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異世界召喚を憂う者  作者: 金のゆでたまご
女神イザベラの章
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タカトの記憶

タカトは自分の住んでいた世界で事故を起こして命を落とした。そのタイミングで女神によってこの世界に呼ばれたと彼は語った。


タカトの話とラドルが今まで調べてきたことは重なる部分が多いため、この話には信憑性があるとサルサは思った。そして、ここから語られることがラドルとサルサ、そして、あまり興味を持たずに聞いていたフォウにも衝撃を与える。


「これから話すことは俺も完全には理解していない。流れてきた断片的な記憶を組み立てて俺なりに解釈したことだ」


その前置きに早速三人は疑問を持つ。


「流れ込んできた記憶ですか?」


「そう、俺をこの世界に呼んだ女神アミ。彼女が正気を取り戻した短い時間で無理やり俺に記憶を共有させたんだと思う」


それはタカトは彼女と額を合わせたときのことだ。


「今でも少しずつ頭に浮かぶことがあるんだけど、モヤモヤしていてその記憶を掴めず、(かすみ)のように消えてしまうことが多いんだ」


「ジュレとセイジが言っていた。おまえの言うことは意味が分からないことが多いと」


「あの頃は今よりもっと断片的な記憶だった。ただ、明確なのはアミが正気ではなかったこと。魔王を殺すなということ。世界を救ってくれってことくらい。その理由はもわからからなくて。だけど、これから話すことはずいぶんマシなはずだ。とりあえず聞いてくれ」


タカトは語った。この世界の秘密の一端を。



   ***



この世界で人々を苦しめる歴代の魔王たちは、世界を守るためのプログラムである。今は魔獣と呼ばれているこの世界の守護獣【ガードシステム】を管理、操作して戦うのが本来の使命だった。


そのプログラム名は、


PROGRAM(プログラム)M.A.O.U.(マオウ)

Mad

Aggressor

Obstruct

Unite

狂気の侵略者を妨害する集団

MAOU(マオウ)


そのプログラムはこの世界の人間とかかわることなく、人知れず世界を守っていたのだが、何百年と続く戦いの中でウィルスプログラムが魔王を狂わせた。


そのウィルスの名は、


VIRUS(ウィルス)M.E.G.A.(メガ)

M.A.O.U

Edit

Guilt

Animate

魔王を編集し罪の命を吹き込む者

MEGA(メガ)


VIRUS(ウィルス)M.E.G.A.(メガ)】によって狂わされた魔王は守るべき人間たちを敵と誤認するなどして、魔獣を使い世界の秩序を狂わせた。


それに対抗するために生み出されたのが、


PROGRAM(プログラム)A.M.I.(アミ)

Ability

Make

Instruction

アビリティを製造する命令を行使するプログラム。

AMI(アミ)


このプログラムによって能力を強化した人間に聖剣(ワクチンプログラム)を授けて、魔王を修復していた。


時が経つにつれて強力になっていく魔王が暴走すると、この世界の人間では対応できなくなる。

この危機に対応するためにプログラムは更新された。

Ability

Make

Inviter

アビリティを製造し招く者、と。


アミは条件に当てはまる異世界の人間を召喚し、同じように能力の強化と聖剣(ワクチンプログラム)を授けることで力を増した魔王に対抗する。


だが、それが大きな過ちだった。


VIRUS(ウィルス)M.E.G.A.(メガ)】は【PROGRAM(プログラム)A.M.I.(アミ)】をも侵食する。A.M.I.(アミ)M.E.G.A.(メガ)に取り込まれ、新たなプログラムに変性してしまった。


PROGRAM(プログラム)M.E.()G.A.()M.I.()

これがこの世界を混乱させている。


この【PROGRAM(プログラム)M.E.()G.A.()M.I.()】 をサポートするのが、【Brave(ブレイブ) World(ワールド) Program(プログラム)】であり、異世界人たちに様々な恩恵を与えている。


ステータスウィンドウをはじめ、彼らの命を守る【クリティカルキャンセラー】や斬撃を防ぐ【ブラントブレイド】、そして、異世界人が一喜一憂する【スキル】さえも【Brave(ブレイブ) World(ワールド) Program(プログラム)】によるものだ。


このプログラムを使って女神は異世界人を利用している。


タカトを召喚したのは女神アミだが、おもに異世界人をこの世界に呼んでいるのは彼女以外の三人の女神だった。


ひとりは、今ランサイズ王国にいるイザベラ。残りのふたりはアマネロスとマーオンという名で、この三人によって異世界人がこの蒼天界に呼ばれている。その他、彼女らの劣化コピーというような端末女神もいる。


三人はアミと共に狂った魔王の矯正をしていたのだが、アミが完全に侵食されると今度は彼女たち三人も侵食を受け、生まれ出る魔王を討つための異世界勇者を召喚し始めたのだ。



   ***



話し終わったタカトは頭をトントンと叩いてからひと口水を飲み、座って話を聞いていた三人を眺めた。


三人は難しい顔をして今の話を整理しつつ吟味している。長考の末に最初に言葉を発したのはサルサだった。


「信じがたいことですが、タカトさんが魔王を守り、女神を救うと言っているつじつまは合います。ただ、今の話を深く理解するにあたって、ひとつだけまったくわからないことがあるんですけど」


