探索工作 ③
翌朝、目が覚めると宇宙船内にいたはずの私は何故か外で眠っていた。なんだか背中が肌寒いとは感じていたが、、、
焚き火の陽炎越しに変貌した宇宙船を傍観する。流線型の旧式戦闘機のような見た目だったソレの面影はどこにもなく、涙滴型に。窄まっている後方部分の先端には細い柔軟性のある棒と小さな球体が取り付けられている。
色味を変わっており、前の黒々としていた趣味の悪い色合いから、白をベースに緑の細いラインが2本描かれた今っぽいデザインへとなっていた。
『ノモ様。おはようございます。失礼ながら昨晩、宇宙船を改良する際に邪魔でしたので火のそばへと移動させて頂きました。』
「邪魔って、、、」
少し胸に刺さる単語を朝っぱらから浴びせられたが、完成間近の船を見せられちゃ反論できない。
真剣に改良している側で鼾をかかれていたら、集中力は削がれる。でも、、、もうちょっと発言に配慮して欲しかった、、、な、、、
大幅に回復したペタの機能に頼ってばっかりなのは事実だが、性格もだんだん横柄になってきてない、、?まだ、無口の方が可愛げがあったな〜、、なんて考えていると、ペタから頭を突かれた。
『話を聴いていましたか?ノモ様?』
「え、、ごめん、何?」
『・・・』
ペタがチビドラゴンの姿で鼻息を漏らす。どうやら私がペタを都合よく可愛がっていた頃を想起している間、何度も話をしてくれていたらしい。
『食糧調達の話です。もうすぐ昼になるので、そろそろ調達へ向かいましょう』
「ほーい」
『ペタの6%を制服に取り込ませます。残りはこちらに残ってニー様のお手伝いをしておりますので、どうぞお気をつけて。』
「え、足りる?」
『両翼の機能分はとってあります。上手く使いこなして調達をお願い致します。こちらの作業にどうしても10%必要なのです』
「分かったよ」
なんで10%も必要なのか訊いても私には理解できないだろうし、昨日の晩のことでアホにとやかく言われる前に飛び立つとするか。
『両翼』の機能を稼働させ、飛び立とうとした瞬間、船内で作業をしていたニーはスリーから強引に身体を奪われて私の方へ走ってきた。ドロップキックを喰らわせようと、地面を蹴って両脚を伸ばした体制でこちらへ来るスリー。
私はギョッとしたが、スリーが地面を蹴ったタイミングと同時に地面を踏み込み、ギリギリスリーの靴底が当たる前に飛び立った。
一気に100m以上の高さに行ったため、耳に閉塞感を感じる。流石についてきてないだろうと思い足元を見回すと、木を使ってこちらへ跳んでくる人影を見つける。
踏み込む前から大木の先端は地面スレスレまで撓っていた。木の弾性とスリーの馬鹿力による跳躍で私の片脚を左手で掴んできた。なんて奴だ。
「おい!危ないって!!」
(スリー)「テメェ!昨日の晩のことゆるさねぇぇぇええかんな!!!!」
額に血管がボコボコと浮き出ている。せっかくの美しい顔は憎しみと怒りで原型をとどめてはいなかった。掴まれている右足首はさらに強い力で掴まれ激痛が走る。
両翼の制御が保てなくなり、少し高度を落として樹海の中を駆け抜ける。
奇跡的な感覚で枝や幹を避けているが、左手はまだ、私の右足首を離してはいない。さらにギッと握り込まれ、右下半身に激痛が再び走る。両翼の制御に意識を割けなくなり、たまらず不時着した。
スピードをなんとか抑えるため、受け身を取ろうと姿勢を構えたが、スリーが反射で抱き抱え代わりに取ってくれた。2人の身体は何度も地面に叩きつけられ、土煙をたて枝をへし折りながら転がって行く。
止まる気配が無かったので、タイミングを見てスリーがぶつかりそうな幹を地面と垂直な体勢で両脚で着き、なんとか着地した。
スリーに抱かれた状態で私は一瞬安堵したが、コイツが私に何をしてくるのかを想像を膨らませるといてもたってもいられなくなり、ジタバタしてホールドを解除しようと試みる。が、失敗。
(スリー)「捕まえた」
そう言いながら顔を上げ、ゲス顔を至近距離でまざまざと見せつけられた。キスする距離まで顔を寄せられ、目のやり場に困っていると、ファイに人格が替わり、宥めてくれた。
なかなか、怒りが収まらないらしくいつもスリーを宥めるファイが押されていた。聞けば、私がスリーを放置したあのあと、1時間も空中に放置されていたらしい。ペタの判断で、スリーの異常な怒りが鎮まるまで放置することにしたらしいが、それが逆効果だったらしい。ペタの予想を遥かに上回り、倍の時間を要した。っと。
私にも非はあるが、ペタの誤った判断による被害者だったのだ。
怒り狂うスリーにファイが名案を閃いたと叫ぶ。
(ファイ)「ノモは夕飯のためにラビットを捕まえにきたんだろう?そしたらどっちが多く捕獲できるか勝負したらどう?勝った方が負けた方に一つ何か命令できる!」
「はぁ?なに言い出すのよファイまで、、、」
私は断固拒否!という姿勢を取るが、あやつはやる気満々になっている。マジかよ。めんどくさ。
(ファイ)「よーい。。。どん!!!」
ファイが急にスタートの合図を出し、参加せざる終えなかった。「参加しなかったら無条件に負け」と言われたら、、、
両翼を展開して超速で捕獲していくが、同じくらいの速度でスリーも捕獲していく。結果は1匹差で私の負けだった。
思いがけない大量調達に、一喜一憂できるような雰囲気ではなく、スリーからの要望を聞く。かなり考え込んでいるスリーを見ながらゴクリと唾を飲み込む。
何をするつもりだ、、、、?
(スリー)「考えとく」
そういうと、宇宙船の方に向かって走り去っていった。あれ、、、?なんだったんだよ今の時間、、、
私もインベントリに獲ったラビットを入れて、『両翼』で帰った。
帰り着くと、忙しなく動いているペタがこちらに火傷しない程度のレーザーをピュンピュンと飛ばしてきた。どうやら怒っている。
『どこにいってたんですか。ニー様。作業を放置したままどこかへ向かってしまったため、ペタが残って作業を終わらせました。』
宇宙船の方を見ると涙滴型の船の後方にはプロペラがつけられている。見た目の変化としてはそれだけだが、中身もおそらく改良済みなのだろう。ニー要らないじゃん。
(ニー)「すまないのだ。でもラビットはスリーとノモがたくさん獲ってきてくれたのだ」
『そんなに食べきれないでしょう。保存食へと加工しますので、全て下処理を行なってください。』
「はい」
(スリー)「お、おう」
スリーも昨日の晩のことがトラウマなのか、怒っているペタが怖かったらしい。
下された指示を的確にこなしていった。
1ヶ月分ほどの保存食ができた。宇宙船内にそれを積み込み、『海中研究施設A』へ出発する準備をする。私たちはペタの指示に従って、忙しなく動き、滞りなく準備を終わらせた。
出発する頃には夕方になっていた。次の日の早朝に出発をしようとファイが提案をしたが、ペタはそれを拒否した。なぜか急かしてくるので仕方なく出発する一向。
夕暮れ時に海へ沈んでいく日を眺めていると、海面が迫ってきているのに気づく。慌てふためいている二人を無視して涙滴型の宇宙船は海にそのまま突っ込んだ。巨大な水柱と飛び散った水滴が沈んでいく淡い陽の光を無造作に反射させていた。
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