研修三日目
研修初日、疲労困憊で気絶したノモ。
あと二日で挽回しろと言われ、奮起する。が、全身筋肉痛でそれどころでは無かった・・・
幸い、二日目は船内で事務作業をすることになった。
ーー研修二日目ーー
昨日はゲロったり、疲れで気絶したりと散々だった・・・。
今日は船内で事務作業だし、軽作業のみとホッとした。
今日する作業は、昨日取ってきたサニークリスタルの調査補助とサンプルデータの整理。あと、研究室でモーラがまとめた資料をリーダーに検閲してもらう。
一日中船内での作業だが、宇宙船自体は3階建ての一軒家くらいの大きさがある。狭くて息が詰まるということはなさそうだ。
まずは、リナさんのところへ行って事務作業を教えてもらう。
え?なんでモーラだけ呼び捨てなのかって?初対面の女子!相手に臭いとか言われたらそら言うでしょ。(本人の前ではビビって"さん"をつけてしまうけど・・・)
私は、体験入隊中利用して良いと言われた個室から出て、端末で船内地図を開いた。リナさんがいる作業室は2階中央、左下の部屋だ。
卵型のこの宇宙船内部は4階層まである。
一階は入り口、搬入口。二階は居住区と作業室が複数。三階はキッチンやシャワー、ロビーなどがあるくつろげるスペースとなっている。四階は司令室とリーダーの部屋、武器庫がある。
階段も1箇所ではなく複数箇所にあり、侵入者が入ってきても、上へ逃げれば助かりやすいような構造になっているそうだ。
私は自室の対角線上にあるリナさんがいる作業室へ入った。
リナさんがしている、調査/分析官の仕事は、星の地殻や主元素を調べたり、利用価値がありそうな資源や生物を分析を行う。これで、星のおおよその相場が分かる。もっと詳しく調べるのは、研究者のモーラが行うらしい。
(リナ)「おはよ。早速だけど、昨日の取ったやつサンプリングしてきて欲しい」
「おはようございます!了解しました!」
(リナ)「朝から元気ね・・・」
(リナ)「貨物室にあるはずだから、10cmくらいの大きさに砕いてチーム共有のインベントリに取り込ませて。そしたらこっちで読み込むから」
「わかりました!」
(リナ)「そんな時間かからないと思うから」
「うすっ!」などと、一生で一回も言ったことない返事をしながら、重い扉を開いて貨物室へ向かった。
ーーー宇宙船内二階西側階段ーーー
筋肉痛のせいで思うように歩けない。膝はガクガクなるし、歩く振動でふくらはぎや太ももが痛い。腰を丸めながら変な歩き方になりながらゆっくりと貨物室を目指して移動する。途中でキイスさんとすれ違ったが、鼻で笑いながら「大丈夫か〜?」と声をかけてくれた。(ダイジョブジャナイデス)
ーーー宇宙船内四階司令室ーーー
ノモは大丈夫なんだろうか?生涯歴を映像データで確認しているが、学園でも帰り道もずっと一人じゃん。
(アリア)「友達付き合い苦手なのかな〜」
人事採用の最終判断は私がしないといけない。まあ、チームのみんなの意見も聞いてみないとだけど。まだ分かんないよね。しょーじき。
「ん・・?」
ふと、船内カメラのライブ映像を見てみると、二階西側階段の踊り場で身体を奇妙にガクガクさせながら変な歩き方をしている女子を見つけた。
「ノモ?そんなとこで何やって・・・?」
あまりの体の震え具合に我慢できなくなった。
「ブフッ!!ハハハ!!!な〜にぃ〜!?その動きぃ〜!?アハハッ!!!腹痛いっ!!!フフ!!ハハッ!!!ヒ〜!!!苦しッ!!」 ガタンッ!!!
