表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界召喚を憂う者  作者: 金のゆでたまご
女神イザベラの章
50/91

案内

次の日、ふたりは宿で朝食を取り各々時間を潰しているところで部屋の扉がノックされた。


ノックしたのは宿屋の女性従業員。彼女は王城の使者からだと言って手紙を差し出した。


「早かったですね」


手紙には『この案件は極秘のため下記の場所にて』とあり、時間と場所が記されていた。


「今夜二十一時だそうです」


場所は北西街の第二地区にある噴水前。


「大分時間がありますね。ラドルさんはどうします? オイラは情報屋の仲間のところに行ってきますけど」


「また絡まれると面倒だからここで寝て待つ。幸いこの宿は食堂があるから出る必要もないしな」

ラドルは再び布団に横になって夜までのんびり過ごし、サルサは仕事に出かけて行った。



   ※※※



すっかり日は沈み、街も人の往来がほとんどなくなった時間。ラドルとサルサは約束の場所に向かっていた。飲食街を過ぎるとさらに人の気配はなくなる。日の出と共に一日が始まる人たちは早々に寝静まる時間だ。


噴水前に到着したサルサは胸元から懐中時計を取り出す。示している時間は二十時時五十六分。


「ラドルさんも持ったらどうですか?」


時計をのぞき込むラドルにそう促すが、ラドルは戦いで壊れるからそんな高級な物は持ち歩けないと返した。


懐中時計は二万から三万エドルン。消耗品である靴を大量生産している職人ギルドの知人の給料で言えば、一ヶ月から二ヶ月分に相当する。


「そんな物を買うくらいなら少しでも丈夫な服や靴を買う」


「戦いでボロボロになることもあるし、防御力は高い方が良いんでしょうけど、あなたがそれほどボロボロになることは稀の稀ですよね」


「その稀の稀のために丈夫な衣服がいるんだよ」


「はいはい、そうですね。そんなラドルさんのために腕の良い呪術布職人を見つけたので今度紹介します」


そんな会話をしているふたりに誰かが近づいてきた。ゆっくりと振り返るとそこには若い青年が立っていた。


「こんばんは、私はランサイズ王国兵士団、ガナード=シルバリオ三等兵であります」


こんな時間にこんな場所を指定してきたことに警戒していたのだが、妙に硬い挨拶してくる青年が来たことで、ふたりは拍子抜けしていた。真新しい糊の効いた制服に着せられ、あどけなさの残るその顔立ちからも新兵であることはあきらかだ。


「どちらがサルサさんでしょうか?」


元気いっぱいに聞いてくる青年兵士に「オイラです」と小さく挙手して答えると、ガナードは伸びた背筋をさらに伸ばしてみせた。


「今回私がご案内させていただくことになりましたので、よろしくお願いします!」


ハキハキとしゃべる青年は与えられた任務を完遂しようと力んでいる。おそらく初任務なのだろうとふたりは思った。


「ではこちらへ」


ふたりを先導してガナード三等兵は歩き出した。


「三等兵ってことは見習い中の見習いですね」


「俺たちの考えすぎだったか?」


コソコソと話すふたりをよそに、三等兵はシャキシャキ歩いていく。


なにか裏があるのかとふたりは考えていたのだがその気配はこれっぽっちも感じられない。それでも警戒は解かずに通りをしばらく歩いて行くと、さびれた集合住宅地に到着した。


寝静まった時間ではあるが、もともと住んでいる人が少ないようで人の住んでいる活気や生活感が伝わって来ない。そんな住宅地を見たサルサは小さくつぶやいた。


「やっぱり」


ラドルは『どうした?』という意志の視線を向けると、サルサはラドルの耳元に顔を寄せた。

「昼間にオイラが後を付けさせた男女のカップルいたでしょ? 彼らが別の場所から少年と少女をここに連れてきたんです」


「ってことは、あいつらは女神との絡みがあったってわけか」


「まだわかりませんけど、偶然とは思えません」


そんなふうにふたりが話していると、ガナードは手に持つランプでメモを確認し、明かりが灯る家の中からある家の前で止まった。


「ここであります!」


振り向くガナードの満足げな顔をランプが照らす。つまり、彼の任務は完了したのだ。


「で、ここはどこですか?」


サルサの疑問を受けた彼の頭には疑問符が浮かんだのであろう。そういう表情に変化した。


「自分はサルサさんをここへ案内するよう指示を受けただけなので、ここがどこかまでは存じません」


ということだった。


どういった経緯でここに案内されたのか分からないままに、三人は家の前で立ちすくむ。


「ここまで来たんだ。とりあえず行ってみようぜ。何かわかることもあるだろう」


「そうですね」


サルサが扉に向かうと少し焦り顔のガナードがサルサの顔と扉を交互に見る。


「何か……不手際があったでしょうか?」


「いいえ、問題ないですよ」


優しくそう伝えてサルサは扉をノックした。


少し間を置いてから「誰だ?」と若い男の静かな声が返ってくる。


「サルサって言います。女神の件でここに呼ばれた者です」


そう答えた直後に扉の向こうでガタンと音がした。その後、数秒間なんの反応もなかったので、サルサに代わってガナードが声を掛けた。


「私はランサイズ城兵士団、ガナード=シルバリオ三等兵であります」


その言葉が発せられた直後ラドルはサルサとガナードを抱えて扉の前から飛びのいた。次の瞬間、部屋から爆発じみた暴風が撃ち出されて扉を吹き飛ばした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