探索工作 ①
私たちは『両翼』の機能を使って、次の素材「ニアクリスタル」を取りに樹海近くの洞窟へと向かった。
「っと。ここ?」
『はい』
洞窟前に華麗に着地を決めて、周囲を見回す。
洞窟の入口は神秘的な青色の苔で覆われており、洞窟の内部は微かに黄色や橙色に発光するニアクリスタルによって幻想的な光で照らされていた。
「ふーん、この洞窟か。青の渓谷の洞窟に比べたら、小さいし、大したことなさそうだね」
巨大な洞窟を制覇したのに、今更こんな洞穴のような洞窟に私がビビるとでも?
さっさとニアクリスタルを取って帰ろ〜。
『確かに、前の洞窟より小さいですが、油断を感じます。回復度はまだ16%ですので、きちんと警戒していただきたいです。』
「16%も回復してるんだから大丈夫だよ〜。それにここら辺の生物は今のペタには敵わないだろうしね」
『・・・・・』
ペタの端的な声では伝わりにくいが、緊迫感を少し感じた。そんなに心配しなくても大丈夫でしょ。
洞窟の奥へとフラフラと見回しながら入っていく。入り口が見えなくなる辺りまでくると中は一段階暗くなり、少し広がってきた。幸い、ニアクリスタルは発光するためどこにあるのか見たらすぐに分かる。とりあえず近くのから取ろうとしゃがみこんだ。
その瞬間、高い探知能力で動きを捉えたペタの警告が鳴り響く。私は反射的に後ろに飛び退いた。尻餅をつけたまま上に顔を上げると、目の前には前回、不意打ちで倒したリフレクトクローがいた。前足、胸、下顎と目線を上げていき、涎が光っていた。すぐさま体勢を整えて向かいあうように距離を取る。
この生物は自分の外皮で光を反射する能力を使って、ステルス効果を生み出す。それは見事な技で全く目立たない。現にギリギリまで気づかなかった。
リフレクトクローが私たちに飛び掛かろうとして前足を大きくこちらへ向けた瞬間、緑の閃光がその喉元を貫いた。
ペタは飛びかかる隙を狙って瞬時にその動きを捉え、プラズマキャノンを展開して一撃で葬り去ってしまった。
『ノモ様、安心してください。もう外敵は倒しました。無事で何よりです。』
ペタはほっと一息ついてから言った。だから言いいましたよね?油断しないでくださいと厳重に怒られた。
「や、やっぱりペタがいると心強いな〜。助かったよ〜。さて、ニアクリスタルはどれくらい集めればいいのかな?」
『1kgもあれば足りるでしょう。』
「りょーかい!警戒頼むね!」
『・・・承知』
両者はその後も警戒を怠らず、洞窟内部でニアクリスタルを集め続けた。ニアクリスタルは小さな結晶が集まっている形状をしており、微細な光を放っている。その美しい輝きに見とれつつも、任務を果たすためにそれらを一つ一つ丁寧に回収していった。
「よし!これくらいでいいかな」
『インベントリに入れておきます』
「ほい」
私はペタに集めたニアクリスタルを取り込ませながら次へ移動した。
−ー海淡水域浜辺-上空ーー
『ノモ様。次の目的地はここです。』
「了解〜」
すると、両肩についている『両翼』がパタッと閉じて急降下し始める。慌てふためく私を確認しながら無言で急降下し続けるペタ。着地の際には『柔脚』が発動してアイアンマンのように片膝をつけてもう片方を立てた状態で着地した。大きな脚の局部ら辺に私の両足が空中をぶらつかせている。
ズドンッ〜〜〜〜〜!!!!
地面が揺れると同時に衝撃がつたわってくる。
『柔脚 解除』
ペタがそういうと大きな脚は消え、私は浜辺の砂に顔から転落した。
「ふぎゃ」
「ちょっと!もっとゆっくり着地してよ!!」
私たちが着地した地面は円状にヒビが3重ほど的のように入っており、中心部は深く球状にえぐれていた。
到着したのは、この星の大半を占める不思議な淡水域だった。どうやら水面から300mくらいまでは淡水域でそこから下は海水域となっているらしい。海水の部分は塩分濃度が高く、浮力が凄まじいらしい。その浮力と水圧に負けないように改良するそうだ。
海の水面は夕日によってオレンジと紫で彩られている。この辺りの水深10mくらいの海底に青天草が豊富に生息しているという。その植物は海中でも生き抜くために必要な成分を含んでいるらしい。
「ペタ、青天草はどうやって取りにいくんだ?」
『潜ります』
「え」
『潜ります』
「わたし、泳げない』
『潜れます』
ペタが宇宙制服に入り込み、フードを被せてきた。水温を感じないように体温調整をしてくれるのと、金槌の私でも水中を動けるように手のひらと足の裏からジェットが出るらしい。
『それでは『ジェット』を発動します』
まだ水に入ってないんですけど、、、?
プシューーーー!!!!!
足から出てきたジェットによって弧を描くように頭から海に無理やり飛び込まされた。そのまま海底に向かっていく。宇宙制服が私の意思に反して緻密に動かしてすぐに海底に辿り着いた。まだ、私の心は安静になっておらず半分パニック状態。海底に着くまでが早すぎて海底であたふたしていると、ペタに激しい動きは自重してくださいとフード内でアナウンスがかかる。
ペタはパニックな私を置いておいて、水中カメラとセンサーを展開し、海底に生息する青天草がないか探索し始めた。数分後、海底に海の青とは別の輝きを放つ美しい植物を見つけ出し、その位置を私に伝えてきた。
『ノモ様、青天草を発見しました。水深は約15メートルです。』
私は水中でようやく落ち着いて辺りを見回していたが、ペタが早くしろ言わんばかりに宇宙制服をコントロールして青天草のところまでグングン進んで行った。
『青天草を採取してください』
「わかったから、グングン深いところに行かないで!!!!」
『・・・承知しました」
その後、ようやく海に慣れてきた私は『ジェット』の機能で魚に追いついて遊んでいると、ついでに食料調達もしましょう。とペタが言い出し、泳いでいる食べられそうな魚たちを確認。ペタが水中で軽くレーザーを発射して魚を仕留め、私がそれを収集する。
「よし、これで食料も確保できたな。」
『これで一晩は安心です。』
二人は採取した素材と晩御飯の魚をしっかりと確認してから、海から上がり、宇宙船に『両翼』を使って夜になる前に戻った。海に入って濡れていた宇宙制服のまま空を超速で飛ぶのは寒すぎた。体温が急速に低下しているのを検知したペタがヒーター機能をつけてくれた。
少女の元に着く頃には宇宙制服は乾いていて、乾燥機にかけたみたいになっていた。ぽかぽかしていたのと、疲れが溜まっていて睡魔が襲ってきた。ニーに素材と魚を渡し、調理を任せてそのまま眠ってしまった。




