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宇宙冒険家ノモ  作者: 坂山海
早熟で未熟者
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研修最終日

昨日はリーダーの過去を聞いていたらいつの間にか寝てしまっていた。

目が覚めると、ベットで寝ていた。


最終日(本当は昨日で最後だが、初日何もできなかったので延長してくれた)の今日も事務仕事を淡々とこなすノモであった。

ーーー[研修4日目(最終日)]ーーー




今日は最後の研修だ。


昨日、あのまま共有ロビーで寝てしまった私を誰かが部屋のベットまで運んでくれたらしい。おかげで今朝、腰を痛めずに済んだ。前にネカフェで寝泊まりしていた時は部屋は狭いし、床は硬いし、冷えるし。腰なんか毎回バキバキだった。でもベットの心地良さを知ってしまった私は、もう二度とあんなところでの寝泊まりはできないだろう。


部屋にある狭い洗面台で準備を終わらせ、共有ロビーへと向かう。

キッチンで水を沸かして飲み慣れない白湯に口をつけながら、研修期間中のこれまでを振り返っていた。



実は今日で研修四日目なのだが、本当は三日で終わる予定だったらしい。私が初日、吐いて終わったのがあまりにも可哀想で延長したようだ。



たった三日間の研修で大丈夫なのか?と思い、昨日の晩餐時にリーダーに訊いてみたら、「探索家って教えられること無いよ??」と不思議そうな顔をされた。



どういうことか聞き返すと、続けてリーダーは「宇宙は研修や訓練をいくら積んでも予想外のことしか起こらないから」と言っていた。



(確かに)



宇宙という未知の空間でいつ、何が起こるか誰も分からない。隕石が隣で爆発するかもしれないし、知らないウイルスが蔓延してしまうかもしれない。探索家や冒険家はそういう危険を承知の上で、常に最悪な事態を考えながら迅速に対応していかなければならない。



そんな環境下ほど、マニュアルがある方が危険なのだ。柔軟な対応ができないトップダウンなチームからすぐに死んでしまう。



てことで、リーダーたちからすると今回の研修はオリエンテーションのような感覚らしい。形式上行うが、実際はほぼ入隊確定な新人を迎え入れるための場なんだそう。めちゃくちゃ気張ってたけど、研修を受けられる新人は入隊確定みたいらしい。



ぼーっと白湯を飲んでいると、誰か入ってきた。




(リーダー)「ノモ。おはよ〜。早いね〜。私は昨日、夜遅くまでダニエルとモーラに付き合わされて寝不足だよ〜」

「おはようございます!なんか目が冴えちゃって・・・」

(リーダー)「あれ・・・?ノモも白湯飲むん?まだ若いんだからコーラとか飲めば良いのに・・・」

「えっ、いや・・・。朝からコーラは無理ですよ・・・。白湯はその・・・」

(リナ)「あれ?ポットは?」

「あ、使っちゃいました・・・。食洗機の中にあります」

(リナ)「いや、壊れるから」

「あはは・・・」



リナさんがポットで水を沸かしながら、何か適当に朝食を作り始めた。包丁のリズミカルな音とフライパンからバターと焼けたベーコンの香ばしい匂いが漂い始める。



(リーダー)「ノモはまだ健康とか気遣う年齢じゃ無いでしょ?」

「健康は若いうちから気をつけとかないと怖いですよ〜?」

(リーダー)「ま、ま〜ね〜・・・?私は最近気をつけ始めたよ〜。あーあー。若返れる宇宙資源とか無いかな〜」

(リナ)「いや、無いでしょ・・・」

(リナ)「てか研修中、白湯とか飲んでたっけ?」

「え!?あの、、いや〜〜、、、、」

(リーダー)「リナ??ノモは大人ぶりたい年頃なんだよ・・・」

(リナ)「あ〜」

「ち、違います!!!」(ば、バレてる・・・?)



ピコン!



タイミングよく、配給されたチーム用の端末から通知音が鳴った。。リーダーが毎朝8時に自動送信するよう、設定している今日のタスク通知だ。



(リーダー)「大人ってそんな良いもんじゃ無いよ??」

「え、そうですか・・・?」

「私はお二人が理想な大人ですけど・・・」

(リナ)「あ、そ」

(リーダー)「わ〜!それは嬉しいですな〜〜!!」

「ホントですって!!」

(リナ)「わかったから」

(リーダー)「あれ!?リナちゃん照れてる〜??」

(リナ)「はい。ノモ。ベーコンエッグサンドイッチ」

「い、いただきます!」

(リーダー)「私の分は〜???」

(リナ)「ありません」

(リーダー)「え〜〜〜」

「わ、私研究室!行ってきます〜!!」

(リーダー)「行ってら〜〜〜」



大人ぶった訳ではない。リナさんみたいになりたいから始めただけだし。飲めない白湯を半分ほど残したまま、ぎこちなくモーラの研究室へと向かった。





筋肉痛がまだ少し残っていて変に力んでしまい、研究室の扉を勢いよく開けた。



ガチャ!!!!



(モーラ)「あ」



ゴッ!!!カランカロン!!ビシャー




扉の内側に何か当たった。恐る恐るゆっくりと扉を開け、覗くと、扉の裏には落ちたコーヒーカップを眺めて眉を顰めたモーラが立っていた。



(モーラ)「…」

「すみません」

「…」

(モーラ)「いや、」



(うわ〜〜気まず!!!)



