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異世界召喚を憂う者  作者: 金のゆでたまご
女神イザベラの章
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異世界人ハンターの正体

魔王の側近である四天王のフォウの乱入でラドルと異世界人ハンターの戦いは中断。決着を付けたかったハンターだが、フォウがラドルにイチャついている姿を見たことで毒気を抜かれ、完全に戦う気を失った。


決着を付けたかったのはラドルも同じで不完全燃焼感にモヤモヤしていたのだが、フォウに絡まれるうちにその気持ちも薄まっていった。


「とりあえず戦いは休戦ってことでいいですか?」


サルサの提案にハンターは呆れ顔でうなずいた。


「それで、フォウさん。なんであなたがこんなところに?」


にゃんにゃんしている女性の名前はフォウ。種族は魔族で年齢は……サルサもラドルも知らない。たぶんラドルよりも上だろうとふたりは思っている。


そのフォウは、ラドルに頬を寄せながらサルサの質問に答えた。


「なんでって、ラドルに頼まれた例の件よ。それにここにいると異世界の奴らが来るからさ。バシバシ仕置きできるんだよね。大半はあいつに取られちゃうんだけど」


フォウは異世界人ハンターに視線を送った。


「ラドル、お前は四天王のこの女と知り合いなのか? こいつはお前が狙う魔王の側近だぞ」


「昔馴染みだ」


「あたしは彼女。ラドルの婚約者」


ぼそりと言った「昔馴染み」という言葉を打ち消すようにフォウは大きな声で言いなおす。


「別に俺は魔王の首を狙っているわけじゃない」


「だって、お前さっき魔王を止めるためとか言ってたよな?」


「言葉の通りだ。だが、オレがこの国に来たのは女神に仕置きするためだ。そしたら魔王も女神を狙ってるっていうじゃないか。それ自体はかまわんが、それによってランサイズの国が魔王軍に襲われることになるからな」


「だから魔王を討つつもりだったのか」


「いや」


ラドルは首を振る。


「オレが女神を仕置きしてやるから大人しくしていろと告げに行くつもりだった」


それを聞いてハンターは大笑いする。


「そんなことじゃ魔王は止まらない」


「魔王を守っているおまえからすればこの対応に問題はないだろ?」


「そうだな。でもそれは無駄なことだ。魔王は女神を殺そうとしている。お前が『仕置き』とか『懲らしめる』って言葉を使っているのは、殺すことが目的じゃないからだろ?」


「そうだ」


「ラドルは優しいなぁ」


フォウはラドルを眺めながらにんまりと笑う。


「魔王の四天王を前にこんなことを言うのはなんだが。ラドル、魔王を倒すために俺と手を組まないか?」


唐突に申し込まれた共闘の内容に三人は驚いた。


「あんたは魔王を守るために異世界の勇者をハントしてたんじゃないですか?」


「そうよ、今までやってきたことと正反対じゃない」


サルサとフォウの突っ込みに、ハンターは毅然とした態度で言い返した。


「オレの目的は女神を救うことだ。その女神に魔王を殺してはダメだと、世界を救ってくれと頼まれた。だから俺は魔王を異世界の勇者から守ってきたんだ」


フォウは眉根を寄せて首を傾ける。


「いやいやいや、魔王は女神の命を狙ってるのよ。自分の命を狙っている魔王を殺すなって言う女神っておかしいでしょ?」


「ちょっと兄さん。あんた今、女神を救うって言いましたよね?」


サルサは怪訝な顔で確認する。


「おう」


「もしかして、あんたの名前はタカトですか?」


そう聞かれた彼は戸惑いながらうなずいた。


「ラドルさん、彼がタカトですよ。ジュレさんが言っていたタカトです。ジュレさんたちの組織のリーダーですよ」


「そうみたいだな」


サルサと違って感情を揺らさず答えるラドル。彼は戦いの中で異世界人ハンターがタカトじゃないかと考えていた。


「なんだ、お前たちジュレの知り合いだったのか」


「なによ、どういうこと? あたしにもわかるように説明してよ」


話が複雑に絡み合ってわからないフォウ。それはサルサもラドルも似たようなものだった。


「とりあえず俺の小屋に行くか。話はそこでしよう。傷も痛むしさすがに疲れた」


馬車を操るサルサが自分とラドルの自己紹介を済ませると、タカトは表面上は傷の塞がった胸を押さえ、少し媚びるような声でラドルに言った。


「なぁ、さっきのポーションもう一本ないのか?」


「ない。だが、あったとしても止めたほうがいい。あれは自分の身を削て力を回復するようなモノだから、その反動が後でくる。食うなり寝るなりしないとかなりしんどくなるぜ」


「なに? やっぱり毒みたいなもんじゃねぇか」


嘆くタカトにサルサは言う。


「強い薬ってのはそういうもんですよ」


それは異世界から来たタカトのほうがよく知っているはずのことだった。



   ***



タカトの住む小屋は現代でいうところの1DKの間取りだった。


「これは素晴らしい作りですね」


「そうだろう、そうだろう。街の職人さんにお願いして作ってもらってさ。こだわりの注文住宅なんだよな」


サルサの感想にタカトはご満悦だ。


「そんで、完成したこの小屋を馬で引いてここまで持ってきたんだぜ」


「小屋を……、持ってくる……」


その発想にサルサは驚きつつ、今後の商売にいかせないかと考えた。


「ちょっと傷口洗ってくるから座って待っててくれ」


そう言って風呂場に入っていくと、ざぶざぶと水をかぶる音がする。少しして出てきたタカトの傷は、表面上は七割ほど治っていた。


「ラドルのくれたあのポーション、本当にすげぇな。このまま骨もひっついてくれるといいんだけど」


タカトは樽から水をすくって四つのコップに注いで机に置いた。


「ようやく俺の望んだ奴に出会うことができて嬉しいぜ。魔王の四天王をこの小屋に招くっていうオマケ付きだけどな」


タカトはコップをかかげてニコリと笑った。


その水をひと口飲んだタカトにサルサは質問する。


「あんたが望んだ奴ってラドルさんのことですよね。どういう望みなんでしょう?」


「俺と互角以上に戦える奴を探していたんだ」


「そのために魔王の味方をしていたと?」


「味方じゃない。魔王を守っていたのは本当だけど、魔王を狙ってくる強い異世界人も探していたんだ。なのに見つかったのはこの世界の者だった」


「さぁ話せ。おまえの目的を」


タカトは自分がこの世界に呼ばれたときのことからゆっくりと話し始めた。

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