椅子から転げ落ちて笑っていたら、立ち上がる時にデスクの裏側で思いっきり後頭部をぶつけた。
「痛っつーー!!!もー!!!しゃーないな〜!!可愛い新人。助けに行ったげますか〜??」
司令室から飛び出し、階段を駆け降りて行った・・・。
ーーー宇宙船内一階貨物室前ーーー
「つ、着いたぁ〜」
ガクガク震える膝を抑えながら、貨物室の前でため息を吐く。この星の重力は地球換算の重力だと3Gほどだろうか。思うように身体が動かせなくて、ここまでで10分も経ってしまった。
貨物室は搬入口と廊下が繋がっているため、入り口の扉がめちゃくちゃデカい。ぱっと見、高さは5m以上はある。
貨物室に入るとダニエルさんがいた。こちらに気付きバカでかい声で挨拶しながら向かって来る。
私の目の前で止まり、絶賛筋肉痛が継続中の肩を軽く?叩かれた。
(ダニエル)「よう、新人!今日は大丈夫そうか?重いもの持っていくなら俺が代わりに持っていってやるぜ?」
「ギャッ!!」
激痛で変な叫び声をあげてしまった。
「ダ、ダニエルさん・・・あの・・・」
(ダニエル)「うん・・?」
「全身筋肉痛なので・・・肩触らないで、ください・・・めちゃ痛いので・・・」
「ああぁ〜〜」
痛がっている私を見て、ダニエルさんは良いおもちゃを見つけたかのような笑みを浮かべる。謎に両手の人差し指を立て、脇下を突いてこようとする。
「ちょ!何する気ですか・・・!?」
(ダニエル)「・・・ソイ」
「ギャ」
隙をつかれ、左脇腹を突かれた。痛みで悶えていると、もう一撃。逆の右脇腹を突いてくる。
「ギィア!」
(ダニエル)「ダッハッハッハ!!どうだ参ったか!!ソレ!!」
「ヤメ・・・。痛!!!ヤメテ・・・クダサイ・・・痛!!!!」
(このエロジジイ!!そろそろ我慢の限界だ・・・)
このゴリラ。殺意が湧いてきた。男の象徴を蹴飛ばしてやろうかと思っていたら、後ろの扉が勝手に開いた。
さっきまで突いて楽しそうに笑っていたダニエルさんが両手の人差し指を立てたまま、中腰の状態で硬直し顔が引き攣り始める。
(リーダー)「ダ〜ニ〜エ〜ル〜!!!!!。ノモに・・・!!!何やってんだ・・・!!!!!!!」
私は後ろを振り返ると鬼よりもヤバイ形相をしたリーダーがいた。
(リーダー)「この変態野郎がぁあああああああ!!!!!!」
広い貨物室にリーダーの怒号が響き渡る。反響しているうちに、私の頭上でエロジジイの顔目掛けて、一発。しっかりと腰の入った重いストレートをかましていた。
一般女性ではあり得ないそのパンチ力は、エロジジイの巨体が時計回りに回りながら、3m以上ふっ飛んで行った。あんなムキムキゴリラを容易く殴り飛ばせるほどのパワー。こんな華奢なのに一体どこからその威力は出ているのだろう。
リーダーのパンチに驚きつつも、筋肉痛の私の代わりに殴り飛ばしてくれたおかげで殺意がスーっと消えた。
(リーダー)「ノモ!何も変なことされてないよね!?」
「は、はい・・・。おかげさまで・・・」
(リーダー)「良かった〜〜」
リーダーがホッとため息を吐く。ここまで心配されるとは思ってなかったので、助けてもらってはなんだが、少し大袈裟ではないか・・・?
「その、筋肉痛をいじられてただけです・・・。メッチャウザカッタデスケド」
(リーダー)「ウザいならウザいってはっきり言いなね!?制服の拡張機能を使えばあんなやつ余裕で吹っ飛ばせるから!!」
「そ、そんな便利機能あるんですね」
飛んで行ったゴリラがムクリと起き上がってきた。(こいつもこいつでタフだな・・・)
(ダニエル)「ウゥ"〜ン・・・。リーダーやりすぎっすよ!!!死ぬかと思った!!!」
(リーダー)「変態はそのまま死ねば良かったのに」(低音ボイス)
(ダニエル)「ヒドイっすよぉ!!ちょ〜っと悪ふざけしただけじゃ無いっすか〜〜」
(リーダー)「さてと!!あんな変態放っておいて・・・!」
(リーダー)「ここ!貨物室の案内をするね〜!!こっちおいで〜!!ノモ〜!!」
私は笑顔で頷き、リーダーの後を筋肉痛の身体でぎこちなくついていく。
チラッと横目でダニエルを見るとウインクしながら、片手でスマンと言うジェスチャーをしていたが、無視した。
(リーダー)「ここは昨日取ってくれたサニークリスタルや、別の星で取った宇宙資源がたくさん置いてあるよ!!!」
(リーダー)「ごちゃごちゃしやすい場所だから探し物をしやすいように大まかに分けてあるから!」
「俺が整理してんだからな〜!!!」と叫び声が聞こえてきたが、二人はそのまま奥へ進んで行った。




