五話 待っている間におしゃべりしました
五話 待っている間におしゃべりしました
エスパーダと能を残してスミス姉妹を迎えにきた要。
神社で小さなスミス姉妹を捜すのは骨が折れる。神社自体は小さいがそれは人間の感覚であり、ピクシー族にとっては広い場所であると言える。
今更ながら連絡先を交換しておけば良かったと思う。
「ライトハンド、レフトハンド」
名前を呼んだが反応はない。エスパーダに連絡先を聞いたほうが良いかもと思った時、電話が鳴った。
知らない番号だが、勇気を出して出てみた。
「もしもし」
「あ、要さん」
「良かった。出てくれた」
スミス姉妹の声が聞こえた。
「神社に着いたけど、どこにいるの?」
「うーん、デカい鈴のついたデカい綱がある」
「そしてデカい箱がある」
「賽銭箱かな? あかり付けられる?」
「レフトハンドにやらせるよ」
賽銭箱の奥のほうがかすかに光った。短く三回、長めに三回、さらに短く三回。
SOSのモールス信号になっていた。
「なんか困ったことになってる?」
要は声をひそめて、ライトハンドに聞いた。
「あ、レフトハンドの悪ふざけだよ」
「ただ光らすだけじゃつまんないからね」
迷惑な話だ。人間に見つかったのではとヒヤヒヤしたじゃないか。
「そういうのは心臓に悪い」
「ごめんなさい。ほらレフトハンド」
「すいません」
そう言いつつ、SOSを送ってくる。ナメられたものだ。
「エスパーダに言いつけるぞ」
要がそう言うと点滅がなくなった。二人にとって姉御は脅威らしい。放たれている光目掛けて要が近付くと、賽銭箱の裏にいつもの小人服に身を包んだスミス姉妹がいた。
「要さん」
レフトハンドの懐中電灯が要の目を襲う。
「やめてくれる?」
顔を背けて、抗議する。
「要さんもイジり甲斐がある」
「それには同意するけど、さっさと要さんに運んでもらおう」
「妹さんに会ってみたい」
「服も作ってもらうんだ」
要はスミス姉妹をポケットに回収して家路を急ぐ。
「そういえば俺の番号ってどうやって知ったの?」
「姉御に聞いたのさ」
「僕等に教えるのをためらってたけど」
「そっか」
番号を教えるのを渋るエスパーダを想像して、要は嬉しくなった。