研修三日目③
ーーー[宇宙船内三階キッチンロビー]ーーー
(そういえば、この星ってずっと明るいな)
『着陸したこの星の近くに人工恒星があるため、日中を保たれています』
「うお!?」
(リナ)「何?」
「いや、その声が・・・」
(リナ)「ペタじゃない?あいつ滅多に話さないけど」
「ペタ・・・」
『船内は人間の時間感覚が狂わないよう、24時間で自然光と同じように調整されています』
確かに、窓から見た外の景色は夜になっていた。
(リナ)「フードを被りっぱなしにしてるとたまにペタが応答する」
(リーダー)「お腹空いたよね〜?もう少しでできるよーん!」
「は、はい」
私の背後から長身のモーラがぬーっと通り過ぎていった。共有ロビーの椅子へ座って何やら本を読んでいる。
(あの人、足音しないんだよな・・・)
私も共有ロビーの椅子に座り、ぼーっと窓の外を眺めていた。
人工物が何もない原生的な土地はどこか恐ろしい。
私が座ると同時にモーラは飲み物を取りに立ち上がって行った。こういう何気ない行動に私はいちいち気になってしまう。私が座ったから場所を移動したのかなとか。。。
そんな不安を抱いてしまう自分が少し嫌いだ。
モーラのことを横目で追っていると、いつの間にか目の前には「ペタ」が猫の姿で下からこちらを覗いていた。ピョンと私の膝の上に乗ってきて撫でろと言わんばかりに腹を見せてくる。
「かわいい〜!癒されるぅ〜〜〜〜」
(リーダー)「あ、良いな〜!猫ペタがノモと遊んでる〜!」
(リナ)「珍しいですね。猫の状態のペタが人に近づくなんて」
(リーダー)「いいなぁ〜!!私も撫でさせて、」
リーダーが撫でようとすると、飛び出して逃げていった。
残念そうなリーダーの顔が私の膝越しから見える。代わりに私がリーダーの頭を撫でてあげようかと一瞬思ったが、無礼かなと踏みとどまった。
後ろにいたリナさんは今晩のおかずをたくさん載せた大きな皿を両手に持ち、机に置いていた。飲み物を取りに行ったモーラに取り皿を持ってくるよう指示するリナさん。
私の膝下から逃げ出した猫ペタがモーラの足の間をぐるぐると回りながら顔を擦り付けている。モーラは猫が苦手なのか、若干たじろいでいる様子だった。
そこへ、大きな声で「腹へった〜!!」と言いながら入ってきたダニエルとキイスさん。これで全員揃った。
(なんか、家族みたいだな・・・)
(リーダー)「よし!揃ったな〜!昨日一昨日とみんなで集まってご飯食べてなかったからな!」
(ダニエル)「おお〜!!!美味そ〜!!!」
(リナ)「レシピ通りに作っただけ」
(キイス)「腹へった」
(モーラ)「なんか飲むか?」
(リーダー)「コーラ持ってこい!コーラ!!」
(ダニエル)「はぁ!?ジュース!?酒は!?酒ねーのか!?」
(リナ)「探索家は任務中、原則禁酒」
(ダニエル)「今日くらい良いじゃねーか!!?」
(リーダー)「だめ。コーラ飲んどけ。ばか」
(キイス)「帰ったら良い酒飲みに行きませんか?ダニエルさん?」
(ダニエル)「良いな!!」
(リーダー)「はいはい!!とりあえず、乾杯しましょ!」
(リーダー)「コーラみんな持った!?」
(全員)「は〜い」
(リーダー)「では、お疲れスペーサー!!!!」
(全員)「乾杯〜!!」
(リーダー)「ゴラァ!!言えよぉ〜〜!!!」
(リーダー)「ってちょっと!!ダニエル!!あんた取りすぎ!!私の分残しとけよ!!」
(ダニエル)「リーダー!飯は早いもん勝ちっすよ!!」
(リナ)「はい。ノモ」
「あ、ありがとうございます・・」
「皆さん、すごい勢いで食べてますね・・・」
(リナ)「まともな食事は半年ぶりだから」
「え?」
(リーダー)「ちょ!!それ私が狙ってた肉!!?」
(モーラ)「美味しいです」
(リーダー)「ヌーー!!!モーラ!!!貴様!!!」
(ダニエル)「おら、いただき!!!」
(リーダー)「あっ!!ちょっと!!!ダニエル!!今、私の皿から取ったでしょ!!???」
(ダニエル)「飯時に隙を見せる方が悪いんすよ!!」
(リーダー)「クソ!!!この!!」
(ダニエル)「ちょ!!それ俺の魚!!!」
(リナ)「もう少し落ち着いて食え」ゴンッ
(ダニエル/リーダー)「ぃって!!!!!!」
(年上組が年下のリナさんに怒られてる)
激戦の時は過ぎて、空になった大皿と空いたコーラの缶がたくさん机の上に転がっている。みんな仲良く談笑していている時、話題はリーダーの過去話に。
(ダニエル)「そういえばリーダーって銀河警察にいたんっすよね?なんで辞めちゃったんすか?結構エリートコースに居たって」
(リーダー)「ええ?どっから聞いたのその話・・・」
(リナ)「確かに、リーダーの過去の話ってあんまり聞いたことない」
「私も!貨物室で少し聞きましたけど、もっと知りたいです!」
(リーダー)「えぇ・・・?そんな面白い話でもないけど・・・?」
(キイス)「・・・」
(モーラ)「なんか言っちゃいけない事とかあるんですかね。やっぱり」
(ダニエル)「やっぱり・・・?」
(リーダー)「いんや、そうでもないけど・・・」
(リーダー)「うーんとね〜。銀河警察にいた時は・・・・」
長いリーダーの過去話を聞いていたら、お腹一杯になった私は昨日の疲れもあり、睡魔にさらされながら、耳だけ傾けて目を閉じて聞いていた。
いつの間にか寝てしまっていたけど・・・・




