペタが攻撃準備をし始めた。何事かと思いフロントを見ると、鉱石でできた体と鰭の先端が下から見えた。ライトに集まってきた魚だろうか、、?
遠くに行ったのか攻撃をしないペタ。座ろうとした瞬間、大きな衝撃と轟音が船内に響く。
ペタはこの機会を狙っていたらしく、プラズマキャノンを対象に放った。宇宙船の底から放たれたキャノンでバラバラになった死骸がサイドの窓とフロントの窓から見える。
「な、なに???」
『シルバーヴェノムフィンです。淡水域に住む海王です。』
「海王?」
『淡水域ではこの魚が生態系のトップに君臨しています。が、すでに排除いたしました。核は避けてますので、回収致します。』
(ニー)「そんな、、、シルバーヴェノムフィンはこの星でトップ3に入る強さなのだ!それを一発で倒すなんて、、、」
どうやらペタがこの星でトップ3に入るほど強くなったらしい。(現在回復度16%)
ペタ、、伸び代ありすぎだろ、、
『先ほど取り込んだ核の解析が終了しました。回復度が16%から18%になりました。追加された新たな機能が2つございます。』
「なになに?」
(スリー)「攻撃とかか??」
『新しく追加した機能は[棘]と[楯鱗]です。』
[棘]
攻撃特化の機能。折れやすい素材でできており、刺さった部分から自動的に細かい棘が無数に身体へ広がっていく。
[楯鱗]
防御特化の機能。[棘]を改良。シルバーヴェノムフィンの鱗を参考に、突起物のある硬質化された鱗です。
「おお〜」
(スリー)「矛と盾両方を手に入れたな!」
(ニー)「矛から盾を作ったっていうのが面白いのだ!」
「確かに!」
海王を一蹴したペタがさらに強くなった。あとは研究施設が見つかれば完璧だ!
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