墜落した船を探しに ①
赤い少女は複数の人格があることが判明し、その中の3番目の人格は好戦的でノモに突っかかる。
しかし、5番目の人格によって止められる。
星の案内を兼ねてノモが乗ってきたであろう宇宙船を捜索しに行くことに。
いよいよ冒険チックな雰囲気へ!!!
「さてと、、振り返ってごらん。さっき我々がいた場所があそこだ、ノモ。」
緑色の眼をした5番が手を広げて見せる。
少し急な草原の坂を登り始めて1時間くらいようやく上に辿り着いた。はあ。疲れた。こいつ体力バケモノかよ。息切れひとつしてない。まじか。
私は息切れしてない彼女を膝に手をつきながら横目で見る。すっと腰を曲げた状態で前を見るとそこには実に綺麗な景色が広がっていた。
大きなカルデラのようなクレーター?とそれを囲うように岩山と草原が広がっている。雨水が水源らしく、貯水池がいくつか見えた。天敵らしき生き物も入りにくそうだし、確かに住むならうってつけのところだ。しかし、何か違和感がある。草が少し青すぎる。水も何か青々としている。文字通り青いのだ。比喩ではなく。
「この星、何でも青いんだな。」
「まあ、それが名前の由来『アオイ星』なんだからな。」
そう言って笑った後、急に黙る。異常な緊迫感を醸し出して。彼女の眼の色が赤に変わっていた。3番がいつになく真剣な表情で何かを真剣に見つめている。
「あいつだ。」
「えぇ何〜・・・?」
疲れて声がつい大きくなる。
「馬鹿野郎!声がでけーよ。」
「クリスタルマインドだ。頭が青か白の鉱石でできている人型の生物。この星で一番ヤバいやつ。」
「何がヤバいんだよ・・」
私も目を凝らして見てみたが、遠すぎてぼんやりとちっこく人がいるなぐらいしか見えない。念の為小声で会話をしているが、私たちがいるクレーターの向こう側にいるのに聞こえるはずないだろう。
「こっちをじっと見ているな。」
「えっ??」
「襲ってくる気は無さそうだが、ここで現れたのは初めてだ。変だな。お前のことを見に来たって感じか?」
「あんな石頭に目をつけられるようなことはしてないけど・・・」
コリンッ
薄いグラスを横にした時みたいな甲高い音と共に後ろに気配を感じる。唐突の窮地に私の意識だけが追いつき、身体は意識においていかれ、反応できず怖くて動けない。息切れしていた呼吸を整えるので必死だ。昇段試験を受けた時よりはるかに緊迫感と生殺与奪を握られている感覚になる。意識を呼吸に集中すればするほど荒くなっていく。どうぢよう。私は半泣きになっていた。
「泣くなよ。マジで。」
さっきまで威勢が良かった3番の横顔がかっこよく見える。
(rueo' dg ynooo)
何か頭に聞こえる。わかるようでわからない。理解するための思考回路をうまく組めない。今、私はパニックだ。
「i wgemv mior heao ispi Iohtftaic' rokic.ln ss nphsag」
3番が会話している?知性のかけらも無かった奴だと思ってたのに。何を話しているのかは理解できない。とりあえず呼吸は整ってきた。冷静さを保てそう。うん。
気がつくと石頭は消えていた。
なんだったんだ。でも間違いなく人間なんか簡単に殺すような殺気だった雰囲気だった。
「ノモ急ぐぞ。次に向かう場所は、この岩山の向こうの樹海だ。リフレクトクローの棲家があるらしいから気をつけて行くぞ。」
「いや、ちょっと待って。あいつはどうなったん?助かったみたいやけど。」
「クリスタルマインドは(お前はダメだ)って言ってたのだ。多分ノモのことだと思うのだ。わしが(遭難者だから宇宙船を探してあげている)と伝えたら消えたのだ。」
「私はダメってどういうこと?違う星から来たから?」
「いや、前に違う星から来たやつにはこんなことは無かったのだ。面白い!面白いのだ!いや〜〜、、宇宙船なんか探さず今から家で研究したいのだ!!」
「ダメだ」
眼の色が青色から緑色に戻った。
「2番が研究すると頭がめっちゃ疲れて眠くなる。活動できなくなるから、今はやめろ。それにあいつらについては全く生態が分かってない。調べても無駄だ。」
また眼の色が青になった。
「彼らの生態が全くわからないからわしが今回の件を研究して少しでも情報を増やすんじゃないか!分からないから仮説を立てて検証する。それが研究者の仕事なのだ!!」
「いや、ダメだ。後にしてくれ。今は次の場所へ早く向かうべきだ。暗くなる前に。」
「おいおい。一人で別々の人格と喋るのはやめてくれ。こっちが混乱する。」
こいつの人格ってマジめんどくせー。側から見たら独り言を永遠と言っているような奴とあるかも分からない不時着した船を探しに行くなんて。はあ。早く慣れとかないと頭痛がひどくなりそうだ。
「次はどこに行くんだっけ?」
「次は"青の樹海"だ。この星で唯一植物が混成している場所。海に探しに行くのには準備が必要だから、先に星の1割しかない陸を終わらせておこうと思ってね。」
「それに、もし樹海に墜落したなら、何かしら樹海に影響があるはずだからそれを探して目印にすれば森で迷うことは無いしね。さっき確認した時にちらっと木が何本か不自然に倒れてる所があったから、そこへとりあえず向かおうと思う。」
おお。5番がリーダーってなんとなくわかる気がする。
「了解」
「あとその樹海には"リフレクトクロー"がいるから気をつけてね。」
「リフレクトクローって?」
「全身白い鉱石でできたホワイトタイガーのような生物だ。非常に気性が荒くて襲われるとひとたまりも無い。日中は体を透明にして寝ているんだけど、夜は白く輝いて光に集まってきた獲物を狩るんだ。樹海では一番の支配者だよ。」
「なんでまた、そんな奴が。」
「だから明るいうちに移動したいんだよ。」
なんかト⚪︎コみたいな世界だな。次々と強い奴が出てくる的な。食に興味は無いけど。にしても出てくる順番おかしいだろ。一番強い石頭が最初に出てきてどうすんだよ。そういうのは最後に出てこいよ。全く。
まあしょうがない。帰るためにとりあえずついて行こう。
それにしても水だらけな星だな。綺麗だけど。
「ところで、この星って海ばかりね。どうなっているの?」
「この星には海が2種類ある。6割が死海のように塩分濃度が高い。だから潜るのに比重の重い金属でできた潜水艦が必要だ。残りの4割は淡水だ。表層が淡水で深層が死海だ。」
「へえ、面白い地形だな。」
「そうだね。あんまりこの種の話題を出すとまた2番が出しゃばって時間を浪費するからそろそろ樹海に向かおうか。」
「はい。」
行くのがめんどくさいから時間稼ぎしようと思ってたのに。ちっ。
ふたりは草原を横切り、クレーターの外部を降りていく。青の樹海まではもう少し草原が続く。本当に景色は綺麗なところだな。




