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宇宙冒険家ノモ  作者: 坂山海
早熟で未熟者
20/101

研修最終日② 

ーーー[夕方18時半]ーーー




三階共有ロビーでみんなソファに集まって話していた。



(リーダー)「ノモ〜お疲れ〜!!今回の研修はどうだった?」

「お疲れ様です!なんか、色々、楽しかったです!!」

(リーダー)「・・・!」

(リーダー)「それは良かった!!!」

(リナ)「そろそろ離陸する」

(リーダー)「りょうかーい!離陸して落ち着いたら、今後の流れを話しておこうか」

「はい!」




『離陸いたします。揺れにご注意ください』



宇宙船がゴリゴリ言いながら飛び立ち始めた。それから一気に宇宙へと発進する。



「うぅっ!!」

(リーダー)「と、トイレ!!トイレ!!!行って!!!!」



私は揺れる船内をよろめきながらトイレへ向かい、またもやキラキラを出した。相変わらず、この独特な浮遊感と重力圧には慣れない。私は離陸してしばらく、トイレにひとしきり出し終わるまでこもっていた。



(リーダー)「大丈夫か〜??」

「あ"ぁ"い"」

(リーダー)「まだ船酔いは治らなそうね・・・」



離陸して、しばらくし、揺れが治ると吐き気も無くなった。

トイレから出ると、ほとんどのメンバーがロビーに揃っていた。



(リーダー)「よーし!!みんな来たか〜!!!?」

(ダニエル)「キイスが報告しに行ってるが、それ以外はいるぜ」

(リーダー)「まあ、いいか」

(リーダー)「よし!!いきなりだが、本題に入る。ノモの正式入隊に異論があるものはいるか?」



(ゴクリ)



(ダニエル)「意義なし」

(リナ)「ない」

(モーラ)「ありません」

「よし!!では正式入隊をここで決定する!!歓迎するよ!ノモ!!」

「あ、ありがとうございます!」



私は、チームのみんなに深々と礼を何度もした。



(ようやくこれで・・・!)



やっと夢へのスタートラインに立てたと感じる。ネカフェで眠れない日々を過ごしていたのがずっと昔のことみたいだ。




歓迎ムードで盛り上がっている中、突然リーダーが大声を出して端末を取り出した。



(リーダー)「忘れるとこだった!!」

「・・・?」

(リーダー)「研修中の給与!!渡しとくね!」

「え、給与もらえるんですか??」

(リーダー)「もちろん!働いてくれた分は渡すよ〜」

(リーダー)「よし、今送金したから確認してみて」




チーム共通の端末からピコンという音と一緒に通知に額が表示された。

送られてきた額に私は一瞬目を疑う。今まで見たことない額だ。


[H]と書かれたポイントが19万送金されていた。



「ジュ、19万!?こんなに!?三日間だけですよね??」

(リーダー)「ノモはよく働いてくれたし、今後に期待という意味も込めてね??」

「あ、あ、ありがとうございます!!」

(リーダー)「いや、いや、礼はいいよ!ノモがちゃんと働いて稼いんだんだから」

「はい!」

「で、でも・・・」

(リーダー)「ん?どした?」

「この[H]って何ですか?」

(リーダー)「それはうちのポイントだよ」

「うちの?ってどういう・・・?」

(リーダー)「あ、そっか知らないんだっけ?」

「・・・?」

(リーダー)「宇宙探索家は独自のポイントを作れるんだよ。業績が良かったり、きちんと運搬したり、指定された物資を取ってきたりすると、ポイントの価値が上がるんだ」

「んん・・・?」

(リーダー)「まあ、簡単に言うと独自通貨だね」

「独自通貨・・・」

(リーダー)「国や人類に貢献できた分だけ1ポイントの価値が上がる。初めはほとんど独自通貨に価値が無いチームがほとんどだから、どこでも使える共通通貨の国ポイント[SP

:star point]が付与されるんだけどね」

「はい・・」

(リーダー)「宇宙探索家レベルになると、その独自通貨の価値はそれはもう跳ね上がるよ!!みんな知っているイコール価値が高いし需要があるからね」

「たとえばどんなですか?」

(リーダー)「うーん・・・と」



なんか、難しい話になってきた。



(ダニエル)「そうだな〜。例えるなら、宇宙鉱石だな!」

「うん?」

(ダニエル)「名の知れてないどこぞの宇宙探索家が取ってきた宇宙鉱石なんかよりも、有名な宇宙探索家や冒険家が取ってきた鉱石の方が、全く同じ鉱石でも価値が上がるんだ」

「どうして?」

(ダニエル)「そりゃ、安心するからだ。みんな知ってるやつが売りに出してるもんの方が安心してみんな買ってくれるだろ?」

「それなら、新人は売れ残りやすいってことじゃ無いですか!?」

(ダニエル)「そうならんために、新人探索家チームが取ってきた資源は国が買い取ってくれんのよ!!名の売れたやつは国に卸してもいいし、自分たちの通貨で自分たちの好きな場所で卸しても良いってこった」

