四話 割引のためにスミス姉妹を呼びました
四話 割引のためにスミス姉妹を呼びました
要は採寸の間、目をそらしていた。エスパーダが採寸のため、薄着でいるからである。一緒に風呂に入った仲ではあるが、そこをガン見するのは野暮というものだ。
「お兄ちゃん、見ないの?」
妹は野暮であった。
「見ないよ。どんなもん作る気だ?」
「とりあえずパジャマかな。後は体操服でもスク水でも」
「俺はそんなん好きじゃない」
「都さんは好きそうって言ったけどな」
「あいつ……」
都に怒りを覚えるが、やはり能には強く言わない。
「どうかな? お義姉様」
「要が好きなら……」
上目遣いで要を見てくる。このままでは体操服とスク水好きにされてしまう。
「俺は逆バニーのほうが良い」
「逆……バニー?」
エスパーダと能はスマホで検索を始めた。そして白い目で要を見る。
「スケベ」
「最低」
要は偏見より真実を選び、甘んじてその視線に耐えた。時間にして数十秒だが辛かった。
「お兄ちゃんの性癖は置いておいて、お義姉様の希望はあるのかな?」
「コートが欲しい。あったかいやつ」
「実用的だね。任せとき」
「ありがとう」
「まあ、貰うもんは貰うけど」
エスパーダに向けて手を出す。金を要求しているのだ。
「身内から金取るのかよ」
要が文句を言った。この流れでいくと要が払わなくてはならなくなると思ったのだ。
「当たり前でしょ。服屋なんだよ。今金取らないでいつ取るの」
「義妹の生活を助けるのも義姉の役目。ただ小人族は現金を持ってないの」
「大丈夫。お義姉様が払えなくても、現金を持っている身内がいるもの」
デジタルでは払えることをエスパーダに確かめなかった以外は予想通りの流れだ。
「せめて割引くらいしろよ」
抵抗が弱い。
「客が増えないことにはね」
「それなら、二人紹介できる」
エスパーダが味方してくれる。
「そうか。あの二人のこと頼もうとしたら押し売りされたんだっけ」
「押し売りとは失礼な。でも顧客が増えるのは嬉しいかも」
能は迷っている。ここで畳み掛ければ割引きはいけるだろう。だが確実に要が払わなくてはならなくなる。
「紹介するから半額な」
「ダメ。一人一割引き。しかも今日限り」
「まあ、それでも良い。同棲には金がかかるんだ」
要はエスパーダにアイコンタクトをした。
エスパーダは連絡をする。文字でやりとりしているらしく、しきりにスマホをいじってる。
「あ、そっか」
返信を見て、エスパーダはため息をついていた。
「どうしたの?」
「外は危険なの。猫やカラスに襲われたり、車に潰されそうになったり。あの二人は特にその危険があるわ。だから要、迎えに行って」
「二割引きのためだね」
「一人一割引き。二人来たからって二割引きにはしないからね」
要は能の言うことには応えず、出ていった。
今は五時。待ち合わせ場所は近くの神社になった。