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宇宙冒険家ノモ  作者: 坂山海
早熟で未熟者
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服は!?


少女は立ち上がり、両手を自慢げに広げ、自己紹介を始めた。


(???)「私はジワン」

(ジワン)「この星の草木はみ〜んな!青色なの!だから私は()()()()って呼んでる」

(ジワン)「あなたは青の樹海に墜落してたんだよ?生きてんのが不思議なくらいな大怪我だったから最初は死んでると思ってたんだけど」

(ジワン)「私が直したの!」

「あ、あり、がとう」

(ジワン)「私はね。ちょっとだけ、"治癒能力"が使えるから!」

「ちゆ・・・?治療じゃ、なくて・・・?」

(ジワン)「あ、えーっと、そう!治療が上手いのよ!()()()だからね!」

(ジワン)「えー、、っと。そういえば、まだ名前知らなかった。なんて呼べばいい?」

「あ、えっと。ノモ。ノモでいいよ」 

(ジワン)「・・・!!!」



名前を言った途端、ジワンが目を大きく見開き、私の顔を間近でマジマジと見始めた。

何か変なものを見るような感じで見つめてくる大きな瞳が怖くなり、思わず視線をずらす。



「ん・・・・?」

(ジワン)「いや、なんでも!それより、お腹空いてない??ご飯食べる?それとも先にお風呂入りたいかな!?」

「あ、ありがと」



どこか慌てている様子のジワン。それを誤魔化すかのように畳み掛けて話しかけてくる内容はチグハグでどこか挙動不審だ。



(変な人・・・)



ジワンの外見は12歳くらいの少女って感じだが、態度やジェスチャー、口調はアラサーの女性っぽい。



(この感じ、ちょっと苦手・・・)



私はベッドから立ち上がり、部屋の中をじっくり見回す。いくつかある扉を近いところから順番に開けてみる。



(ここは、トイレか)



便器の真上に吊り下がっているアンティークな照明からは淡い赤紫色を発している。

他の扉も開けてルームツアーをしてみる。


パントリー、武器庫、ガレージに地下室へ階段。


探しても探しても別に誰もいなかった。



(誰か居ると思ったんだけど・・・)



(ジワン)「あの〜・・・」

「は、はい・・?」

(ジワン)「服、貸そうか・・・?」

「え?」

「うわぁあ!!」

「あれ、、なんで裸、、?てか、、私の着ていた宇宙制服は?」

(ジワン)「あ〜、あれね・・・?」

「ど、ど、どこにやった????」

(ジワン)「ノモが居た場所に置きっぱだった気が・・・。治療する時邪魔だったから脱がしてそのままかも・・・。血とか膿とか泥とかすごくて汚れてたし・・・」

「・・・」

「取りに行ってくる」

(ジワン)「え・・・?」



私は彼女のクローゼットを次々開け、適当に動きやすそうな服を着てから急いで野宿の準備を始めた。玄関の壁にかかっていたバックパックに必要最低限のものを詰め込み、玄関のドアノブに手をかけた。



(もしかしたら制服の中に・・・まだ()()かも・・・)




「助けてくれてありがとう。ジワン。さようなら」

(ジワン)「えっ???あ、ちょっ、、ちょっと、、あーー!!待って!!!!私の服!!勝手に持ってかないでぇ!!」

「借すって言ったじゃん」

(ジワン)「そうだけどっ!!!」

「じゃ」

(ジワン)「いやいや、待っって!!!」

「その宇宙服、どこで脱がしたか知らないでしょ!!??道案内するから、、、 ハァー、、、ハァー、、、 ちょっと待ってって!!」

(ジワン)「それに!!武器も利腕も無い人間なんて宇宙生物の餌になるだけだって!!!」



ジワンは必死に私の腰に巻き付いて引き留めてくる。こっちとしては、一刻も早く取りにいかなければならないかも知れないのだ。



でも、確かに、私はどこで助けられたのか知らない。"青の樹海"という情報だけで闇雲に探し回るのはまずい。また宇宙生物に襲われたらひとたまりも無い。


私は玄関扉のドアノブから手を離し、ジワンの方へ顔を向けた。

琥珀色の大きな瞳とゆるふわ団子のツインテールがフリフリと揺れている。



「なら、早く支度して。その、早く服、取りにいきたいから・・・」



ジワンが私の目を見てホッと一息付く。その瞬間、ジワンの全体重が私の方に預けられ、ふらついた身体が扉に向かって倒れ込んだ。押し戸の扉が古めかしい音を立てながら開き、私とジワンはそのまま地面に倒れ込んだ。


仰向けになった私は目の前に広がる景色に意識を奪われた。


青紫色のグラデーションがかかった宇宙には宇宙大航海時代に入ってから現在まで、誰一人として本物を見たことが無いと言われている伝説上の生物が居た。



()()()()になってもと出逢えないとまで言われているあの()()()()()()()()がしかも群れで宇宙を悠々と泳いでいるのだ。



実物はあんなにも大きくて、はっきりと星屑模様が入っているとは知らなかった。何度も宇宙生物園を通って観に行ったあのスペースホエールとは全く別の生物だ。

成層圏を飛んでいてもその大きさは一目で分かる。



倒れたまま愕然としている私の顔に上から覆い被さるように覗き込んで来たジワンの汗が顎先から垂れて、私の口に入った。



「だ、大丈夫そ?」



心配しているジワンの四つん這いの籠から自力で這い出てから、ゆっくりと立ち上がり尻をついて座っているジワンを見下ろす。


私は宇宙を指差し、鼻息を荒くし、地団駄を踏みながら何度もスペースホエールとジワンを視線で往復する。



「み、み、み、みた!!??なん!!?なんで!?こんなとこに・・・!!!す、す、スペースホエールが!!!!し、しかも、、あんなに!!!????」



私は膝をついて、ジワンの左肩をグッと掴み、激しく前後に揺らしながら同じ質問を繰り返す。

グワングワンなっているジワンは興奮している私に若干顔を引きつらせつつ、『良いこと思いついた』と言わんばかりのニヤケ顔で話し始めた。



(???)「アレのことを詳しく知りたいなら、3分待って欲しいのだ!!一緒に服探しの旅に着いて行くための準備をしてくるのだ!!」

(???)「あと、道中、君のことももっと詳しく教えてくれるならアレについて教えてあげてもいいのだ!!」



ジワン?は胸を突き出し、両手を腰に当て、後ろへ倒れ込む勢いでのけぞりながら提案してきた。



「いいや・・・・」

(???)「うん??」

「40秒で支度しな!!!」




スペースホエールを見てテンションMAX!!!!になっていた私はそのテンションに任せて、小さい頃から大好きなあのアニメ映画のあのセリフを叫んでいた。



ジワン?は本当に40秒で支度してきた。勢い余って玄関扉を蹴飛ばして、飛び出してきた。




(???)「出発なのだ〜〜!!!」

「あ、ちょ!!!待ってよ!!!!」



ぶっ壊れた玄関扉をそのままにして、走り去っていったジワン?を追いかけ、そのまま私たちは宇宙制服を取りに行く旅に出た。



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