出発→青の渓谷へ
必要な荷物を積み終わり、することがなくなった。
ファイはまだ宇宙船の整備をしている。埃は被っていないが、結構古いやつなので何か不具合でもあるのだろうか?
整備を初めて1時間ほど経った。まだ終わっていない。早く出発したいのにこのままだと夜になってしまう。私はどこまで整備が終わったのか確認してみた。
「ねぇ、あとどれくらいかかるの?」
「んーっと、、、10分くらい?これつけたら終わりだから」
「何にそんなに時間かけてるのよ、、、?」
「武器をつけてるんだ」
「武器?」
「そう。青の渓谷にはグリーンクリスタルパイソンがいるからね」
「宇宙生物?」
「そう、、通常の攻撃や武器はほとんど効かないから強力な一撃で吹き飛ばすしかないから」
力んで上擦った声で会話をしながら武器を取り付けているファイ。何か手伝おうか?と聞いてももうすぐ終わるから。としか返事しない。私だって指示してくれれば手伝うのに。。。
「よし、、、!終わったよ!ノモ!」
「はいよ〜」
「時間かけてすまないね。これでグリーンクリスタルパイソンは倒せるよ」
「そのグリーンクリスタルパイソンって大きいの?」
グリーンクリスタルパイソン(長いので蛇で)の特徴を聞きながら宇宙船に乗り込んだ。中は前後に1席ずつしかない操縦室とその後ろに1.5畳ほどの空間しかなく、内装はシンプルかつ、古い。マニュアルで操縦しないといけないらしく、あちこちにレバーやハンドル、モニターがついていて、どれをどう見るのかわからない。
操縦は任せて、さっきの話の続きをする。
「グリーンクリスタルパイソンは全長8~12mの巨大宇宙生物だよ。脱皮を繰り返してできた鉱石の皮膚はスリーの全力でも傷ひとつつかない頑丈なものだよ」
「へ〜。スリーがへなちょこなのもあるだろうけど、、じゃあどうやって倒すの?」
「スリーの攻撃力は小さい星なら吹き飛ばせるほどの威力はあるよ。それ以上に頑丈なヤツにはさっき積んだプラズマキャノンを使う」
「スリー、、まじ?」
(スリー)「大マジ!!俺強いかんね??」
「で、、、その、プラズマキャノンだとなんで倒せるのよ。普通の攻撃は跳ね返すんでしょ?」
おい!無視すんな!というスリーの声には耳を貸さない、そんな威力のあるプラズマキャノンは信頼できるものなのかを確認しておきたい。これで、もし、効かない場合は渓谷にある宇宙船の破片を断念しないといけなくなるからだ。
「ニーが作ったこのプラズマキャノンは体の組織レベルで分解をする武器なんだ。だから跳ね返される前に消し飛ばせる」
「おお〜」
「それにグリーンクリスタルパイソンは動きがトロいから当てるのも簡単だしね」
「ならいけそうね!」
「ただ、その奥にいるスパイキークリスタルパイソンには、、、」
(スリー)「よーし!!ファイ!!もっと飛ばせ!!早く行こうぜ!!」
(ん?なんか今大事なことを言ってたような、、、、?)
「え、なんて?ファイ」
(スリー)「うるせえな!俺よりも強いこの武器で勝てるって言ってんだから早く行こうぜ!」
「…」
ーー青の渓谷上空ーー
切り立った崖二つで挟まれてできた地形の底の方や崖の出っ張った部分には
早速、蛇がいた。1匹のようだし、上空からの不意打ちだったのでキャノン(残弾数3)ですぐに倒せた。辺りを警戒しつつ、着陸して蛇の核を取る。するとペタの反応が強くなり、蝶々に変身したかと思ったら、消し飛ばした部分から蛇の中に入り込んでいってしまった。
「ペタ!」
「どうしたんだろう??」
ペタが入っていって少し経った後、蛇のお腹部分から淡い光が漏れ出始める。光が少しずつ弱々しくなっていき、消えてしまうとペタは消し飛ばした部分から出てきた。
何か取り込んできたペタは宇宙制服に入っていき、回復度を見るようにペタが勝手に操作をしていく。表示された回復度の欄は1.02%から1.3%になっていた。また、インベントリには昨日取り込んだ宇宙船の破片とは別に、新しい破片が追加されていた。昨日より小さいものだったが、どうやら蛇が飲み込んでいたのを見つけ、取り込んできたらしい。
「ペタが蛇の中に入ってた宇宙船の破片を見つけてきたみたい!!回復してる!」
(ワン)「おお〜!!どのくらい回復したの?」
「1.3%になってる」
(ワン)「幸先いいじゃん〜!!それに核もあるからさらに回復するんじゃない?」
(ニー)「よし、早速、宇宙船内で核を取り込ませるのだ!」
着陸させていた宇宙船に乗り込み、操縦席後ろのちょっとしたスペースでペタに蛇の核を取り込ませた。すると回復度は1.3%から1.5%に上がった。どうやらあの虎より、こっちの核の方がエーテリウムの密度がより高いようだ。
「1.5%まで回復したよ!」
(スリー)「順調だな!ここでしばらく粘って10%くらいまで回復させていこう!」
