墜落した船を探しに ②
彼女の家を出てから数時間が経ち、綺麗な草原だった景色は真っ青な不気味な森へと徐々に変化していく。植物が緑ではなく青色なのがさらに底気味悪さを助長している。それに空気が冷たい。高密度の塩分を含んだ海風が、顔にひんやりと触れる。5番はなぜかテンション上がっている感じだ
「よーし!そろそろリフレクトクローが潜む青の樹海だな。宇宙船の破片がそこに落ちている可能性が高い!」
「それってもう近くにいる感じ?危なくない?」
私は怖がりながら尋ねた。
(ファイ)「心配しなくて大丈夫だよ。ニーはこの星の生き物や環境に対してはかなりの博識だから。でも、あいつおしゃべりだから声が枯れたり、頭痛がしたりして何かと活動しづらくなるから、要所だけ伝えてもらうよ、、、」
「あぁ〜..はい、そうしてください、、、」(さっきのは確かにきつい)
ファイはポケットからかなり古い型の小型端末を取り出して操作している。これ、、確か200年前に流行ったやつ、、、使っている人いるんだ、、、ファイはアンティークな小型端末で地図を開き、二本指で何やら操作している。
(ファイ)「目的地に印を付けたからナビしてもらおう。よし!行こうか!印をつけたところはさっき遠くから見たら樹海に不自然な穴が空いてたから、そこが目的地だな!もうすぐ夜になるし少し進んで、そのあとは拠点探しをしよう。」
「樹海で拠点を探すなら目印になりそうな木とか?」
「いやこの樹海は木が危険なんだ。自然でできた罠の中にいるだと思った方がいい。」
私たちは警戒しながら樹海の先を進んだ。
「木が危ないってどういうこと?罠って?」
「『ミラージュリーフ』と呼んでいる植物があるんだけれど、見た目は普通の木でも近づいたら一瞬その太い幹に擬態した口で飲み込まれる。」
「何それ、怖すぎる、、、」
「他にも、青い花びらの花には近づいたらダメだ。それが出す花粉は微細な鉱石の結晶で構成されているから吸い込むと肺がズタズタになる。」
「わぁ〜、、、」
進むほどに木々は密になり大きくなっていく。日が落ち始め、木々に遮られていた日光が届かなくなってきた。そろそろ進むのはやめて今日のキャンプ地を決めないかと提案しようとしたその時、突然、何か大きな白い光が動くのが目の前に見えた。
「ぁ、、、もしかして、、、あれって、、、?」
(ファイ)「あぁ、、、、リフレクトクローだ、、、静かに、、、」
ファイは低い声で警告した。
リフレクトクローはその名の通り、白いその身体で光を反射している。ISS-AI(宇宙国際ステーション-宇宙生物研究所)の文献だと、日中は透明になり、日光を吸収するため寝ていて、夜になると吸収した光を身体から発光させて寄ってきた獲物を狩ると書いてあった。"非常に気性が荒い"とも。
ノモとファイはじっと動かず、その場に伏せ息を潜めた。リフレクトクローは私たちに気づいているのか、その場でうろうろと動き回り始めた。まずい、、、とりあえずじっとして姿勢を低くして、、、石頭の野郎の時みたいに背後を取られたわけでは無いので、まだ姿が見えた位置にいるこいつの方がマシかも。
幸いリフレクトクローは私たちに気づかず、暗闇の樹海へ消えていった。
「危なかった...」私は胸に手をあて安堵のため息をついた。
少女の方を見ると体が小刻みに震えている。なんだコイツも怖かったんじゃないか、、、強がっているふりをしているのバレバレ。
(スリー)「なぁぁんでぇ戦わんのじゃぁぁ〜〜〜〜〜〜〜!!!!!」
「!?!?」
ファイの緑眼だったのがアホの赤眼へと変色していく。
怖くて震えてたんじゃなかったのかよ、、、
「俺は戦いたかったんだよあいつと!!毎回っ!毎回っ!!ヒソヒソと隠れたり、さっきなんか、交渉なんてしやがって!!、俺も役に立ちたいんだ!!」
(何言ってんだよ、、、)
