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異世界召喚を憂う者  作者: 金のゆでたまご
仕置きの章
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サンフィード村の調査

ラドルはまだ日が昇らない時間に起きて出発の準備を始め、それが終ると昨夜サルサが買ってきたパンを手早く食べる。


調査依頼のサンフィード村は、ここアーキンドムから馬車で二時間の距離にある。調査のしやすい日中に到着したいので朝一番の馬車に乗るための早起きだった。


「まずはギルドで保存食やらの準備だな」


リュックを背負いハイディングケープを羽織ったラドルは、扉を開けて一歩出たところで一度部屋に戻った。


「これを持っていかないとな」


手にしたのはサルサより試して欲しいと頼まれた幸運を呼ぶアクセサリーだ。そのアクセサリーをポケットに突っこむと足早に馬車の停留所を目指した。


「おはようラドル。今日は早いな」


「おっちゃんもな。オレは仕事だ」


「おう、ラドル早起きとは珍しい。仕事なら気を付けろ」


「ありがとよ。あんたも体を気遣えよ。その腰はガタがきてるんだから」


「ラドルさんおでかけ? 今夜シチュー作るんだけど持って行こうか?」


「ありがたいけど三日ほど家を空ける。帰ってきたときに頼む」


「ラドル、朝飯食ったか? これ持ってけ」


「サンキュー。今度マッサージして返す」


こうしてラドルはギルドに行くまでに、何人もの街の住人に声をかけられるのだった。


(このハイディングケープは効果あるのか?)


何気に近所でのラドルの人気は高かった。理由は裏表がなく、正直、平等、対等、公正で気遣いのある優しい人物だからだ。一見すると口が悪そうに思えるが、口調が強かったりぶっきら棒なだけで変に汚い言葉を使ったり感情的になったりしないので、まったく口は悪くない。


無表情や無愛想ということもなく、表情が豊かでないだけで普通に笑顔も見せる。


ギルドで装備を整えたラドルは、馬車に乗り込み客車で仮眠を取りながらサンフィード村の近くまでやってきた。


「すまないが、オレはサンフィード村に用があるからここで降りる」


ラドルは馬車の御者にそう申請する。


以前は村の停留所に止まっていたが、廃村になって以降はそのまま次の街に向かってしまうようになった。なのでラドルは途中下車して徒歩で村に向かうしかないのだ。


「本気かい? あの村は呪われてるって知らないの? やめた方がいい」


御者がおびえながらラドルを制すると、同乗している用心棒も同じようにラドルを止めた。


「これは仕事なんだ」


「ギルドの冒険者か。数ヶ月前までは調査で乗ってくる奴が多かったが最近は呪いの噂が広まってそんな奴はぱったりいなくなっちまった」


「そのようだな。だからオレが雇われた」


「若そうに見えるがハイランカーなのか?」


用心棒の男がフードをのぞき込んで聞いてきた。


「登録して間もないからランクはDだ。だが、こういった仕事は慣れている。問題ない」


御者と乗客に心配されながらもラドルはそこで馬車を降りた。


「気を付けろよーー」


用心棒の男の声に手を上げて応え、サンフィード村を目指して足を進めた。


サンフィード村は浅い森に囲まれ、近くに大きな湖のある豊かな地にあった。しかし、鉱山から噴出したガスによって、現在はお世辞にも草木が元気に生い茂っているようには見えない。


森林道を抜けた開けた場所のその先に集落があり、その村の門は開け放たれたままだった。


「気配はないな」


村に踏み入ったラドルには人の気配は感じられなかった。魔道具よりも精密で広範囲探知が可能なラドルの感知能力にも反応はない。


その日は村の隅々まで調べたが、魔獣の気配も魔獣が巣食っている様子も、呪術の痕跡も見付けることはできなかった。


「今まで人も調査に来ていたんだから簡単に見つかるわけはないな」


日が沈みかけたころ、今まで調べてきたのと明らかに違う場所を発見した。それは、サルサが言っていた異世界人であろう少女が住んでいた家。


なぜ分かったのかと言うと、この世界とは違う文字で書かれたモノがあったからだ。


その部屋にはガラスの小瓶と薬草らしき枯れた植物が少々あった。そして、それらからは微かではあるが、魔力の残滓が確認できた。


「特別おかしな感じはしないな」


だが、入念に調べたものの、それ以上なにかが見つかることはなく、夜が更けてしまったためラドルは村の宿屋でひと晩過ごすことにする。


幸いにも布団はそのままだったので、埃っぽかった布団を外で叩いて部屋は窓を開けて換気する。台所の釜土で火を起こして簡単に食事を済ませたラドルは、夜になればなにか起こるかもと考えて布団に入った。


横になりながら周辺の気配と魔力を探っていたが、結局何事もなく朝を迎えてしまう。


次の日、村を調べ終わったため、今度は森へと入っていく。村の次に目を付けていたのが近くにある湖だった。


「サルサの情報では清らかな湖で、健康、健全といったご利益がるんだったな」


精霊の名はアウラ。湖の恵みを受けていることから感謝の祭りが執りおこなわれていたらしいのだが、その湖を見たラドルは目を疑う。


「健康に健全ねぇ……」


その湖の姿は清らかとは言い難い凄惨な状態であった。


泉のほとりの草木は枯れてそこに住まう魚は腐乱して浮かび、その水は毒々しく濁っている。


「ここはあからさまに怪しいな」


かざした手に魔力を乗せて湖に向かって放つと、それに応えるように水面に不規則な白波が立つ。ラドルが感じていたささやかな魔力が急激に膨れ上がって彼の前に集束していった。


「おまえがここの主の精神精霊体アウラか」


現れたのは火傷のようにただれた姿をした女性と思しき者だった。

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