表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
宇宙冒険家ノモ  作者: 坂山海
早熟で未熟者
15/101

研修二日目 ②

医療用と軍事用でしか使われなくなったフルダイブ型の機器は、現在違法取引が横行しているらしい。なんでも、見た人が脳死してしまうという呪いのコンテンツがあったらしい。


今では都市伝説となっているけど。



(ダニエル)「あと、もう一つ。左下に緊急要請のマークが表示されていると思うが、それは押すなよ!?」

(ダニエル)「ペタが救助犬になって飛んでくるからな。救助活動モードを使った次の日は、バッテリー切れで俺たちが1日中活動できなくなる。絶対に気をつけてくれ」

「はい!」




私は初めての探索活動なので、まだ慣れないし、知らないことだらけだ。


でも、体つきから見るからに信頼できるプロが付いている。私が心配することはあまり無いだろう。私たちは順調に奥へ進んでいき、サニークリスタルの群生地に辿り着いた。



(ダニエル)「よぉ〜し!!着いたぞ〜!!まずはインベントリを開いて、[吸収]という欄にチェックを入れろ!ノモ!」

「は、はい!入れました」

(ダニエル)「そしたら、手に触れたものは自動的にインベントリへ吸収されるようになる。ただ、重量は変えられないからな。あんまり多く取りすぎると帰りがキツくなるぞ」

「了解です」




私は欠けて砕けているサニークリスタルを主に集めていった。インベントリの欄に次々と表示が増えていく。表示欄に数と推奨残量ゲージが表示されていた。ますますゲームみたい。



[推奨 : 後3kg]



推奨はどうやらペタが私の筋力と持久力を推算した量のようだが、なんか気に食わない。



(私だって・・・)



周辺はあらかたとり尽くしたのでダニエルさんの方へ向かった。



「取れました〜」

(ダニエル)「おお〜。ん・・・?」  (なんかやけにフラフラしてるな)

「どうしました・・?」

(ダニエル)「うーん・・・」



ダニエルさんは私の方に身体を向けたまま制服内で何やら操作をしている。



(ダニエル)「ノモ!気合いが入っているのは良いが、推奨された量より運ぶな」

「え・・?」

「私、頑張れます!大丈夫です!運べます!!」

(ダニエル)「そういうことじゃ・・・!!!!あぶねぇ!!!!!!!!!!」



ダニエルさんは咄嗟にスペースガンを取り出し、私に向けて撃った。

右頬スレスレにレーザー弾がかすめていき、後ろの巨蟻の体を消し飛ばした。



蟻の体液が背中に当たり、恐る恐る振り返る。



後ろには、胴体が吹き飛び、先の尖った足が胴体から離れ、根本から無惨にも散っていた。黄色い体液が広がっていく。



「う、わ・・・」

(ダニエル)「大丈夫か!!?怪我は!?」

「え!?あ・・・!!はい・・・。大丈夫です」

(ダニエル)「ニーアントだ。尖った爪に毒素がある。刺されていないようで良かった」

「ファ、ああ・・・・」



私は腰が抜け、ペタン。っと座り込んでしまった。唐突な命の危機に処理が追いつかない。


気力で持っていたキャパオーバーのサニークリスタルの重みがどっと身体にのしかかり、立てなくなった。



(ダニエル)「とりあえず、上に戻るぞ。体液をかぎつけて他のが寄る前に」

「た、、てません・・・」

(ダニエル)「立て!!!死にてーのか!!!?」



ビクッ



馬鹿でかい声が洞窟内に響く。



温厚そうなダニエルさんが声を荒げ、私の取ってきたサニークリスタルをインベントリから半分以上出した。



(ダニエル)「悪いが、インベントリが詰まってて、おんぶや抱っこなんてできないからな。自分の足で歩け!!」

「はい・・・」



腕をぐいっと持ち上げられ、立たされた。

その後、急いで入口へ向かった。



(ダニエル)「よし、ここら辺は大丈夫だろ」

「は、、ああぁ!!はぁ!!っはぁ!!!んっ、はぁ!!!げほ!!」

(ダニエル)「ふぅ〜」

「がはっ!!ゲホ!!んふ!!!ゴホ!!!はぁ!はぁあ!!はぁ〜〜」

(ダニエル)「ノモ。これで意味が分かっただろ。推奨以上のインベントリ利用は命に関わるって」

「はい・・・。はぁ、はああ、はぁ」

(ダニエル)「身動きが取れなくなるほど集めても、死んで帰れないなら取っても意味が無い。命あるからこそ資源を取り、開拓していけるんだ」

「すみません・・・」

(ダニエル)「あとは、俺から言うまい。小言はリーダーの仕事だからな」

(リナ)「自分の危機管理もできないなら宇宙探索家なんてやっていけない」

「・・・・」

(リナ)「宇宙探索家をしたいなら、()()()()()になれ」

「ビビリ・・・」

(リナ)「怖がることは弱いってことではないから」

「はい」

(ダニエル)「このままじゃあ、入隊は認められんな」

「え・・・!?」

(リナ)「そうね」

「・・・」

(ダニエル/リナ)「あと二日以内に挽回しろよ?/あと二日、挽回しなさい」

(リナ)「何ハモってんの。きも」

(ダニエル)「そっちがだろ!!?」




ピリついた空気だったが、最後の言葉で期待されていると伝わった。



(絶対、入隊してやる!!!)