確かに蛇の核は虎のより回復度があるけれど、10%までっていったいどれだけ倒せばいいのやら、、、
仮に5匹で1%だとすると、40匹以上倒さないといけないし、、、
積荷の感じだとそんなにキャノンの弾はないだろうし、、、現実的ではないような。
(ファイ)「いや、スリーそれは無理だ。プラズマキャノンは残り3発しか打てない。戦いをメインに回復させるんじゃなくて、あくまで宇宙船の破片で回復させるプランで行く」
(スリー)「、、、うい」
「残念〜」
「ッチ」
やっぱりね。そもそもそんなに蛇がいるのかも怪しいし、戦いはメインプランじゃないんだって!そんな危険を冒す必要はない。ここには、蛇をやっつけにきたんじゃなくて、破片を集めに来たっつーの。
(ファイ)「ノモ。ペタの反応は今ので最後かい?もしそうなら、次の場所を探さないと、、」
「いや、まだここに破片があるみたい。渓谷の奥へ行こうと案内してるから」
(ファイ)「了解。ならもう少し先へ行ってみよう。宇宙船で行けるギリギリのところまでいってみて、さらに奥ならそこからは歩きで進もう!」
「なるべく手前にあるといいけど、、」
ペタの回復度が少し上がったおかげで、近くの宇宙船の破片から発せられるペタの一部の反応が強く表示されるようになった。どんどん便利になってくれると探索の手間を省いて回復させていけるかもしれないな。
私たちはそのまま操縦室に行き、青の渓谷の奥へと進んでいった。
宇宙船は他の蛇を刺激しないように静かに青の渓谷内を前進していく。接近しそうなくらい大きな蛇がいるときは先程と同様にキャノンで吹き飛ばして、核を回収していく。至近距離にいたため、2匹をどうしても倒さないといけなかったため残り一発しかないが、ペタの反応的にはさらに奥らしい。
私は残弾数の不安を抱きつつ、ふと窓の外を見た。
窓から見える外の景色は、カイヤナイトやブルースピネル(青い宝石の一種)のような妖艶とした青い光と煌めきを放っている。それに渓谷の真ん中には沢があり、水の反射と青空の反射と渓谷自体の青い鉱石が重複しでできた壮大な風景に思わず目を奪われてしまう。
初めてガラス張りのエレベーターに乗った子供みたいな反応をしていると、前の席のやつに鼻で笑われた。(多分スリーだろう。。。)
ま、まあ、私はもうあいつのそんな挙動にいちいち反応するほど馬鹿じゃない。。。
そう言い聞かせながら無意識に拳をグッと握り込む。
(ファイ)「ノモ。美しい景色とはいえ、渓谷の幅はどんどん狭くなるし深くなる。十分危険な場所だから、よく周りを見張っててね?」
「わ、分かってるよ、、ペタもさっき倒した2匹分の蛇を取り込んだから2%まで回復したし」
(スリー)「ペタ頼りじゃねーか」
「うっさい」
スリーに図星をつかれ、ジト目であいつを睨む。一番言われたくないやつに図星を突かれると、どうしてこんなにも腹が立つのだろうか。。この星に来て、こいつと接してからの私は少し感情的になった気がする。
そんなこんな注意して見張っていると、宇宙船がその場で止まった。どうしたのかと思いファイに聞こうとするが、フロントの窓を見ると止まった理由がすぐに理解した。目の前には崖が交差して行き止まりになっており、代わりに下へ深くなっていた。どうやら降りていくしかないようだ。
宇宙船はホバリングをしながら、ゆっくりと下へ降下していく。
「ノモ。ペタ。下に何もいないか、確認してくれ!死角になりそうな場所があったらそこへ着陸する」
「いないと思うよ。暗くてよく見えないけど、ペタも破片以外反応を示してないから」
「どこか着陸できそうか?」
「うーんと、、、左下の方に出っ張った崖がドーム状になっているところがあるよ。そこの上はどう?」
「できれば高台が良い。蛇に宇宙船を壊されたくないからな」
「うーん、、、それらしいところは見えないわ」
着陸場所に困っていると、急にペタが小鳥に変身して宇宙船から出て行った。何事かと思ったが、すぐに戻ってきた。どうやら着陸できそうな部分を探してきてくれてたようだ。ファイはペタの案内に従って着陸を済ませると、後ろの部屋に行き、早速作戦会議を始めようと言い出した。
作戦会議中、ペタは宇宙制服から出て小鳥の状態のまま強くどこかに反応を示し続けている。着陸する前よりも明らかに強く反応しているので、多分破片が近くにあるのだろう。
私たちは残りのキャノン数の確認とどこへ向かえば良いのか最終確認をしていく。
「ペタがこんなに反応しているってことはもうすぐそこに破片があるんだろう?ノモ」
「うん」
「でもここまで奥深く入って探すとなると、、アレに注意しないといけないな、、、」
「アレって??」
次回へ続く。。。
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