九話 お風呂に入りました
九話 お風呂に入りました
エスパーダだけなら要と一緒でも良いがスミス姉妹がいる。彼女達を監督するのには能のほうが適任だ。そんなわけで風呂には要以外の全員で入ってもらった。
入りかたのレクチャーはエスパーダに丸投げした。要にはみんながいない間にやっておかなければならないことがある。
「もしもし……都」
想に電話を掛けた。が、当然のように都が出る。
「何よ」
「能がうちに来たんだけど」
「そりゃ妹だから来るでしょうよ。で?」
「問題は能にエスパーダを探せるアプリを渡したことだよ」
都の返事がなくなり、想が出た。
「遅かれ早かれ能ちゃんは知ることになるから、気を回したんだ。別に嫌われてはないんだろ?」
「そうだけど、こっちにだって心の準備ってものが……」
「準備してる間にタイミングを逸することだってある。能ちゃんはこっちで言い含めておいたし、問題なかつたろ?」
想はやたらと問題がなかったアピールをしてくる。要としては悪かったの一言(軽くても可)が欲しかっただけなのに。
「もう良い」
要は拗ねた。
「じゃあこの問題は終わりね」
都にバトンタッチされた。
「あんた、エスパーダにかまけて実家に連絡してなかったんでしよ。私達を責める前にそっちをなんとかしなさいよ」
「分かってるよ」
母親に言うということを避けていた自分を突きつけられて、要は気分が落ち込む。
「頑張んなさい。本気を見せればおばさんだって分かってくれるはずよ」
「都、ありがとうな」
「想にも言いなさい。要のために能ちゃんをうちに呼んだりしてたんだから」
「ああ。想、ありがとう」
返事はなかった。文句を言うために電話したのに感謝することになるとは。
電話を切るとエスパーダとスミス姉妹が立っていた。エスパーダはパジャマで、スミス姉妹はエスパーダの服をローブのように着ていた。
「想に電話してたの?」
「文句言ったら丸め込まれたよ」
「ご苦労様。能ちゃんはまだ入ってる。一人でゆっくりしたいって」
要が入るのはもう少し先のようだ。
エスパーダはスミス姉妹を連れて自室に向かおうとする。
「エスパーダ」
「ん?」
「近いうちに能の家に行こうと思う。エスパーダも一緒に」
エスパーダは理解するのに時間がかかったが、嬉しそうに頷いた。
「やったね姉御」
「髪を乾かしたら朝まで飲もう」
静かに幸せを噛み締めているエスパーダの代わりに、スミス姉妹が喜びを爆発させていた。
要は今からプレッシャーを感じていた。