「な、なるほど?」

(ダニエル)「まあ、自分らの通貨で回していける連中なんかはごく一部の限られた存在だけだろうけどな?冒険家のユニフレンズとかそーだろうよ」

「ユニフレンズ!私めっちゃ見てます!!」

(ダニエル)「そ。一般人にも認知されるくらいのレベルじゃねーと、そう上手くいかねーけどな」

「・・・ん?」

(ダニエル)「どした?」

「ちょっと聞きづらいんですが、『ハインライン』はどのくらいの価値なんでしょうか・・・?」

(リーダー)「それはね〜!渡した端末で確認できるよ〜!」

(リナ)「うちらは今、信頼度が56%ね」

「56%ってどういうことですか?」

(リーダー)「SPを元に算出されるパーセントってこと。100SPでメロンパン一個って感じだから、156HP[ハインラインポイント]でメロンパン一個、買えるね」

「なるほど・・・」

「なら、19万HPは・・・」

(リナ)「10万6400SPね」

「ほぉ〜〜〜!!!!こんな大金!!見たことないっす!!!」

(ダニエル)「え??国からもらってんだろ?毎月」

「両親が全部管理してたので、毎月5000SPしかお小遣いもらえなくて」

(ダニエル)「マジか!?俺でも、毎月5万は貰ってたぞ・・・」

「ええ!?そんなに??毎月いくらもらってたんですか!!?」

(ダニエル)「え、国民一律25万だけど・・・・?」

「知らんかった・・・・・」

(モーラ)「マジですか・・・」

「・・・」

(リーダー)「ま、まあ!!うちは他より給与多いし、不自由は無いと思うよ!!!」

「た、助かります・・・」




と、とりあえず、給与に関して文句はない。




けど、うちの親めっちゃ自分らのために使ってたのか・・・。






ま、まあ。とりあえず、安くていいから、家、決めたいな・・・。





(リーダー)「お〜い!!ノ〜モ〜??聞いてる?次回のスケジュールを組みたいんだけど、いつから入れそう?」

「はい!え〜っと・・・」

「家借りたり、諸々したいんで、ちょっと間が開くかもです・・・」

(リーダー)「おっけ〜!!家が決まったら連絡してね〜!!どっか目星のとことかあるん?」

「いや、それもまだ何も・・・」

(リナ)「住む星とかも変えられるけど、今のとこでいいの?」

「そ、そうなんですよね・・・。本音を言うと、実家と違う星の方が嬉しいですけど・・・」

(リーダー)「引越し手当つけられるけど・・・?」

「ほんとですか!!!!」

(リーダー)「うーん・・・。その、うちもそんな余裕があるわけじゃ無いから、メンバーから少しずつ徴収する感じなんだけどね・・・」

「そ、それはちょっと気が引けますね・・・」

(リーダー)「そこのゴリラは筋肉もお金も貯めるの好きだからねだってみたら??」

(ダニエル)「ちょ!!俺から取るんすか!?なんのために倹約してるかわからんじゃ無いすか・・・」

(リーダー)「こういう時のための倹約じゃぁ〜ないか!!新人を可愛がるのは先輩のし・ご・と・だぞ!!」

(ダニエル)「ちょっとなら出しますけど、そこはリーダーがメインで出すところでしょ!!?」

(リーダー)「それは・・・そうなんだけど〜〜」

(リナ)「また高い酒でも買って所持金がないとかでしょ」

(リーダー)「せいっかいっ!!」

(リナ)「はぁ〜」

(リナ)「私が出すよ・・・」

「で、でも・・・」

(リナ)「あげるとは言ってない」

「え?」

(リナ)「半分は働いて返して」

「・・・もちろんです」

(リナ)「今、貰えると思ってたでしょ?」

「いえ、!!」

(リナ)「半分でいいわよ。それに利子もつけないし」

「た、助かります・・・」

(リーダー)「良かったねぇ〜〜ノモぉ!!優ぁしい先輩がいて!!!うんうん!!」

(リナ)「本当はあなたが出すべきところですけどね」

(リーダー)「あー!!!あーー!!!あーーーー!!!!何も聞こえな〜〜〜い〜〜〜〜!!!!」

(リナ)「ッチ」



家探しはなんとかなりそうだ。安堵したらトイレに行きたくなった。

リーダーがダニエルの端末を奪おうとしたり、リナさんがリーダーのことを責めたりと、ゴチャつき始めたので、小声で声をかけてトイレへと向かった。



「と、トイレ行ってきます〜」



モーラはすでに研究室へと戻っていた。入り口近くにあるトイレへ向かっている途中、キイスさんとすれ違い、揉めている3人の方へ向かっていった。どこか焦りながら入ってきたキイスさんの不気味な笑みが脳にこびりついた。






その時だった・・・





トイレに入った瞬間、宇宙船が大きく揺れ始め、立っていられなくなった。何か、嫌な予感がし、慌ててトイレから出ると、リーダーが聞いたことないくらいの大声で指示を出していた。



(リーダー)「ペタ!!操縦をマニュアルに切り替えろ!!!!他は安全ベルトを着用し、その場で待機!!!!」



今まで見たことないほどの気迫と声量で指示を出している。どうやら緊急事態らしい。

安全ベルトの操作方法がわからず、あたふたしている私に気づいたリーダーがこちらへ駆け寄ってきた。



(リーダー)「ノモ!!!急いで安全ベルトを締めろ!!!早く!!!!!」

「え・・・あの・・・・」




上手くできない。急な出来事に、怖くて手が震えて、視界が涙でぼやけていく。揺らぐ視界でますます見にくい。



なんで・・・????




早く・・・・





早くしないと・・・・!!!!






突如、視界が閃光でやられた。爆発の眩い光線を直視してしまった。




目が光にやられ、全く何も見えなくなった・・・・




妙な浮遊感。着陸する際に無重力感ではない。

不均一で歪な重力空間の虚空へ投げ出された感じだ。



目の網膜が焼けてしまったのか、目の奥と鼓膜、前頭葉付近が痛くて痛くて狂いそうだ。





暗闇で何が起きたか分からない・・・





見えないが、ものすごい勢いで宇宙船から遠ざかっていくのを感じる。




おそらく爆発した宇宙船の破片が右腕に勢いよくぶつかってきた。



その衝撃で右肩の少し先が千切れ、鮮血を漏らしながら弾け飛んでいった。





だんだん意識が遠のいていく・・・・






ああ・・・・・













続く。


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