私が人生三度目の命の危険だったけど、、突如叫び出したアホにとっては日常なのだろう、、、このアホの理解不能な言動は脳から発せられた危険信号を抑えるのに役に立った。
(ワン)「怪我したり四肢が欠損したりすると、治療する時すっごく痛いから絶対ダメ!!!」
「無闇矢鱈と戦おうとしないで!治す時のこっちの身にもなってよ!本当に痛いんだから!!」
アホの突拍子の無い言動に毎回振り回されているのか、出番だと言わんばかりにすかさずワンが注意しはじめた。
自分一人で喧嘩しているようにしか見えない。
まあ、、ワンの言う通りだ。宇宙探索家見習いの筆記試験でも問われる当たり前なこと。
ー、無闇な殺生はしない。
ー、生死を問う時以外は戦わない。
ー、生きて帰れ。
この3つだけは死なないためにも死んでも守れと国語力の無い元宇宙探索家だったコーチが言ってた。私も痛いのは嫌だし、戦うのはものすごく体力を使うからその後頭が回らなくなる。探索家は極力戦わないと言うのがセオリーなんだよ。アホ。
ワンのお叱りが一通り落ち着いたらファイに変わった。
「そうだぞ〜!人の身にも慣れって、、、子供じゃあるまいし我儘でいちいち大ケガされたら困る。戦闘は極力持重しろ!本当の危機になった時は頼りにしてるから。」
(スリー)「わ〜ったよ」
(ファイ)「よ〜〜し!今日はここをキャンプ地にしよう。リフレクトクローが活動し始めたし。」
「ええぇ〜、、、アレがいたのにここでキャンプして大丈夫なの?近くに棲家とか無い、、、??」
「スリーがあんなに大きな声で叫んだのに気づかれてないってことは遠くに行ったんだろう、、、それにここの生き物たちが嫌がる物も持ってきたし、、、」
ファイはそんなに気にしてなさそうだった。
「ピンが近くなってきたな。もう少し奥か?あと三日もあれば着きそうだな、、、」
「いや、話聞いてた?リフレクトクローがあんなにそばにいたのにここでキャンプして大丈夫なの、、、?」
「ああ、大丈夫だよ!ここの生物は"日の光"が苦手なんだ。だからこの人工太陽電池でつけた太陽電球の光には寄ってこない。」
「う〜ん、、、そーなん?」(そういう問題じゃ無い気もするけど)
「それよりお腹空いただろ?フォーに何か作ってもらおう。」
フォーに変わり、少女は袖をまくりながらテキパキと動きはじめた。
「よし!お姉さんに任せて!!さーてと。具材は何を持ってきたのかしら。」
「根菜が少しと馬鈴薯と干し肉か〜〜、、、う〜ん、、、シチューね」
「ノモちゃん!近くに"緑色"の茎で黒い花びらの"粉ショウ草"をとって来てくれない?そこら辺に咲いてると思うから!青い茎の青い花びらはダメよ?死んじゃうからね」
「とってきます、、、」
暗いし、死ぬ花と同じ形で色だけ違う花を探してこいって、、、太陽電池の懐中電灯でよく照らして見ないとな。死にたくないよ?こんなところで死因-花粉って。
その辺に生えてるらしいけど、、、暗くなりすぎてさらに不気味な樹海で中腰でじわじわと歩きはじめた。
震える手で握り締めた懐中電灯で辺りを照らしていると、黒い花弁の花ではなく、銀色に光る金属っぽいのがチラッと見えた。まさかと思って近づいて見ると1m2くらいの金属破片が落ちていた。
その金属の破片に消えかかっていたが薄っすらと大手宇宙船開発会社[SORANI]というメーカー名が見えていた。
「これって、、、?」
私はくるりと一周それの周りを照らしながら眺めた。
少し触れてみると見た目以上に軽いのか少しの力で傾いたので倒れないように両手で深く刺し直した。
「これに乗ってきたのか、、、??」
私が乗ってきたっぽい宇宙船の破片をじっと眺めている時に、ファイが興奮気味に鼻息を荒くして背後に近づいて来ていた。
そのキモい変態姿に私が気づく3秒前。
第一幕までは考えているので、できるだけ毎日投稿していけると思います。