よし。コーヒー淹れなおしてあげよう。



「すぐ淹れなおしてきます」

(モーラ)「いやいい、自分でする」

「はい・・・」



コーヒーメーカーで余分にドリップしていたコーヒーをマグカップに注ぐ様子をなぜかマジマジと目で追ってしまう。朝は弱いタイプなのか、それともコーヒーをこぼして怒っているのか分からない。



(モーラ)「ん?」




私は慌てて目線を外し、昨日の作業の続きを始める。机にある機械の隙間から様子を伺ってみるが、なんともなさそうだ。こちらに気が付いたのかわざとらしく咳払いをされた。



「やべ」

(モーラ)「・・・」



と、とりあえず目の前の作業に没頭しよう。そうしよう。



しばらくして、私は一通りファイリング作業が終わった。少し暇になったので、昨日リナさんが分析/調査していた内容をペタに読み込ませて私でも分かるようにグラフや図を作成したものを読んでいた。


作成された内容を読んでいると、質量のところに元データの内容と違う点が見つかった。


(バグか?)


いや、機械生命体の知能はバッテリー駆動移行状態でも人より何倍も賢い。



(リナさんが入力し間違えたのかな?)



バグかもしれないが、一応モーラに聞いてみた。



「すみません。今、ちょっといいですか?」

(モーラ)「なんだ」

「その、作業が一通り終わったので、昨日リナさんが作ったデータをペタに私でもわかるように変換して、読んでたんですけど、、ここの内容、リナさんが入力したことと少し違いませんか?」

(モーラ)「おい、人の間違いを指摘しに来る前に、自分の作業が終わったなら報告しろ」

「すみません」

(モーラ)「で、どれだ」



モーラにサニークリスタルの質量調査についてのリナさんが作った元データとペタが編集したデータをそれぞれ送り、確認してもらった。



「ここです。グラフの数値が合ってないんですよね。ペタが作った方が少し高くて、リナさんの数値が少し低いんです」

(モーラ)「うーん」

(モーラ)「リナは優秀だが、ミスをするときくらいあるだろう」

「リナさんがこんな簡単なミスしますか?ペタのバグとかでは?」

(モーラ)「それはない。機械生命体は個であり全となるシステムを持っている。基本的な情報は常にアップグレードされるし、機密情報の取り扱いをする際には全個体と繋ぎ、開示して良い情報かどうかまで判断をしてくれる優れ物だぞ」

「なら、リナさんが間違ってます・・・?」

(モーラ)「でも、言われてみると、確かにリナがこんなミスをするのは変だな。確認してみる」



モーラは部屋の奥へいき、リナさんと通話をし始めた。数分ほど経ち、部屋の奥の扉が開き、こちらへ出てきた。




(モーラ)「リナが今から確認するらしい。何者かが、改ざんしたかも知れないと言われた」

「え・・?なんのために?」

(モーラ)「分からん。とりあえず、私はリーダーに報告してくる。詳しく調査する必要があるかもしれない。ノモはそのまま清掃をしに行ってくれ」

「え、はい・・・」



モーラは慌ただしくリーダーのいる司令室へと向かった。

私は言われた通り、次の仕事の船内清掃をしに行った。この詳細はおそらく新人の私には伝えてくれないだろうな。



(私が見つけた手柄だったのに・・・)



少しモヤモヤしながら昼食を適当に済ませ、ダニエルがいる二階へと向かった。






ーーー[午後2時過ぎ]ーーー



二階へ向かうと既にダニエルが清掃し始めていた。


「す、すみません〜遅れました〜」

(ダニエル)「いや、俺が先に始めてただけよ!!」

「そ、そうすか」

(ダニエル)「ほれ」



ダニエルは持っていた箒と塵取りを私に渡してきた。



(本物、初めて見た・・・)



(ダニエル)「ん?使い方知らんのか?」

「いや、知ってはいます。一応。初めて触りました」

(ダニエル)「まあ、たけーしな。それ」

「え、いくらですか?」

(ダニエル)「セットで13万」

「高っ!!!!!!!!!!!」

(ダニエル)「そういうもんはもう伝統工芸品しかね〜からな〜」

(ダニエル)「侘び寂びってやつかな〜」

「・・・」



(13万もするものに侘び寂びって合ってんのか・・・?)



私はそんな高価なもので掃除したくなかったので、安価な清掃用ロボットを操作して床の塵やゴミを吸って回収した。5分も立たず終わった。ロボットが隅々まで掃除する様子はなかなか面白く、時間があっという間に過ぎる。



「ダニエル。どうして全自動の清掃ロボットを使わないの?その方が常に綺麗になるじゃん」

(ダニエル)「ああ、そうだな。確かにロボットの方が早いし、綺麗になる」

(ダニエル)「でもな、いつも誰かがやってるなんて思い始めるとだんだん感謝の心っつーものを忘れちまうもんなんだ」

「へえ〜」

(ダニエル)「おい!せっかく良いこと言ってんのに!!」

(ダニエル)「てか、お前、俺のこと呼び捨てになってねーか??タメ口だし」

「ダニエルはダニエルで十分」

(ダニエル)「おい」



私は掃除ロボットをあえて操作しながら船内を清掃して回った。ロボットを操縦するのってなんか、楽しい。船内全ての部屋の隅々をゆっくりと掃除しながら、研修最後の仕事を終えた。





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