「オレもだ」


「あたしもぉ」


サルサにふたりが同意する。


「なにがわからなかった? ジュレたちにはまったく意味がわからないって言われたけど、俺的に以前よりはかなり記憶が整理されてわかりやすい内容だったと思うんだけど」


「あのですね、『プログラム』ってなんですか? 魔王や女神がなにかの力によって狂ったってことでいいんですかね?」


ラドルとフォウは言うまでもないが、かなり博学なサルサでもコンピューターの存在しないこの世界では、さすがに『プログラム』という言葉はわからない。


「おう、そこだったか。オレも専門家じゃないから上手い説明はできないけど、『プログラム』っていうのは、そうだなぁ……」


タカトは腕組みから首をひねり考える。


「この世界に何かを実行させる命令って感じのモノだ。例えば魔法の法名(ほうめい)がプログラムと同じようなもんだな。魔法は魔力を乗せて法名(ほうめい)を発することでこの世界の(ことわり)に干渉し現象を実行させる。それに従って効果を顕現させるだろ? 魔王は【PROGRAM=M.A.O.U.】をこの世界に実行させて顕現した効果なんだ、たぶん。【VIRUS=M.E.G.A.】は病気みたいに人の体を侵食して狂わせたり変更させる。ウィルス、つまり病原菌に侵された魔王の効果は別モノになってしまった」


魔法に例えたのが良かったのか、三人ともなるほどと言った表情でうなずいた。


「魔法がプログラム、それを術式というウィルスで変更するのが魔術。そんな感じですね」


魔術とは式句を使ってこの世界の(ことわり)のひとつである魔法の効果の一部を顕現(けんげん)させたり、複雑な条件を与えて本来とは違った状態で顕現(けんげん)させる。


「かな? それに例えるならA・M・Iという魔法はM・E・G・Aという式句によってM・E・G・A・M・Iという別の効果を顕現(けんげん)する魔術になってしまったわけだ」


三人がそれなりに理解したところでサルサはもうひとつ質問した。


「でもなんで女神は魔王の本来の使命を変更して人間を襲わせてるのに、それを阻止するために異世界人を召喚して討伐させるんでしょうか? そんな者を呼ばなければ魔王は人間たちを滅ぼしてくれるのに」


「残念だけど俺の記憶にその答えはない。サルサさんの言う通りで狂った魔王を放っておけば、この世界の人間を滅ぼすって目的も果たせるよなぁ。なんでだろう?」


「女神が狂わせた魔王を異世界人に倒させる理由。これじゃぁただの自作自演の物語じゃないですか」


「女神は人間を滅ぼすことが目的じゃないんじゃないの?」


フォウの言葉に三人はハッとなる。魔王の目的が女神の目的と決めつけて考えていたが、それは何かを達成するための布石、過程、経過、または副次的なことに過ぎないのかもしれない。


今まではアミと魔王のことばかり考えていたが、その答えを求めなくてはいけないのだとタカトは改めて思った。


「で、そもそも魔王は何から世界を守っているんだ?」


「いや、それも俺の記憶では、誰なのか、何なのか、どこに居るのか、どこにあるのか、そういうことはまったくわからねぇ」


「タカトさんの話は大変興味深いモノでした。でもまぁ、我々がやるべきことはあまり変わりませんね」


サルサがまとめに入る。


「女神を殺すためにランサイズ王国に侵攻しようとする魔王軍を止めること。そのために魔王を説得する必要があり、それが叶わなければ魔王を倒す。でも殺してはいけない。もうひとつは女神を倒してランサイズ城から逃がして隠す。彼女も魔王同様に殺してはいけない。どちらかを成せばとりあえず大きな戦いは回避できますね」


「両方やる」


ラドルは即答する。


「その意気込みはいいけど魔王の強さは本物だぜ。だから俺に賛同してくれる強い者を探していたんだ。魔王も強いが四天王も強い。フォウを含めてな」


と、ただいま休戦中の彼女を見るタカトに対して、フォウはニッコリ笑った。


「あたし四天王辞める。っていうか魔王軍抜けるから」


「え?」


「だってあたしは女神を探すために魔王軍に入っただけだもん。結果として四天王になっただけだし。この流れでいけばラドルはタカトと一緒に魔王軍と戦うんでしょ?」


「ホントかよ?!」


「あたしはラドルの味方だもん」


何度か対峙して相まみえたことのあるフォウが、可愛らしい表情でラドルに絡む姿にタカトは困惑していた。


彼女は今まで本気を出して戦っていなかったとは思うが、自分よりも格上であることは確信している。魔王軍に対抗できる強者と出会えたうえに、彼女が魔王軍を抜けるというのは嬉しい誤算だった。


「あのさぁ、さっきまで敵対していた者がいうことじゃないんだろうけど、ラドルの味方ってことは俺に手を貸してくれちゃったりするのかな?」


状況に便乗するようで気が引けるが、このチャンスを逃せないとタカトは目を泳がせながらフォウに聞いてみる。


「ラドルがそうしろって言うなら手伝ってあげてもいいわよ」


と友好的と取れる返事がなされた。


「ホントか?!」


これで敵は魔王を含めて四人となる。


魔王&四天王 VS タカト


この構図が大きく変わったのだから喜ばずにはいられない。フォウの裏切りは彼女のラドルに対する言動から嘘ではないとそれなりに信用した。


「これならなんとかなる! よし一端帰って準備をしよう」


「帰るってジュレさんとセイジ君のところにですか?」


「そう。でも正確に言えば彼女らをかくまっている人たちのところだ」


タカトは魔王軍とランサイズ王国の激突を阻止し、女神を救うという目的を達成するため、心強い仲間のもとに向かう。


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