私が息巻いている様子を横目で眺めていた二人は、ニヤニヤしていた。




「な、なんですか・・・」

(ダニエル/リナ)「別に〜?/いや・・」




「だからハモんなって!!!」と言いながら飛び蹴りしていたリナさんとそれを躱わすダニエルさん。本当に仲が良さそうだ。



そういえば、ダニエルさんは軽そうに持っているが、どのくらい集めたんだろうか。

私は、制服にログインし、ダニエルさんのプロフィールからインベントリを見た。

そこに表示されていた数値にダニエルさんに恐れを感じるほど驚愕した。



[推奨 : 100kg   現在積載量  : 300kg]



(さ、ん、、え?300?)

(バケモンか・・?)

(300kg持ちながら戦って、登って、はしゃいでんの・・・?)



「やば・・すぎ・・」

(ダニエル)「ノモ〜!置いてくぞ〜!!」



(私なんか、10kgも持ってないのに・・・)



(リナ)「いくよ」 



リナさんが顔を覗き込みながら、私のデコを人差し指でツンっと弾かれた。


「あうっ」  パタンっ

(リナ)「え!?」

(ダニエル)「何じゃれてんだよ。暗くなるから早く戻るぞっ・・・・て」

(ダニエル)「殺した・・・?」

(リナ)「いや、いやいやそんなわけ・・・」



私はリナさんにデコピンされてから身体が思うように動かなくなった。いや、たまたまデコピンされただけ。もう体力の限界だったのだろう。軽く弾かれた拍子に、後ろへ倒れ込んでしまった。私はそのまま目を閉じ、意識を失った。








気がつくと、ベッドにいた。



(あれ、私確か、デコピンされてそこからどうなったっけ・・・)



私の最後の記憶はそこまでしかない。

辺りを見回すとリーダーが隣に立っていた。




(リーダー)「ムフフ・・・。おはよう・・・。初日から働きすぎ結構!!!結構!!!気絶するまでやるとは・・・。お姉さん感動するよ」



ふざけたような物言いだが、声色からして怒っているようだ。



(リーダー)「ノモ?頑張るのはいいけど、ダニエルから聞いたぞ!!死にかけたそうじゃない?」

「は、はい。ダニエルさんが助けてくれました」

(リーダー)「この仕事はね熟練でもいつ命を落とすのかギリギリなんよ?」

(リーダー)「ましてや、君のような新人は無理なんてしたら絶対ダメ!!」

「すみません」

(リーダー)「頑張ろうとしてくれてるのは分かってるから。明日は宇宙船内で、事務仕事ね」

「あ、あの!!私はまだ、やれます!!」

(リーダー)「別に、探索、調査だけが探索家の仕事じゃないよ〜?」

(リーダー)「なんなら、もっと地味な作業の方がメイン・・・だ!」

「・・・?」

(リーダー)「ご飯食べたら早く休みなね〜!じゃ!明日もよろしくっ!!」



(明日は事務仕事を教えてもらうってことかな・・・?)



リーダーの話を疲れ切った頭で噛み砕いていると、ムキムキが近寄ってきた。



(ダニエル)「大丈夫そうだな!明日いけるか?無理すんなよ新人!」



ムキムキが死角になって見えなかったが、ダニエルさんの後ろからスッともう一人現れた。



(リナ)「こいつが、担いで帰ってきた。探索、凄く頑張ったようだけれど、これを機に自分の限界は知っておこうね」

「す、すみません!!!」



私は、二人に何度も頭を下げ、運んでくれたダニエルさんに礼を伝えた。



すると、突然、ペタが犬の形から猫になり、お腹の上に飛び乗ってきた。



「ぐふぉ!!」



筋肉痛で全身に激痛が走る。ペタの腹筋ダイブは思ったより重かった。



「あぁー!!!!!!キン、ニ、、ク、、ツウ、ガ…」




二人は私の痛がる様子と、ペタの不思議そうな様子を見て笑っていた。



やる気が空回りした新人を慰めるのは当事者よりフォローする側の方が気を使う。

悪気は無いが、無いが故に責めることも誉めることもできないから。




「この空気感、明日の仕事に支障が出るかもしれない」とお互い気にしていた所に起きたひと笑い。場の空気が一気に和んだように感じた。



ペタは空気も読める優秀な機械生命体である。




でも・・・。 イタイモンハイタイヨ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